ドライブイン安土 飛躍3
名実共に、夫婦となったオレと清さん。清さんの嬉し涙の後に、ちゃっかり2回戦を要求してしまった訳だ。清さんは初めてだから、痛いと思ったがそうでもなかった。
「尊さま・・・今一度、一つになりとうございます・・・」
「え!?」
若いと言えど、オレは貧弱な男だ。いや、現代の若い男子でもそうそう2回戦は難しいのではないだろうか。だって、一度目が終わって15分と経っていないんだから。
「やはり・・・難しいでしょうか・・・(チュポッ)」
「お、おぉ・・・が、頑張るよ!」
と、強制的とは言わないが、やる気がなくても、口でされると元気にはなる。まぁ、オレが早撃ちなのがいけないのかもしれないけど。それでも2回目はオレも余裕ができ、存分に清さんを堪能した。
本当にこういう事を『愛している』というのだと思う。兎に角、全てが愛おしい。
そんな気持ちで迎えた次の日の朝・・・
「(クァ〜)ふぅ〜!さて・・・今日から本格的に頑張ろうかな!」
「尊様!おはようございます!」
「「おはようございます!!」」
声を掛けてきてくれたのは、五郎君、吉ちゃん、滝ちゃんだ。最早、毎朝の日課となった朝の素振りの時間だ。外でゲルテントで寝泊まりしてもらっているため、早くこの子達の家をどうにかしてあげないと可哀想だ。
「うん。おはよう!ごめんね?今日にでも鍛治をしてた源三郎さんって人を呼びに行くから、その人に家を作ってもらうからもう少し我慢してね?」
「いえいえ!今のままでもかなり満足していますよ!ふわふわの布団なる物に、毎日、湯浴みもでき、日替わりで温泉なる物も感じられますし!」
「そうです!私も今までで1番贅沢をしています!」
「私も同じです!毎日、お腹いっぱいにご飯を頂き、甘味まで頂ける・・・これ程、幸せな所なんて他所にはありません!」
「そう・・・なのかな?オレは普通だと思うし、オレならテントで寝るのは勘弁なんだけどね。まぁもう少しだけ我慢してよ」
五郎君は男の癖に・・・といえば、失礼だが、男なのに清潔好きだ。特に風呂が大好きみたいで入浴剤を毎日、日替わりで使っていて石鹸やシャンプーも大好きらしく、初日の時は・・・
「ぬぉぉぉ!!これはなんですか!?!?白い液がヌメヌメです!もっと!もっとぉぉ〜!」
と、風呂場から独り言が大きく聞こえていた。それと、皆々の下着の件だが、慶次さん以外はボクサーパンツだ。女性の方は清さんに言って、スポーツブラとショーツを支給している。ちゃんと1人3セットずつ。
この時代に来て分かった事は胸に関しては現代程、羞恥心はないみたいで、そりゃ何も隠さず外を出歩く事はないが、家の中ではオレが居ても太郎君達が居ても、女性陣は普通に上は隠さずに歩いている事もある。
オレはちゃんと隠すようにと言ったのだが、どうやらこれも感覚が違うようで、
「男女で大きさこそ違いますが、男は隠さなくとも良いのですか?何で女だけ?」
と、梅ちゃんは初めて自分の意見を言ってきた。オレは『色っぽいし、梅ちゃん達が可愛いから変な気を起こしてもいけないだろう!?』と言ったのだが・・・
「私は尊様ならば喜んで夜伽に・・・」
と、清さんの居る前で言い出したので、ルールとして必ず着用するように言った。最初こそ、訓練の時に動き難いとか、変な感じがするとか言っていたが、今はそれがないと不安になるらしい。
いや、まぁラッキースケベなんて求めていない・・・事もないけど、一応ね?
それと慶次さんに関しては・・・
「男の最後の砦は純白の褌と古今東西昔から決まっている。俺ぁ〜!あっ!褌を!あっ!辞めないぜ!?」
と、歌舞伎風に言い出したので、オレはもう何も言わない事にした。
1時間程で朝の訓練が終わり、今日の業務へと入る。
ちなみにだが、朝ご飯に関しては必ずオレが皆に作ってあげる事にしている。これは分かった事だが、どうやらオレが作る飯を食べる期間が長ければ強化時間が伸びるみたいだ。
蓄積されているのかどうかまでは分からないが、今は朝食べると夜まで、強化状態が続くみたいで、それも自分自身でもそれが分かるそうだ。
そんな効果があるならオレ自身にも与えて欲しいくらいだが、残念ながらオレ自身にはそんな能力はない。その強化を以って、出店隊は有り得ない行軍にて営業してくれている。
次郎君が神速の如き包丁捌きで牛蒡や人参を千切りにし、きんぴらを作っている。流石のオレもこれには負けたと言い切れる。
今日の握りの具材はきんぴらに、梅干しシラス、肉味噌みたいだ。
サンドイッチの方は桜ちゃん達が作っている。卵とハム、チーズ、マヨネーズ。間違いないやつだ。
店の時計で7時を過ぎた所で朝のミーティングだ。
「では今日も張り切って頑張りましょう!」
「わっはっはっ!尊も男になったみたいだから!出店隊は遠慮せず売って来い!この店の事は俺に任せておけ!」
「は!?」
「いや、怒るなって!そもそも尊の顔に出ているぞ?昨晩に女を抱いたってな?それに奥方も幸せそうな顔だ!誠に良き!夫婦はそうでなくちゃならねぇ〜!と、いう事で今晩は俺っちも大津の花街に行くから小遣いを頼もう!」
「は!?」
「・・・・わっはっはっ!冗談だって!」
慶次さんの冗談・・・絶対に冗談じゃねーわ。この人はプレイボーイなのは知っている。いや、結婚はしているし、何気に子供も居るのは知っている。
だが、体裁上の結婚らしく、遠い親戚の人が奥さんらしいのだが、前田利家?の元に娘と奥さんが居るらしく、かなり仲は悪いらしい。
元々、子供を2人産んだのだが、2人とも女の子だったみたいで、奥さんも前田家から責められ、慶次さんには『もう1人仕込め』と圧力が掛かり、それが嫌になって各地を放浪したり好き勝手していた所、オレから声が掛かったそうな。
だが、この人の本心は違うって事も知っている。この時代は何回も言うように女に人権なんて殆どない時代だ。男を産まない女に対しては相当、当たりが強い。それに、出産も本当に命懸けの事だろう。それを男は簡単に言うのだから、母体の負担は計り知れないだろう。
特に、宗家の前田利家、まつ夫婦には若い時から子供が多い。戦国一のロリコン・・・まぁ本人の前では絶対に言えないし、未だまつさんには会っても居ないけど、かなり比べられていると分かる。
だから、慶次さんが悪者になり、夫婦仲が悪い様に偽装しているのが容易に分かる。
体裁は悪いかもしれないし、家にも居づらいかもしれないけど、死ぬよりましだからな。 慶次さんは情に厚い。それは最初から知っている。だから、慶次さんには、早くオレが力を付けて、『前田家』という分家ではあるが、近江前田家と後世にも残るくらいの名家にでもなってもらい、奥さんと娘さんを呼び寄せるくらいになってもらわないといけない。
「(ポンポン)慶次さん・・・知ってるんですよ?実は愛妻家って。けど、遊び過ぎなのでは!?」
先に言ったように愛妻家だろう。だが、この人がプレイボーイなのは本当だ。いつかの夜に言ってたっけ?
「(ゴグッ)俺ぁ〜惚れた女は1人だけだ。これは変わらねぇ〜。この先も愛しているのは嫁御だけだ。(ゴグッ)だが、好きな女は山程居るんだ。俺ぁ〜その女の期待には応えてやれないが、一晩の温もりは与えてやろうと思っているんだ。(ゴグッ)」
カッコつけてウィスキー飲みながら言ってたけど、言ってる事は最低な?現代のホストも顔真っ青なくらいの下衆発言な?自らワンナイトラブします!って言ってるんだから。奥さんから見たら、『俺ぁ〜浮気してくるからな!一晩だけの関係だから!』って言ってるものだ。まぁこれが慶次さんぽくもある。
「まぁ慶次さんの事は放っておいて・・・皆は頑張ってほしい!オレは清さんと甲賀村に向かうから」
「え!?本日に参るのですか!?」
「うん?そうだよ?早くに米とか支給はしたけど、自活できるようにしないといけないでしょ?それに身体が悪い人も居るんだよね?例の鷹のマークの栄養ドリンクを渡そうと思っているんだ。午前中に源三郎さんとてるさんを迎えに行って、その足で甲賀に向かうよ」
「移動はどうされるのですか!?」
「よくぞ聞いてくれた!恐れ!慄け!軽トラを買ったのだよ!軽トラを!見たまえ!この未来の最強利器を!軽トラの前では織田様の小雲雀も霞んで見える!あっ!これは内緒ね?」
「「「おぉ〜!!」」」
「鉄の塊!?これは!?車なる物ですか!?」
「清さん!流石!流石、ネットサーフィンしている事だけある!これが車だよ!ドライブと洒落込もう!」
それから皆が乗りたい乗りたいと言うから荷台に乗せ、清さんは助手席で少し走った。まぁかなり低速でだけど。
それとこれも新事実だが、この時代の道は、舗装されてないし、凸凹道で人がやっとこさ歩けるくらいの道を想像している人も多いだろう。
斯くいうオレもそうだった。だが、実際は意外にも道幅はそれなりにある。
特に平地なら凸凹道ではあるが普通に現代のトラックとまではいかないが、普通車も余裕で走れるくらいに道幅はある。
ただ、山越えに関してはそれだけではない。最早、道と言っていいものなのか。特に店の後ろに聳え立つ、繖山に関しては現代のような峠道なんてものはない。だが、この時代の人からすれば道があるのだそうだ。オレの中での戦国ミステリーの一つでもある。
「では行って参ります!尊様と清様!お気をつけ下さい!」
「はいはーい。太郎君もねー!」
「2番隊も出ます!尊様!清様!くれぐれも・・・」
「大丈夫だって!桜ちゃんも変な男に捕まらないようにねぇ〜!」
「3番隊も安土へ向かいます!」
「はいよ!あっ、梅ちゃん!もしよければこれで写真撮ってきてくれない?石垣を作る集団が居るよね?穴太衆って名前だったかな?」
オレはタブレットから購入したビデオカメラを渡した。なんとお値段10貫もしやがった。だが、説明によれば・・・
《4kビデオカメラ》
高画質、高音質の集音マイクを備え付けた高性能ビデオカメラ。探偵、密偵、監視何でもこの一台で。
と、いうやつだ。怪しさ満点のビデオカメラだ。これを清水の舞台から飛び降りるくらいの勢いでポチッたのだ。何で石垣集団にこれを?と思うだろう。それは浪漫だからだ。石垣はカッコいい。
それに二の丸の案を出せと言われたから、岡部さんと穴太衆?と連携し、かの有名な箱館戦争の舞台となった五稜郭を再現してみたいからだ。
まぁ実際に再現は無理だろう。土地もないだろうし、そもそも山城にそんな物できない。あれはあの場所だからできたのであって・・・。けど、他にも言いたい事がある。だからまずは撮影して現場を見てみないといけない。
自分で行けばいいのだが、兎に角、今は忙しいのだ。
「ここを押せばいいのですね?畏まりました!」
「頼むね〜」
皆を見送ったあと、オレも次郎君と慶次さんに挨拶し、佐和山城下まで軽トラを走らせた。ちなみにオートマチックだ。こんな凸凹道ならマニュアルなら免許こそマニュアルだがオレは発進できなかったかもしれない。
それと・・・佐和山城下に向かう時に、先に出発した太郎君と五郎君に追い付いてしまった事は気まずかった。
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