第24話 バイト先に


伊吹さんが学校で綾川と菜々美。偶に俺たちと話すようになると伊吹さんの周りに人が来なくなった。

そうなると伊吹さんも元気を取り戻し俺の悩みは解決された。

しかし今また面倒臭いことになってしまいそうになる。


「え!?菜々美の家ってカフェやってるの?」


最近定着しつつある6人で昼休み話していると唐突に菜々美の家の話になりそれに綾川が食いついてる。


「いや?カフェっていうか、まぁ飲食店っていうかそんな感じだけど」


「行ってみたいな?」


菜々美がそう説明すると綾川が目を光らせて言う。


「まぁ、俺も行ってみたくはある」


「だよね。細川くんもそう思うよね!」


仲間をみつけた綾川は直ぐに答える。

反応早いなこいつ。


「まぁ食べてみたいな」


「俺も行きたいぞ!」


桜井もそう言うと完璧に行く流れになる。

そうなると綾川が「伊吹さんも行こうよ!」と誘う。

しかし誘われた伊吹さんは「でも私夜ご飯の準備が」と俺と菜々美の方をチラチラ見ながら答える。

確かに俺は今日伊吹さんにバイトの日と伝えている。

菜々美はそれを聞くと伊吹さんの耳元に行き小声で「彩斗私の家のお店でバイトしてるから大丈夫だよ」などと言っていた。

伊吹さんはその発言に驚いた表情を一瞬していたがすぐに表情を戻して「やっぱりわたしも行く」と言う。

菜々美が、伊吹さんにそう伝えた後、俺の所に来て何で伊吹さんに私の家でバイトしてるって言ってないのよと小言を言われた。


「やったー!池田くんも来てよね」


「俺バイトだから」


「またまた冗談でしょ」


「なんでそんな冗談言うんだよ」


そう俺が言うとガーンと分かりやすい表情をする。


「何でそう言う大事な事を最初に言わないの。バーカ」


「まぁそのバイト先お前らが行こうとしてる店だけど」


俺がそう答えるとすぐに反応する細川と桜井。


「え?まじ?」


「意外だな」


細川と桜井が驚いた表情をしている。

そして綾川は「なら最初からそう言ってよ!」と俺の肩を叩いてくる。


「悪い、悪い」


「全然悪いと思ってるように見えない!」


俺が綾川に詰められていると伊吹さんが少しこちらを睨んで来てた気がするが多分俺の勘違いだろう。



学校が終わると少し夜ご飯まで時間があるので皆は学校で雑談でもするらしい。

俺はバイトがあるので1人抜けてバイト先に向かう。

いつも通り夕方は仕込みを軽く手伝い、清掃などをして時間を使う。

17時半を過ぎると制服を着たお客さんさんが店に来る。


「いらっしゃいませ」


俺が普段通りのお客さんと同じように声をかける。

まぁ茶化して来るだろうな。

俺はそう思っていたが反応したのは菜々美と伊吹さんだけで、他は初めての人を見るような目を俺に送ってきている。


「あれが彩斗?」


「本当に彩斗か?」


「嘘だよね?」


何だこいつら。その茶化し方は想定外だ。


「何言ってんだ?席に案内するぞ」


俺はそう言って奥のテーブル席に向かった。


「あれ本当に彩斗なのか?」


「ありえねぇだろ。イケメンすぎて」


「池田くんじゃないみたい」

 

俺が水を取りにキッチンに戻っていると、席でこんな会話が行われていた。


「まぁ彩斗しっかりと整えればイケメンになるからね」


「初めて見た時はびっくりした」


菜々美と伊吹さんがそう言うと「2人は知ってたのかよ」と細川が聞く。


「まあね。でもあれで本人に自覚ないのが凄いよ」


「うん。普通に怖いよね」


「えー、自覚ないのかよ」

 

「すげぇな」


そんな会話をしていることは俺は知らずにメニューを聞きに行く。


「注文決めたか?」


「彩斗そんな聞き方してたらお母さんに怒られるよー」


菜々美が余計なことを言ってくる。

だが菜々美はこの店に住んでるので、すぐに沙都美さんに伝わってしまう。

それは本当に嫌だ。

 

「ご、ご注文はお決まりですか?」


俺がそう聞くと皆がクスクスと笑い出す。

だから言いたくなかったんだよ。



各々が食べたい物を俺に伝えていく。

伊吹さんだけが俺に「池田くんのおすすめがいい」と言われたので俺がこの店で一番好きなクリームパスタを進める。

 

「じゃあそれがいい」


「かしこまりました。注文は以上でよろしいでしょうか?」


羞恥心を捨てて俺はそう聞く。

友達がバイト先に来るの俺は苦手みたいだ。恥ずかしい。

全ての注文を聞き俺はキッチンに注文を伝える。

そして出来た料理から席に運び、全てを運び終える。


「ごゆっくりどうぞ」


俺は働きながらチラチラみんなを見ている。

美味しそうに食べている姿を見ると自分が作った訳では無いけどこの店が褒められていると感じれて嬉しい気持ちになる。

伊吹さんだけが少し違う楽しみ方をしていた気がするけど。



そして次の日普通に学校に行くと何故か細川に「いつも通りの彩斗で安心するわ」と教室に入った瞬間に言われる。


「は?どういうことだよ?」


「そのままの意味だ」


え?意味がわからん?


何を言ってるんだこいつと思いながら自分の席に向かうと綾川が「おはよう」と少し低いトーンで挨拶してくる。


「うん?おはよう。どうした?何でそんなテンション低いんだ?」

 

「いや全然こっちの方が話しやすい大丈夫だから」


そんな意味の分からん事を言って自分の席に帰っていく。

何でみんな意味のわからない事を言ってくるんだと思いながら、自分の席に着く。


「ねぇねぇ」


席に座ると後ろに居る伊吹さんに肩を叩かれる。

伊吹さんも変な事言ってくるのか?


「どうした?」


俺は少し疑心暗鬼になりながら返事をする。


「昨日のクリームパスタのレシピ出来た聞いてきて貰えない?」


伊吹さんは前一緒に外食した時も同じような事を言っていた。


「伊吹さんは、いつも通りで良かった」


「ん?どういうこと?レシピ聞いて来てくれるの?池田くん聞こえてる?」


俺は伊吹さんの声は聞こえず無視をしてしまいこの後すげぇ謝った。


「池田くんの為に作ってあげようと思ったのに…」







 





 




 

 

 




 



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