裏5項 再会


 目を開けると、そこは見慣れたお屋敷だった。


 手をかざしてみて見る。

 今のわたしの手より、小さくて細い。


 鏡を見てみると、まだ12、3歳のようだった。

 顔はわたしのようだが……。

 若くなったと言うより、子供に戻ってしまった。


 目の前には、執事のセバスさんがいる。

 セバスさんも、わたしが知っている姿よりも、若々しい。


 「あなたの履歴書、誕生日とか年齢が書いてないじゃないですか。と言うか空白だらけで……、旦那さまも、なんでこんな娘を……」


 思い出した。

 今日は、ルーク様の専属メイドになった日だ。

 

 そうだ、あの時のわたしはこう答えたのだ。

 「書き忘れちゃいました。わたしは14歳です!!」


 セバスさんは、わたしを下から舐めるように見ると。

 「ふん。わかりました。どうせ、あの坊ちゃんのメイドですからね。どうせ長続きしないでしょうし」


 なんとかセーフだったみたいだ。

 ここで不採用になったら、女神様に怒られてしまう。


 「坊っちゃんは、今は成人の儀で王宮に行っています。昼過ぎには戻るでしょうから、あなたは身だしなみを整え、ご挨拶の準備をしておくように」


 わたしは、それからメイド長のところに行き、着任の挨拶をした。

 メイド長さん、慣れたら優しくなったけれど、最初は意地悪だったんだよなぁ。


 メイド長は不機嫌そうに、三角メガネをキッとあげる。

 そうそう。あの仕草。懐かしい。ウフフ。


 不自然な態度はできない。

 些細なことで、今後の色々が変わってしまったら困るからだ。


 わたしはメイド長が喜ぶ話題は熟知していたが、努めて、初対面の挨拶をした。



 そろそろ、ルーク様が戻る時間かな?

 10年もこの時を待っていたのだ。


 ソワソワしてしまう。


 執事のセバスさんが呼びにくる。

 そして、ルーク様の部屋に通される。


 わたしは顔を上げてルーク様をみる。

 ルーク様もまだ若い。髪の毛もフサフサで美少年だ。


 この人に会うために、はるばる戻ってきたのだ。

 抱きつきたいくらいだが、ここは我慢。


 わたしはセバスさんに促されて挨拶をした。

 これから沢山の思い出を共有することになるご主人様の方を向く。


 そして、わたしは笑顔で元気いっぱいに言った。


 「わたしはメイと言います。今日からルークさまの専属メイドとなるように仰せ付かりました。どうぞ、よろしくお願いいたします」



★今回のお話しの表側★

「第5項 再会のゴミカス」

https://kakuyomu.jp/works/16818093075519809159/episodes/16818093075520406606



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