鬼界カルデラ噴火

 前項でちょろっと書いた『鬼界カルデラ』について書く。


 鬼界カルデラ噴火とは、7300年前に九州南部で起きた超巨大噴火を指す。現在の九州鹿児島県、この沖合50km、硫黄島などがある近辺に海底火山がある。縄文前期にあたる7300年前、この鬼界カルデラは地球史に残るほどの超巨大噴火をし、結果、九州四国は一瞬にして壊滅、西日本は30cmもの火山灰に埋もれたというカタストロフィである。

 九州~西日本のみならず、本州のほぼ全域が火山灰被害を受けており、ちょっと規格外の大災害である。


 この時の津波は大分や徳島まで押し寄せた形跡が見られるが、それ以上に噴石や有毒ガスの被害がすさまじかった事だろう。以後、日本列島南西部の回復には約1000年という期間を要する。

 また、日本列島外においてもこの火山灰は世界中に拡散し、冷害や不作の要因になったと推測される。


 7300年前というのは、紀元前5300年のあたりであり、いわゆる四大文明の萌芽の時期と重なる。これは妄想の域を出ないが、この鬼界カルデラ噴火が世界各地に食糧危機をもたらし、人類が石器時代から移行するトリガーになったのではないかと考える。


 話を日本に戻す。列島南部の縄文人たちは壊滅的被害を受けつつも、生き延びた者達がいたはずである。彼らは火山への強い恐怖を植え付けられながらも、生きていかねばならない。遠方への避難生活を開始することになる。なんせ西日本全域は火山灰による死の土地と化しており、本州東部でも濃い火山灰が上空を滞留していたと思われる。

 今まで書いてきたお気楽な避難生活とは違い、生死を懸けた危機に列島中が直面していた。中部地方あたりからは生活する事ができる環境であったと思われるが、火山灰被害によって食糧危機は免れない。

 彼らはこれまでの経験から、受け入れられるだけの避難民は受け容れつつも、受け容れられない難民たちはより遠方へと避難することになる。


 この時、土地の奪い合いは発生しただろうか?

 おそらくあったのではないかと思うが、それでも数は少なかっただろう。避難民たちは取る物も取りあえず命からがら逃げ延びてきており、集団戦闘を行えるだけの規模、統制、食糧を持ち合わせていたとは考えられない。突発的な半ばパニック状態の暴動が発生しつつも、とにかくどんどんと散らばっていったと思われる。


 こうして、列島東部、朝鮮半島南部に避難した者達の他、受け容れられなかった者達は海を伝って、アジアや場合によってはアラスカ方面まで逃げ延びていった。

 しかし、地球規模の食糧危機は長く続き、彼らは流浪の民と化したと思われる。遠方への避難をを繰り返しながら、時折、故郷の復興を確認しに戻る。そういった生活を1000年繰り返す中で、結果的に航海術を身に着けたのではないかと考えている。

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