第9話  あれって何?

私は自販機から小さいペットボトルを2つ取り出し、座っているまー君のところに戻る。


 「まー君〜。どっちがいい?」

 「どっちでもいい。」

 「じゃあ…こっち!はい!」


 私は彼にミルクティーを渡して、隣に座る。そして選ばれなかったレモンティーの蓋を開ける。


 「なんでこのチョイスなんだ。」

 「なんとなく。ミルクティーの方が甘いから疲れてるまー君にはいいかなって。」


 私達は今、駐車場にある公衆トイレの脇にあるベンチに座ってます。流石にずっと地面に直接座ってるのはちょっと…ね。

 飲み物を飲み、一息つくと彼が口を開いた。


 「で、お前。あれをいつから持ってた?というかそれ返せ。」

 「あっ。忘れてた…。はい。」


 私は腰につけたまま忘れていた、ベルトのようなものを彼に返す。彼はそれを受け取ると少し確認するようにぐるぐると回して見てる。そして、少し光ったかと思うと彼の手の中から消えていた。どうなってるの!?


 「消えた!?」

 「あぁ、普段は家に置いてある。戦うときにだけ呼び寄せてる。」


 うん、わかんない。どういう原理なんだろう?でも聞いた所でわからないと思った。それよりも聞かれたことに答えないと。

 あれ、というと私がいつの間にかプレートのようなもののことだよね。私はまー君の質問に答える。答えにならないと思うけど…。


 「実は…私もいつから持ってたかわからないんだ…。」

 「は?」

 「いや…わからないというか…覚えてない…って言ったほうがいいのかな…?」

 「はぁ…。つまり“いつの間にか”が鍵…なのか…?」


 とだけ言って彼は黙り込む。

 いや、黙らないで欲しい。色々と話してくれるって事になったからここに座ってるのに。

 まぁ、帰れないってのもあるけど…。

 歩いて帰れないこともないと思うけど、何時間かかるかわからない。それに多分まー君の体力が持たないと思う。だから回復を待つついでに座って色々聞くことにしたというわけです。

 「ねぇ…ちょっと〜?戻ってきて〜?」と彼の前で手を降って、自分の世界から戻ってきてもらう。


 「何が起きてるか話すって話だったな。悪い悪い。と言っても話すことが多すぎて何から話すか…。」

 「じゃあ、私から質問してもいい?」

 「あぁ…そうするか。その方が楽だな。」

 「えっと、じゃあまず…私ががいつの間にか持っていたあれ何?あとあのベルトのようなものも。」

 「やっぱそうだよな…。よく使えたなお前。」


 彼は頭を抱える。これは…褒められてるの?わからないので私は疑問をそのまま言葉にする。


 「…褒めてる?」

 「褒めてない。いやある意味褒めてる。」

 「ある意味…?」

 「話が逸れたな。お前がいつの間にか持っていたあれはプレートと呼んでる。星座の力の結晶だ。」

 「星座の力の…結晶?」

 「そう。俺は星座と契約して星力を分けて貰って戦っている。あれは俺自身の力ではない。」

 「そうなんだ…。」


 そうだよね。人間にあんな事できないよね。私は謎の安心感を覚えた。

 そして、いつの間にか握っていたものが、いつの間にかどこにもないことに気づいた、


 「あれ!?そういや私のプレートがないんだけど…?」

 「プレートは俺達が貰った星力で作り出したものだ。ほっとくと消えるぞ。契約の証、星座紋章は…こっちだ。」


 と言いながら彼は自分の左手を私に見せる。何かマークが刻まれている。私も自分の左手を見ると同じようにマークが刻まれていた。


 「…え、いつの間に?」

 「さぁな。でもそれがあるってことはやはりお前も選ばれたってことだな。」


 と言ってる彼の顔は少し嫌そうに見える。


 「…なんでそんな顔してるの?」

 「いや別に。なんでもない。その星座紋章を見た感じ、どうやらお前は牡羊座のようだな。」

 「見ただけでわかるの?」

 「逆に見覚えないのか…。ほら、星座占いとかで見たことないか?」


 そう言われたらテレビとかで見たことがある気がする。私は自分の左手をマークをもう一度見て、今度は触ってみる。…あれ。これ消えなくない?私の左手このまま!?


 「ねぇこれ消えないんだけど!?」

 「消えないぞ。契約の証なんだから。だからこうやって…。」


 と言いながら彼は左手のマークを消してみせた。え、消えたんだけど。


 「どうなってるの!?」

 「認識阻害の術だ。実際はあるものを認識できなくさせる。ほら。」


 またマークが現れた。なるほど、普段はこうやって隠してるんだ。そこで私の中に1つの疑問が浮かぶ。


 「もしかしてこの一ヶ月、ときどきまー君が姿を消してたのって…?」

 「そう。認識阻害の術でそこにいるのにいないように見せてた。」

 「なんでそんなこと…。」

 「星鎧を纏うときに周りの人に誰がしているのかバレないようにするためだ。もし周りに敵がいたら困るからな。」

 「なるほど…。」

 「…また話が少し脱線したな。ベルトみたいなやつはConstellation Armor Generate Gearと呼んでる。」

 「コンスト…コン………コーンスープ?」

 「違う。Constellation Armor Generate Gear。日本語にすると星座の鎧を生成する装備。まぁ長いから普段はギアと呼んでるな。このギアにプレートを入れてあの鎧を生成することで初めて俺達は戦える。」

 「ほぅ…。…質問していい?」

 「いいぞ。」

 「なんでわざわざ鎧を着て戦うの?特別な力があるんだから普通に戦えばいいんじゃないの?」

 「それは無理だ。理由は俺達の身体が弱すぎるからだ。」

 「どういうこと?」

 「今まで戦いを見てただろ?あんな人間やめてるやつの攻撃を生身で受けたらどうなると思う?」

 「えっと…痛そう?」

 「痛いで済んだら驚きだ。普通に大怪我、最悪死ぬぞ。だから星力で鎧を作って身を守るんだ。」

 「なるほど。」

 「で、鎧を身にまとった姿を星座騎士、Constellation Knightと呼ぶ。」


 私は少し頭の中を整理する。

 プレートとギアについてはだいたいわかった。

 つまり、左手にあるこの星座紋様が星座に選ばれた契約の証。プレートは選ばれた人が与えられた星力で作るもの。それとギアを使うことで星鎧を作ってあの怪物たちと戦うってこと。星鎧を纏った姿の人たちをConstellation Knightと呼ぶこと。

 …あれ?怪物についてまだ何も聞いてない!?

 

 「…あの怪物みたいなのって何?」

 「怪物には2種類いる。1つ目が澱み。今日最初に俺達を囲んできたやつだ。あれは地球から出たゴミのようなものだ。人間じゃない。というか本来はあんな姿じゃない。」

 「地球の…ゴミ?」

 「そう。生き物が生きていくのには、不必要なものを排泄する必要があるだろ?それと同じだ。」

 「いやそうじゃなくて…何が原因で生まれるの?地球は食事取らないでしょ?」

 「実はそこはまだちゃんとした原因はわかってないんだ。今の最有力は人間の負の感情説らしいが。」

 「負の感情…。」

 「で、もう1つが墜ち星。今日俺達を痛めつけたやつだな。あっちは残念ながら人間だ。」

 「え、あれ人間なの…!?」

 「残念ながらな。」

 「…どうして、あんな姿に?」

 「ちゃんとしたことはわからない。ただ澱みと星座の力が関係しているのは間違いないと考えていいだろう。」


 そう言った彼の顔は辛そうなの顔だった。理由はわからないけど…。

 澱み…墜ち星…。…澱みってあの黒いモヤモヤでもあるんだよね。

 …もしかして今日の私って凄くピンチだった!?


 「もしかして…私さっき墜ち星にされかけてたの?」

 「多分な。助かったのが不思議なくらいだ。なんともないんだろ?」

 「うん。あ、でもギアを使ったときの体の痛さがまだ残ってる感じがするけど…。まー君、あんな痛みをいつも我慢して戦ってるの?」

 「いや、そんなことはないんだけどな…。なぜだ?」


 彼はまた黙ってしまう。でも私も色々聞いて頭の中がぐちゃぐちゃになってたから休憩したかったしちょうど良かった。澱み…墜ち星…。墜ち星になってしまった人は助からないのかな。

 色々考えていると、私はようやく横においてあるスマホがめちゃくちゃ鳴ってることに気づいた。…いつ置いたんだろ?座ったときかな。

 手に取って確認するとひーちゃんから電話がかかってきていた。通知の数も凄い量になってた。私は急いで電話に出る。


 「あ〜…もしもし?」

 「やっと出た!由衣、あなた今どこにいるの?」

 「あ、えーと………まだ……駐車場にいます……。」

 「やっぱり……無事?怪我してない?」

 「うん!それは大丈夫!」

 「良かった…。で、真聡は?」

 「まー君?隣りにいるよ?」


 私はスピーカーボタンを押して彼に代わろうとする。彼は躊躇うけれど、私が強引に渡そうとするので諦めて電話に出る。


 「なんだ。」

 「何だじゃないでしょ。まったく。…真聡も無事なの?」

 「あぁ。」

 「そう。安心した。で、ちゃんと帰ってこれるの?タムセンとか同じクラスの友達が心配してるよ。」

 「由衣ちゃ〜ん!?大丈夫?帰れそう〜?」

 「麻優ちゃん!ありがと〜!大丈夫〜!でも…どうやって帰ろうか悩んでて…。」

 「タクシー呼ぶしかないんじゃない?」

 「ここからだとかなり利用金取られるだろ。」

 「でも歩いて帰るの嫌だよ!?」

 「俺も嫌だわ。」

 

 私達は悩む。来たときはバスだったから早かったけど、歩いて帰ると何時間かかるかわからないから嫌だ。今からだと暗くなっても家につかないだろうし。それに山道だから絶対に嫌だ。

 私の家は車があるからお母さんに電話して迎えに来てもらうのは………流石に凄く怒られそうであまりしたくない。

 本当にどうしよう。やっぱりタクシーを呼ぶしかないのかな。

 そのとき、遠くから何か聞こえる。それを聞いたまー君が「悪い。1回切る。また連絡する。」と言って電話を切ってしまう。そんなことしたら、またひーちゃんに怒られる気がする…。

 そして彼は私の手を引っ張り、公衆トイレの裏に隠れる。


 その数分後、警察が駐車場にやってきた。

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