第21話 2年生
春休みがスタートしたのは昨日だった。
絶対にそうだった。じゃないとおかしい。
あまりに終わるのが早い春休みに悪態をつきながら制服に着替える。
昨夜は憂鬱な気持ちで眠り、始業式の朝を迎えた。
はぁー。だるい。
1年間で俺にしてある程度人間関係を構築したつもりだったが、今日のクラス替えで下手したらまた1から人間関係を構築しないといけない。
そう考えるとすごく憂鬱だ。
何とか重い足を無理やり動かして駅まで向かう。
久々の満員電車に揺られながら、また始まってしまったとやっと現実を受け入れ始める。
電車を降りると久しぶりに歩く道に新鮮さを覚えながら学校に向かう。
いつもより早く家を出たがクラス替えの紙が貼ってある場所には人がありえない程いる。
あぁ帰ろう。
そう無意識化に思い、来た道を戻ろうとすると「何帰ろうとしてるの?」と伊吹さんの声がした。
「ん?俺は何をしてるんだ?」
「それはこっちのセリフ。春休みボケ?」
「いや、多分クラス表の所に人が多すぎて帰ろうとしてた」
「ちょっと理解出来ない。早くクラス表見るよ」
そう言って伊吹さんは俺の前を歩く。
クラス表の場所に着くが中々表が見えない。
みんな並んで待機しているが前の人が自分のクラスに興奮して「キャー」と叫んでいる。
いつからここは動物園になったのだろうか?
それから少し時間が経つとクラス表が見える場所まで来た。
何でこの学校は学年別にクラス表の場所を変えないんだ。
たかがクラス確認でここまで待たされると、文句の1つや2つ言いたくなってしまう。
「やっと見れる」
そう一言呟き自分の名前を探す。
1組は違う。2組も違う。3組も違う。4組も…
あ。池田彩斗の名前がある。
俺は今年は4組らしい。
そして少し視線を下げると下に伊吹さんの名前もある。
また同じクラスだ。
そして伊吹さんも名前を見つけたようで「良かった。誰か知ってる人が同じクラスで」と言ってくれる。
だが和真とは別のクラスになってしまった。
これは結構まずい。
クラス表を見た後、伊吹さんと教室に向かうと視線の量が凄い。
いやー。分かってたよ。一緒に歩いて教室に向かったらこうなるって。
でもあの場面で、じゃあ先行くわ。とは言えない。
少しむず痒い気持ちで新しい教室に向かうと菜々美がいきなり大きな声で出迎えてくる。
「何で彩斗と同じクラスで!和真が同じクラスじゃないの!交換してーー!」
「それはこっちのセリフだ」
「ガーン。酷くない。陽菜子ちゃん彩斗酷くない!」
「何で私に振るんですか?」
「伊吹さん無視していいぞ。こんなの1年毎回反応してたら体力持たないから」
「彩斗のばーか」
「はいはい。馬鹿ですよー」
そんな適当な返事を返して自分の指定されている席に座る。
少し時間が経つと、俺が放置した菜々美の相手をしてあげた伊吹さんが疲弊した顔で俺の後ろの席に座る。
「おつかれ」
「別に疲れてないけど」
「あ、そう」
俺かそう返事を返すと直ぐに伊吹さんの周りには人が集まってきて騒がしくなった。
なので俺はイヤホンを付けて周りの音を消す。
人気者も大変だなぁ。
曲を1曲聞き終えたと同時に隣の席に誰かが座る。
何も考えずに隣を見るとつい先日車に轢かれそうになった加藤さんが伊吹さんと菜々美を見ながら気まずそうな表情で座っていた。
だが特に声をかける暇も無く先生が教室入ってきてホームルームが始まった。
ホームルームは簡単な自己紹介、必要書類、教材の配布のみで短時間で終わった。
「じゃあ、今日はこれで終わりだ。帰った帰った」
今年も何故か担任の近藤先生がそれだけを言って教室から出ていった。
「彩斗ー!今日これから暇か?」
帰る準備をしていた俺に声をかけてきたのは桜井だ。
どうせ今からカラオケとか行くから来ないかという感じだろう。
普段なら早く学校が終わる。
=直帰。
だから即答で断るのがいつもの俺だ。
どうせ桜井も断られると思っていそうだ。
だが今の俺には中々に深刻な問題がある。
和真と違うクラスになったことでまともに話した事がある男子が桜井の他に2~3人しかいない。
なので俺はこの誘いに乗ることにした。
「暇だぞ」
「そこをなんとか!…ん?」
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