②黄泉平坂神話と火山災害


②黄泉平坂伝説

 黄泉国よもつくにへと行ってしまったイザナミを取り戻すべく、イザナギも黄泉国へと出向く。しかし、ナミは既に黄泉の食べ物を口にしてしまったので帰れないと言う(黄泉戸契よもつへぐい)。説得を続けるナギにナミは言った。


「じゃあ帰るわ! でも、途中で絶対振り向くなよ!?」


 現世に向かって逃げる二人。しかし、途中でついナギが振り返ってしまう。そこで見たのは体が腐り、体中に雷神をまとったナミの姿だった。驚いたナギは全力で駆け出した。ナミは見られたことに激昂して、刺客を差し向ける。

 ナギは持ってた物を投げまくって頑張って逃げたが、追いつかれてしまう。そこに生えていた桃を投げて最後の雷神を追い返し、ナギナミは最後の約束をする。


「うち一日千人殺すね!」

「じゃあ俺は一日1500人産むわ!」


 こうしてイザナギは一日千人殺されるといういらん約束をして、戻って来たのである。


 この黄泉平坂伝説は破局噴火後の光景を表しているのではないかという説がある。

全ての動植物が死に絶え、噴石と有毒ガスで死んだ死体が累々と積み重なり、そこにある食物は有毒物質で汚染された状態。これを黄泉国として伝承していった可能性である。


 この神話にも確かに警告が感じられる。①振り返るな②黄泉の食べ物を食べるな、という警告である。


 以前、雲仙普賢岳の噴火災害の古い映像を何かで見た事があるが、火口から噴出した土砂流がものすごい勢いで地上を侵食していく光景だった。振り返らずに逃げよ、汚染されたものは食うな、という教訓を語り継ぎ、神話化したという説には信憑性があるように感じられる。


 それと黄泉平坂の入り口とされる場所が島根県松江市にある。そこは古来から黄泉平坂の入口として伝承が残っているそうなのだが、ここは鬼界カルデラの火山灰が20cm積もっていたと推定される地域の端っこに当たる。このあたりが被害甚大地域とそうでない地域の境目となっていた可能性が高く、7300年前の一大事件の記憶が残る土地なのだと考えると中々ロマンがある。

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