【閑話】勇者と国王

シャルル・ピア・パヴァロアは、パヴァロア王国の姫君であり、勇者アーサーの婚約者であった。


勇者アーサーはシャルルのことを(一方的に)愛しており


「王よ!!シャルル姫が誘拐されたというのは本当か!!」


この日、婚約者が攫われたことを知ったアーサーは、王城へと来ていた。


「おぉ!!勇者アーサーよ、よく来てくれた!!」


王座の間に来たアーサーに対し、快く出迎える国王。


「そうなのだ!!姫は魔王軍に......魔王軍に攫われてしまったのだ!!」

「何だと!?」


国王の言葉に対し、そう叫ぶアーサー。


そして、怒りを露わにした後


「おのれ魔王め.....シャルルを誘拐すれば、俺が屈すると思ってるのか!!」


と言うと


「で、では!?」

「安心しろ、シャルル姫はこの俺......勇者アーサーが直々に救出してやる」


ニッと笑いながら、そう言った。


その言葉を聞いた王は、目を見開くと


「ありがとう....」


と、勇者に向けて言った。


「魔王退治はこの俺の役目。シャルル姫を救出した際は、いつものように銅像を作っておくんだな」

「ハハッ!!」


そう言った後、王座の間を後にするアーサー。


アーサーの勇者としての能力は本物なのだが.......その傲慢さと自意識過剰さ故に、シャルルに嫌われていることなど、全く持って思ってもいなかった。


また、シャルルに嫌われているのは勇者だけではなく


「流石は勇者......威厳が違うな」


そんな勇者の本性を見抜けない上に、彼女を理想を姫君とするべく、様々な制限を行い、縛り付けていた国王もまた、シャルルに嫌われていたのだ。


「あの......国王陛下」

「何だ?」

「銅像を建てるのは良いのですが.....そのお金はどこから.......」


宰相がそう尋ねると、国王はフッと傲慢な顔になった後


「安心しろ、既にその金なら用意されている」


と言った。


「.......というと?」

「実はな、我が国が誇る大商会.....ゴート商会から多額の献金があったのだ」

「....ヘ?」


国王の言葉に対し、おもわずそう呟く宰相。


「その金を使えば、銅造など簡単に建てることができる」

「しかし、ゴート商会は黒い噂がチラホラ聞こえる輩では.....?」

「そんなことは関係ない。私は金が手に入れば、それで良いのだ」


そう言った後、ニヤリと笑う国王。


そんなわけで、婚約者の誘拐を知った勇者アーサーは、救出のため、仲間達と共に、旅に出たのだが......彼は知らなかった。


その婚約者であるシャルル本人は、ワザと魔王軍に捕まっていた上に、四天王となり、自身と敵対していることを.......

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