第4話 嗚咽



「うぅっ……ううぅっ……」


 嗚咽おえつが聞こえる。

私の死をとむらう声だろうか。



――でも、意識がある。ここは死後の世界なのか?



私の身体は燃えるような熱に包まれていた。

感じたことのないたぎる愛の熱。

それは生命を超越した、真紅にまみれた血液の炎だった。



うそっ……うそでしょ?



血染めの体躯たいく、悲痛に沈んだ顔。

半分以上が鮮血で色濃く染まっている。


「なんで、どうして?」

「――美春、ごめん、ね……」



「そんな……お母さん‼︎」

「さみしい思いを、させて……」


その見るも無惨な異形のむくろは、

どんなに救急処置を施したとしても、助からない。


もはや、その凄惨の極みは火を見るよりも明らかだった。



「どうして⁉ 私、死のうとしていたんだよ‼ 

どうしてお母さんが……‼」


「生きてさえいれば、きっと……春が、くるから……」

「私なんて、ハルなんて、死んでしまえばいいのに……」



いのちの炎がきえていく……



「こ、こんなことになるなら……私なんて……

私なんて生まれてこなければよかった……」



「い、生きてさえ、いれば、いつかきっと、

美しい春に、なれる、から……」

「お母さん 死なないで!!!」



最後にみせた、命のえがお。


母がながした最期のなみだ。


その色は、どこまでも、紅かった。

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