第14話 公国
馬車で思い出話をすること約3日。
丘を越え、海と公国の首都が目に映るが、まだ付近に魔物の姿はない。
カミーラ公女と護衛のものをつけて先に向かわせる。
一応話は通してあるが、いきなり6万近い軍が現れたら驚くはずだしな。
すぐに城門は開かれて、続々と入る。
門をくぐると一人の禿げたおっさんが跪いていた。
「アルカニス皇帝陛下。シルビア公国公王ジェイソン・シルビアと申します。此度の援軍、誠にありがとうございます」
「感謝するのはまだ早い。魔物どもを退けるのが先決だ。ジェイソン公王、早速で悪いが軍議を行ってもよろしいか?」
「えぇ。こちらとしてもお願いしたい所存。ご案内いたします」
ジェイソンに案内され、城へと入城する。
やはり帝都の城と比べると、小さく思える。
城の会議に使われる一室に案内される。
参加者は帝国側からは俺とレイナース、バルト元帥、ノエル。公国側はジェイソン公王、カミーラ公女とシルビア王国指揮官が参加する。
シリス?彼女は難しい話には向いておらず、観光しているはずだ。正直ちょっと羨ましい。
基本的に会議の内容は、バルト元帥とノエルとジェイソン公王で話し合う。
「軍権はこちらが握ってもよろしいですね?」
「えぇ。我々は2万しかおりません。そのほうがよろしいでしょう」
軍権に際しても、ジェイソン公王はあっさりと明け渡した。
まぁ軍の約8割がこっちだし、今回の件のあと公国が帝国に吸収されるのは決まっているから当然と言えば当然と言える。
「魔物の群れはいまどの辺りに?」
バルト元帥がそう聞くとジェイソンが目配せし、シルビア軍の指揮官が資料を配布する。
「ここから約2日ほどの距離におります。奴らは数も多く、イナゴのように周辺を食い荒らしながらこちらへ向かっております」
「2日か…」
あまり準備期間はなさそうだが、間に合っただけでも良かったとすべきだろう。
資料を読み解くが、やはり15万か…多いな。なにより魔物の中に厄介な奴がいる。
「ゴブリンキングですか…厄介ですな。これは」
バルト元帥は渋い顔をする。
ゴブリンキング。こいつ自体もまぁまぁ強いが、なによりゴブリンを指揮する能力がある。もちろんゴブリンは低能なので、命令はおおざっぱなものしか無理だが、それでもこれほどの大群となると厄介極まりない。今回の魔物の群れがほぼ全部ゴブリンで構成されているのは、同種以外を食料にしたみたいだ。
「公国の民の避難状況はどうなっていますか?」
ノエルが聞く。
実際、魔物群れに都市を2個落とされ、多くの避難民がここに集まっていた。
「現在船にのせて近隣の港町などに避難しているが、当日までにどれだけ逃がせるか…」
ジェイソンも困ったような顔を浮かべる。
戦争をしている際、籠城するにしても被害を減らすにしても民を一人でも多く避難させてほうがいい。
だが、何か引っかかる。考え込んでいるうちに一つの閃きがあった。
「彼らを避難させるのはやめたほうがいいかもしれん」
「陛下それは一体…」
カリウスがなぜなのかと疑問を投げかけてくる。
「人同士の戦争なら今の対応で間違いはないと思うが、やつらは飢えた魔物だ。奴らの目的は都市を落とすことではなく食料の確保だ。下手に他の町に避難させるとここを素通りされ他の町が襲われかねん」
「なるほど…確かに。そうなると長い籠城戦はできませんな」
それもそうだろう。民の大部分を抱えて戦うのだ、海に面しているので多少の食糧は得られても、籠城するのは厳しい。だが、正直そこに関してはあんまり心配していない。
「長期戦にはならんさ。やつらはその膨大な数故に、食料の確保が難しい。こっちが餌を垂れ下げれば全力でここを狙ってくるだろう。短期決戦で決着をつける」
これしかあるまい。
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