第26話 工房
俺はライナの工房に赴いていた。
工房は他の錬金術師や技術職などが集まり、例のマインドプロテクターの指輪の製作など忙しそうにしている。
実はここで作られたものは俺の執務室に持ち込まれ、俺が魔法を刻印している。白魔法を使えるのは帝国では俺だけだからだ。
「カインお兄様どうかされましたか?」
俺を見つけたライナがとてとてと近寄る。
「あぁ実はな…とある材料を探しているのだ」
「わかりました。お話を聞きながら倉庫へご案内します」
俺たちは歩いている最中に気づいたほかの職員が跪こうとするが、さすがに仕事中に邪魔するのは心苦しいので手振りで必要ないことを伝える。
「弾力性があり、復元性もあり高い強度…うーん」
「木から採取されることもあるらしい」
「木から?あっ…!もしかしてあれかもしれません」
ライナは倉庫に着くと、がそごそと漁り一つのボールを出してきた。
白いそれは安っぽいスーパーボールみたいだ。
「ゲムの樹液ですが何に使うつもりですか?」
「あぁ、馬車の車輪に使おうかと思ってな」
遠征などで馬車を使った際、結構揺れが酷かった。現代社会の車に深く感謝したほどだ。できればサスペンションなども欲しいが、鍛冶師も技術も蓄積されていない現状では無いよりはマシ程度だろう。
将来的には、鉄道とかあったら便利だけど…そもそも石炭や石油がこの世界にあるのかわからない。
「なるほど。この材質ならば衝撃を吸収するのにいいですね。ただ、どの程度の厚さや形状は少し研究してみないと!」
ライナは天才錬金術師だが、錬金術だけというわけではなく知識欲がすごく、いろんなことを学んでいる。鍛冶だけは体が小いとかの理由でダメだったらしいが。
ゲーム内でも適当な材料渡したらなんかすごいポーション作ったりしていた。
ライナならもしかしたらできるかもしれない…俺はそんな期待を抱きながらライナに蒸気機関の説明をした。ライナは目を輝かせ聞いていた。
俺?多少の概要というかこんなもんだよーと説明はできるが詳しいことはまったくもってわからん!アイデアだけだして実働は全部丸投げである。まぁ俺の一番の被害者はゼノと言える。
「おもしろそうです!ぜひそっちも研究してみたいのですが…」
ちらっと上目遣いでこっちを確認してくる。
うっ!ずるいぞ美少女のそんなあざとい表情をされたら…
まぁでも構わないか。帝国の財政を管理しているのはゼノだから。またなんか言われるかもしれないがその時はその時だ。
「ゼノに話しておこう。だが石炭や石油はあるかどうかわからないだろう?」
「はい。でもそこに関してはあまり心配ないです。魔術と魔石を使えば解決できそうですから」
あぁ確かに。この世界には魔術と魔石があるんだった。
「それにしてもお兄様…素晴らしい知識ですね!ほかに何かないのですか!?」
ライナの知識欲を刺激してしまった俺は思い出せる実現できるかもしれないアイデアをゼノの時のように喋る。唯一違うのはライナが喜んでおり俺がやつれた顔をしていたことぐらいだ。
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