第24話 政策
朝、目を覚ますと隣でノエルが寝ていた。
俺はノエルを起こさないよう、そっとベッドから降り部屋を出る。
近くにいたメイドのヴァリエールに声をかけコーヒーを用意してもらい、バルコニーから外を眺める。まだ日が昇ってない事もあり、寒さが肌を刺す。
「おはようございますカイン様」
「あぁおはよう」
ノエルも起きてきており、俺の向いの席に座る。
ヴァリエールは何も言わずコーヒーを淹れ、二人で嗜む。このゆったりとした時間が心地いい。
ちなみに公の場では陛下と呼ぶが、プライベートの時はカイン様と呼ぶようにさせている。カインでも良かったのだが、それはさすがにと断れた。
「そういえば、カイン様。ゼノが喜んでいましたよ。ようやく陛下が結婚されて安泰だと、これで大人しくなってくださると」
「ゼノめ。俺のことなんだと思っているんだ。更なる仕事を押し付けてやる」
そういうと、面白そうにノエルがくすくすと笑った。
実際、俺が大人しくせずに戦場に出るのはレベル上げだ。俺の戦闘力が白魔法による支援しかできないくそざこのせいで経験値があんまり入らないのだ。結局あのゴブリン戦争の時もLvは2ぐらいしか上がらなかった。まぁ途中で気絶したのもあるが。
「俺が結婚したんだ。宰相のゼノがいつまでも独身というわけにもいかんだろうし、いい相手を押し付けて…いや、見繕ってやらねば。ノエルの方で紹介できる人はいないか?」
「貴族令嬢ですと我の強い方が多いですから…ゼノを支える良妻となられる方は…今のところ思い当たる節はありませんね。私の方でも探してみます」
「あぁ頼むよ。そう考えるとノエルを妻にできた俺は幸せ者だな…」
そういうとノエルは分かりやすく頬を染め、照れていた。
その隣で、惚気話を聞いていたヴァリエールは虚無の顔をしていた。
朝食後ノエルは仕事へと向かった。
ノエルはノエルの仕事をやるのだから俺も俺の仕事をやらねばなるまい。
「陛下。結婚おめでとうございます」
「おめでとうございます陛下。この老い先短い老骨といたしましては早く後継ぎが見とうございます」
「ありがとう二人とも」
ゼノとセイルが改めて祝辞を送ってくれる。おいセイルにいたっては急かすな。
「あとはゼノだけだな」
「さて、仕事の話ですが…」
露骨に逸らされたな。まぁいい。いい結婚相手見つけて押し付け…紹介してやるさ。
「魔物被害を受けた都市バイエランの復興は第3軍団支援のもと順調に進んでいます。シルビア公国が併合されたことによる関税の撤廃に伴い、海産物が帝国にちらほらと流入しており民も喜んでおります」
資料に目を通すと帝国への海産物輸入量は増えていた。実際内陸国の帝国では、海産物は乏しかったが干物など庶民の手に届く品も出回るようになっていた。
「より多く臣民に海産物がいきわたるよう、輸送を効率化するため街道を整備してはどうか?」
「なるほど…シルビア公国、いえシルビア地方の難民で街道整備による公共事業を行うつもりなのですね。正しく良き案かと」
「あぁ」
嘘です。俺は帝都で新鮮な海産物が食べれたらなと思ってただけです。なんて言葉はおくびにも出さない。
まぁそれはさておき
「それと例の見舞金についてだが…」
「あぁ。戦死者や負傷者への給金の件ですね。帝国としては少し痛い出費ですが、帝国に尽くしたもの達への報償は当然のことです。民心も慰撫されることでしょう」
都市バイエランの襲撃や、今回ゴブリン戦争による遠征などでの兵士の死者負傷者に金を給付することにした。彼らに報いるため、本人や死んだ者なら家族に平民なら2~3年は暮らしていける金を給付することにした。
「それと孤児院のようなものを帝国各地につくっていきたいと思うのだ。魔物に襲われたり、様々な理由で孤児となった彼らを帝国の名のもと保護したい」
「孤児院ですか…」
ここはもうゲームの世界ではないのだ。ゲームの中でできなかったこともある程度、実行できる範囲の中で俺はやりたいことをやるつもりだ。
「臣民は宝であり、子供は未来という宝だ。彼らにも教育を施し、才ある者には然るべき支援をすべきだ。シリスのようにな」
シリスも孤児の一人ではあったが、その才によって帝国七星になった。
「なるほど。孤児を保護することは治安維持の観点からもよろしいかと。ただ、陛下がそこまで子供のことを想うとは…私も早くお世継ぎがみたいものです」
おい。セイルと同じことを言うな。もっと仕事振ってやる。
その後、俺は前世思いつく限りいろんな提案をしてゼノはやつれた顔をしていた。
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