その男、狼駄という………

🗡🐺狼駄(ろうだ)@ともあき

無駄(闇)を貪る狼がいい

 一人夜道をく。今宵は月がでない。誰にも悟られず、闇の中を縫いながらひたすら歩く……。


「………か。成程、良いな……」


 これが『どらやき』という和菓子淑女こうじた僕の書き出し。


 ただ和菓子は続けて、こうも呟いているツイートしている


「―これで実は狼少年……なんて続けて欲しい」


 ―狼……


 そうだなあ……今の歳を半分こ半月にしても良いのなら、まあ……な。


 そんな事がもし赦されるのなら、寧ろ満月を捜し彷徨い「満月つきは出ているか?」などと嘯くのもサテライトするのも一興かも知れない。


 なれど僕は、もう折返し50……少年などとほざこうものなら、月のうさぎセーラームーンにすら指差しで嘲笑お仕置きされよう。


 こんな歳にもなると満月を観る悦びテンションも、決して悪くはないのだが、新月の夜何も無い静けさと、ムクリッとこうべれる罪悪感心中の蟲の方がいい。


 満月の下、自分に眠る狼を存分に解き放つより、闇の最中さなか無駄獲物を求めて徒労とろうに終わるで在りたい。


 何しろ新月暗闇は、二児の父責任感だの、税をセッセと納める社会の犬だのを装わねばならぬ僕クソ真面目を隠してくれる。


 よって和菓子の語り部はおおむね正しい。だから僕は笑ったのである。実に近寄りがたい大人の男の嘲笑である。


 僕という男このクソ真面目に眠る狼は、時折他人周囲を裏切るのが好きらしい。


「まさか貴方がそんなことを………」


 気がつけば自然とそんな事案残念を他人に植え付けようとする。あらがいようのない性分だから仕方がないのだ。


『………どうせなら新月の夜に書けば良かったのに。何だよ月齢16って……』


 ― おしまい ―

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