第5話 道中
パンを持ちながら、彼女が口を開ける。
「私の
僕は、うなずいた。
「分かりました」
しかし――と思う。
「何から何まで、僕の
「これくらい
「…………」
逆に彼女は、人が良すぎるのでは? と
僕は、
「ちなみに、ですけど……」
「はい?」
「住民登録は、
「まあ、時間はかかりますね」
「ですよね」
「それと、ナオキさんは
「それには、何か理由でもあるんですか?」
「ええ。異世界人という
「良くも悪くも、というのは?」
「異世界人は、国に
「なるほど……」
やはり、この世界にも争いごとというのは、
「もしかして、なんですが……」
「何ですか?」
「異世界人は、
サラさんは、
「それはもう、とうに過ぎ去った
「それに?」
「今は、
「そうなんですね」
「異世界人の存在は、あくまで武力のアピールにおいて、
なるほど。
こっちの世界も、元の世界と
「騎士との顔合わせというのは、いつ
「まずは、
「まだ何ともいえない、ということですね」
「彼らも、
「分かりました」
サラさんは、
「時間も時間ですし、そろそろ家を出ましょうか。ギルドへ向かいましょう」
「はい」
僕とサラさんは、
家の
水色の空に、緑色のオーロラ
サラさんと横になって歩き、また会話を始める。
「そういえば、この国の
「ソメイユです」
「ソメイユ……」
つまり僕は、地球の日本から、異世界イソニアの国ソメイユに
「国は、全部でいくつくらい存在するんですか?」
「確認されているだけで、9つですね」
「確認されているだけ……ということは、
「ええ、そんな感じです」
なるほど。
この世界にも、
そんなことを考えていたら、だった。
「お~い! そこの、
と、足をふらつかせながら、サラさんの方へ近づいてくる、
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顔を赤色に
どこからどう見ても、ただの
僕は、サラさんに目を向ける。
彼女は、つぶやいていた。
「うわ……」
と。
しかし、アルコールで
「はやく
「はい、そうですね」
僕とサラさんは、男を
だが酔っ払いは、そんな僕たちの
「
僕は、男の発した言葉のうちの、とある一つの
「……異世界人?」
その言葉がどうしても気になり、僕は男に目をやる。
確かに、言われてみれば顔つきが日本人とどこか
彼は、どこの
――
「ナオキさん……?」
僕は、足を止めた。
そして、酔っ払いのところまで歩き、声をかける。
「あの」
「ああ? なんだぁ? この
「平凡な男であることは、
「ああ、間違いないな!
まあ、気にもしないけど。
それよりもだ。
「あなたは、どの世界からここまで転移してきたんですか? よろしければ、教えてもらえませんか?」
「ちょ、ちょっとっ!? ナオキさん! 行きましょう! こんな人は、ほっといて!」
「こんなひとっ!?」
男を見ると、
――しまったな。
僕は、
自分が
僕は、サラさんに視線を送る。
「サラさんは、先にギルドへ行っててください」
「な、なんでですか?」
「ちょっと、彼と話したいことがあるので」
とりあえず、まずは彼女をこの
面倒ごとが
しかし、彼女は足を動かす様子が見られなかった。
人の良い女性にも
「おいっ!
男が、瓶を
たぶん、話の
「俺をなめやがって!
さて、どうしたものか。
とりあえず、こういう人間は、
「す、すげー……」
……こんな感じで、いいだろうか?
男を見ると、
「――バカにしているのかあっ!」
どうやら僕は、
かなりお怒りであることが、伝わってくる。
もう、
「サラさん。僕もすぐに
「そ、それはできませんよっ!」
うーん……。
本当に、人が良すぎるのも問題である。
いや、そもそもは僕が悪いんだけども。
とにかく、サラさんには逃げてほしいのだった。
「あぁ? 俺の
いよいよ男の怒りの
気づいた頃には、僕の
「――な、ナオキさんっ!?」
サラさんの声が、耳に入ってくる。
僕は、今から来るであろう、
「俺の強さを思い知れえっ!」
そして、男の拳が僕の頬に
「………………………………ん?」
しかし、僕の
「…………あれ?」
僕は、逆に
どういうことだ?
「…………」
男のグーパン拳は、僕の頬に直接は
しかし、ただそれだけだった。
ただ、それだけだったのだ。
まるで、
それと
「はぁ!?」
男は、顔に
何かに、ビックリしている様子。
……まあ、きっとこのわけの分からない
僕だって、状況が
殴られたはずなのに痛くない。
殴られる前と何も変わらない――まさに
「お、俺の攻撃力850のグーパンチが……きいていないっ!?」
男は、僕の頬から拳を離した。
そして――
「ば、
そんな
僕は、
やはり、痛みは無い。
「本当に、無傷なんだよな……」
あの時、
「な、ナオキさん!
サラさんが、そんな僕のところまで走り、殴られた方の頬を
彼女は、言う。
「あれ? 傷一つ、ついていませんね」
「ええ、そうなんです」
本当に、なぜなんだろう?
僕は、一つの
「きっと、酔っ払ってて、力が入っていなかったのでは? と思います」
「そ、そうなのでしょうか……?」
「たぶんですけど」
「でも――」
サラさんは、言った。
「――拳をふるう
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