小5編 妹VS恐怖の視線 ※これはホラー小説ではありません。

 私たちは双子だ。それを前提に話をさせてもらう。

 ちなみに私は双子の妹。


 この話は、小学5年生の時の、誕生日1週間前にさかのぼる。


 ―――――


 もうすぐ、11回目の誕生日を迎えようとしている、10月。

 当時の私は大きな悩みがあったのだ。



 ――もうすぐ誕生日!!



 これはその時の私からしたら嬉しいことなのだが、それ以上にそれについての悩みがあったのだ。


 ――姉のプレゼント、どうしようかな?


 今まで姉に誕生日プレゼントなどあげたことがない。

 でも、やっぱり姉は欲しく思っているのだろうか?などと勝手な考えを抱き、私は誕プレを用意することを決意する。


 それはいいのだが、姉は何が欲しいのだろう?

 双子とは言っても、欲しいものなどわからない。

 無難に文房具か……。


 当時の私たちはある本がきっかけでとっても本にハマっていた。かといって、本を買うのには抵抗があったのだ。せっかく本を買うのなら、一緒に行って買いたい。


 それが、主な課題だった。


 その課題と闘っているともう誕生日まであと2日!


 さすがにもう決めないと、と授業中も考え続けた結果、



 ――唯一 家にある、本が好きになったきっかけであるその異世界ファンタジーの本の登場人物の絵をかいてプレゼントすればよいのでは?



 という結論に至った。


 決して絵が得意とは言えないけど、せめてそれだけでもいいからプレゼントしよう!と思い、残り2日で絵を描くことに決定。


 絵を描くのに慣れている方なら2日なんて余裕なんでしょうけど、私は学校の図工の時間以外に描くことがなかった初心者なのです!!(自信を持っていうことじゃない)


 そんな初心者わたしには2日で描くことなんかできっこありませんでした。

 小学校ですから宿題もあるわけですし、家に帰れば姉と必然的に一緒に過ごすことになるのです。姉がいない時間なんて、1秒もないのです!(大げさ。でもホント)


 そこで私は考える。


 また授業中に頭をぐるぐると悩ませ、



 ――寝る時間を削って描けば。



 という結論に至った。


 寝る時間は同じなので、姉が寝たタイミングを見計らって起き、こっそりと描けばばれないんじゃない?という安易なわたしの考えは、次の瞬間に現実を知ります。


 ――寝る場所、同じ部屋だ。


 そう。私たちの部屋は仕切りのない、同じ部屋で寝ているのです。

 2人で1つの部屋を使っている、とでも言いましょうか。

 とにかく、少しでも物音を立てればバレてしまうし、本の登場人物の絵を描くのなら、素人の私には実際の本を見て描くことしかできません。でもその本を見るのには電気をつけなきゃいけないし……。


 でも、姉は一度寝るとなかなか起きないことを知っていた。双子でよかったと思った瞬間だった。



 ――よし、姉が寝たのを見計らって堂々と描こう!



 勝負の日、誕生日前日がやってきました。


 なんてことないように、いつも通りの会話をしたりして、平静を装う私。


 内心は緊張でドッキドキ。


 姉がベッドに入り、20分後、完全に寝た……と思います。

 物音をなるべく立てないようにして、勉強机に備え付けてある電気をつける。


 ピカッと机の周りだけ明るくなりました。

 そっと姉の様子を見ると、しっかり寝ています。第一関門、クリアです!


 準備してあった筆記用具と紙、本を机に置きいていざ、と描き始めました。

 自分で言うのもなんだけど、結構うまく書けてる。第2関門突破!

 しばらく、シャッシャーコツ……といった鉛筆を紙に滑らせる音が響きました。


 少し疲れて、ふと姉のほうを見ると……。




 ――目が合いました。




 起きていたのです。

 本気で怖かったです。


 いつから起きていたのだろう?と謎に冷静に考え、



 ――まあいいか。



「絶対寝ぼけてるし、寝たらどうせ忘れるだろう」という謎すぎる結論に至る。


 そのまま気にすることなく描き続け、また姉のほうを見ればすっかり寝ていました。

 うん、忘れてくれるかな?


 それにしても怖かったなあ……。


 バレてしまったのなら、この苦労は何なんだ……。

 私は今までの苦労を思い浮かべながら、眠りについた。


 ―――――


 そのときの私は、見事姉が忘れてくれたのだと思ってましたが、この話を書くためによく聞くと、本当は覚えていたそうです……。その時は気遣ってくれたのだと思いました(笑)


 よって、敗北。

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