最後の告白

ギャル子さんと僕の冒険は険しくもあり、しかし楽しいものであった。

ある時は戦い。


「私の覚えたてのバフ魔法を岩ちゃんにかけるから、あと宜しく♪」


「はい、頑張ります‼」


ある時は砂漠を歩き。


「砂漠暑いねー♪ウケる♪」


「水無くなって死ぬかもしれないのに、元気ですね。」


ある時は氷河の上を歩き。


「寒っ‼笑える♪」


「暑くても、寒くてもギャル子さんは笑ってますね♪」


ある時は四天王とも戦い。


「よくぞ私を破った・・・しかし私は四天王でも最弱の存在‼」


「えー、一番弱いって自分で言うの辛たにえんじゃない?大丈夫?」


「ギャル子さん、そこは突っ込まないであげて。」


そうして、この世界を支配している魔王に挑むことに。


「流石に魔王ともなると迫力あるー♪武者震いが止まらんし♪」


「ギャル子さん、この戦いが終わっ・・・。」


「あっ、それ死亡フラグって言うんでしょ?言ったらダメだかんね。終った後に聞いたげる。」


「・・・はい。」


「それじゃあ行きますか♪」


「行きましょう。」


激しい戦いの後、僕たちは二人で魔王を打ち破った。

その後、僕はギャル子さんにプロポーズをして、オケマルをいただいて夫婦になった。僕は王国の魔法の先生して、ギャル子さんはネイルサロンを開業して、二人で働きながら仲睦まじく暮らした。残念ながら二人の間に子供は出来なかったが、その分二人での時間を過ごせて私は幸せだった。

異世界に来て80年程過ぎた。とうとう病に倒れた私はベッドで寝たきりの生活になり、いよいよ最後の時を迎えようとしていた。だがその前に、私は最愛の妻に最後の告白をしないといけない。これだけは言っておかないといけないのだ。


「やっほー♪調子どうー♪」


80年前と変わらぬ白ギャルのまま、ギャル子は私に微笑みかける。彼女が年を取らないことに私は戸惑いがあまり無かった。


「ギャル子、私はもう死ぬらしい。だから最後に憐れな老人の告白を聞いてくれないか?」


「えーなになに♪気になるんだけど―♪」


ギャル子は気付いているのだろうか?それは定かでは無ないが、私はゆっくりと彼女に真実を告げた。


「ギャル子、お前は私が女神様に作ってもらった人間だ。私は一人で異世界を旅するのが寂しくて、お前という存在を女神に作ってもらったんだ。」


そう、ギャル子は私の同級生という設定の下に、女神に作ってもらった、俗に言う【オタクに優しいギャル】なのである。

私のクラスにギャルは居たが、とてもオタクに優しい感じはなく、オタクに対する当りも厳しかった。ゆえに私はオタクに優しいギャルに憧れて、旅のパートナーに選んだというワケである。

ギャル子はこれを聞いて怒るだろうか?私を軽蔑するだろうか?


「私が作られた存在?マジンガー?」


流石に戸惑いを隠せない様子だな。ちなみにギャル子が使っているギャル語も私のイメージが影響しているらしく、古かったり意味が違ったりするかもしれないのである。


「あはは♪なーんてね♪流石に気付いてたよ♪」


そんな風にいつもと変わらぬ笑みで私に笑いかけるギャル子。


「知っていたのかい?」


「なんとなくねー。だってあんだけ愛し合って子供も出来ないし、あーしが年も取らないっておかしくない?何か他と違うなーってバカでも気づくっしょ♪」


ということはギャル子は知っていて何も言わなかったということか。辛かったんじゃ無いだろうか?やはり早く言ってあげるべきだった。


「す、すまないことをしたね。心からお詫びする。」


「そんな堅苦しく謝んないで、岩ちゃんのおかげでアタシがココに居れて、最高の旦那様と幸せに暮らせたんだから、こんなに嬉しことないっしょ♪めっちゃ感謝してるし♪」


「ありがとう・・・ありがとう。」


ギャル子に優しい言葉を言われて、私は目から涙が溢れ、感謝の気持ちで胸がいっぱいになった。いつもギャル子は私の傍に居てくれて、気持ちが落ちている時は明るく励ましてくれた。作られた存在とは思えない彼女の優しさに、私は本当に感動させられていたんだ。


「ギャル子、もう一つ君に言わないといけないことが・・・私が死ねば君も・・・。」


「野暮なこと言わないの。全部わかってるから。」


ギャル子は寝ている私をギュッと抱きしめ、老人になって鈍くなった体にぬくもりが段々と伝わって来た。


「あぁ、ありがとう、ギャル子。君との日々は掛け替えのない日々だった。」


「どういたしまして♪」


この後、暫くして私は瞼を閉じ、ゆっくりと息を引き取った。

ギャル子も光となって消えてしまっただろうが、ギャル子の広めたギャルの文明は異世界に語り継がれていくだろう。

これにて私とオタクに優しいギャルの冒険は幕を閉じた。




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異世界でオタクに優しいギャルが傍に居てくれた タヌキング @kibamusi

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