3 「わかりにくい箱」
昼食をとるために、帝翔と会社を出た。
「ちょっと煙草買いにコンビニ寄っていいか?」
帝翔の返事を待たずに俺はコンビニに入る。
俺がレジで並んでる間、帝翔は店内をうろついていた。
「セブンスター...88番を2箱」
番号を伝えて、店員が煙草を探してる間、帝翔が何かを持ってきた。
「なあ、聖也。この綺麗な箱はなんだ? カラコン? 俺こういうデザイン好きだわ」
俺は一瞬固まる。
それはコンドームの箱だった。
確かに、ただ蝶が描かれているだけで、何ミリとかもわかりやすい数字も書いてない箱だが...わかるだろ!
わりとどこでも見かけるやつだぞ!
いや、帝翔は今まで彼女がいなかったから、買う機会もなくてわからないのかもしれない。
にしても隣にそれらしい商品あっただろ!
「とりあえずそれ棚に戻してこいよ」
俺はその箱に一瞥した後、帝翔の顔を見ずに前を向いた。
店員が戻ってきたのでかなり気まずい。
「え? まあ、買わないけど...これ何?」
おとなしく戻してくればいいのに、しつこい!
「今会計してるから後にしてくんない? 早く戻してこい」
帝翔の顔を見ていないが、雰囲気的に、あいつが不機嫌になったのがわかった。
俺か?
俺が悪いのか?
何もわかっていないお前より、俺の方が今、恥をかいてるんだぞ!
セブンスターを二箱持って、俺は先にコンビニを出る。
とにかくあの場から離れたかった。
店員は完全に引いてる顔をしていた。
俺と帝翔の為にも、早くコンビニから離れた方がいい。
帝翔は俺の後ろをついてきていた。
コンビニから少し離れたところで立ち止まり、俺は振り向いた。
「童貞にもほどがあるだろ」
笑いながら言った。
あの時は恥ずかしさでいっぱいだったが、離れて多少落ち着いてくると、笑けてきた。
「あの箱、コンドームだぞ! 帝翔がレジでしつこく聞くからめっちゃ恥ずかしかったわ!」
帝翔も笑った。
友達は多くても、やっぱり帝翔は特別だ。
変...帝翔はちょっと、いや、かなり変わっている。
こいつと一緒にいたら人生退屈しない。
「お前って奴は本当面白いよなぁ! この歳になってあんな恥ずかしいことはなかなかねぇ!」
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