ワノフスキーの古事記火山神話説

 鬼界カルデラ噴火は縄文人にとてつもない衝撃を与えた。これまで中小規模の噴火は経験していただろうが、これほどの大噴火はおそらく聞いた事もないレベルだったろう。

 日本列島における破局噴火はそれ以前となると3万年前の姶良カルデラ噴火まで遡る。人間は文字や口伝による伝承能力があるが、それでも数千年が限度であり、鬼界カルデラクラスの破局噴火は文字通り空前絶後の超災害であったと言える。


 アレクサンドル・ワノフスキーはこの鬼界カルデラ噴火が日本神話の基となったという説を提唱した。この男は元ロシアの共産主義活動家で、同時にシェイクスピアの研究に没頭していたようである。ロシア社会主義革命への協力後に服役、刑期を終えてから日本に亡命し、早稲田大学で教鞭を取ったという変な経歴の学者である。ちなみにロシアも過去に破局噴火を経験した土地で、8400年前のクリル湖噴火がそれである。


 彼の経歴を見る限り、インテリ層かつ学者肌。興味を持ったことに没頭する性格のようで、日本の火山と神話の関連性は彼の興味を惹きつけたのだろう。


 彼は国生み神話から始まる古事記は鬼界カルデラ噴火の伝承が元になっており、スサノオや主だった国津神は火山神、アマテラスや天津神がそれを鎮める神なのではないかと提唱した。この説は大東亜戦争以前の1941年に発表され、一定の評価を得たとされている。

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