照れ屋な無口さんの愛情表現

宙色紅葉(そらいろもみじ) 週2投稿

照れ屋な無口さんの愛情表現

 今日は久しぶりに女子会があった。

 ちゃんと女子会だぞ。

 何せ私は二十歳そこそこの小娘だからな。

 まだ同年代の女性との集まりを婦人会とも、お茶会とも称さなくていいはずだ。

 ともかく、女子会では高校の頃の同級生たちとおしゃべりを楽しんだのだが、集まった五人中三人が彼氏持ちともなると、当然のように話題に恋人との恋愛話が上がる。

 各々、自由に愚痴ったり惚気たりしていた。

 私は元々、話す事が得意ではないので、自分では積極的に語らず誰かの話に頷いたり首を振ったりして相槌を打っていたのだが、一つだけ、心に深く突き刺さるエピソードがあった。

 友人が目つきを鋭くしながら語った、元彼に対する愚痴である。

「前彼がさ、付き合ってから、ぜーんぜん好きって言ってくれなくなったんだよね。それどころか可愛いよ、とか、服が似合ってるねみたいな褒め系の言葉も全然なくなったの。うわっ! 釣った魚に餌くれなくなるタイプだ、腹立つ! と思って、即別れたよね。マジで、別れ話きり出してから好きだったとか言ってくるの何なの? 思ってんだったら言えよ! 伝わるわけねーだろ! こっちはお前のママでもエスパーでもねーんだよ! って、ブチギレそうになったわ」

 五人中、私を除く四人が深く頷いていた。

 私も彼女の言葉に共感ができなかったわけではない。

 ただ、心当たりがありすぎて言葉を失っていたのだ。

 好きと言葉に出さぬのは私の愛しい彼ではない。

 私の方だ。

 言葉に出して好きだと言えぬ理由はいくつかある。

 いくつかあるが、だからといって言わなくていいわけではない。

 彼女の言葉はもっともであり、言えなかろうが何だろうが、言わなきゃ愛情を疑われて捨てられるのだ。

 嫌だ!

 捨てられたくない!

 私は気が狂いそうなほど彼を愛してるんだ!

 別れを告げられたら三日以上ご飯が食べられなくなるし、一週間は泣き腫らす。

 いや、一年経っても泣いていると思う。

 想像するだけで瞳が潤みそうだ。

 テーブルに突っ伏して項垂れていると、例の愚痴を言っていた友人が「どうしたの?」と私を心配してくれた。

 優しい。

「私、言ってない」

「え? 何を? もしかして、彼氏に好きって言ってないって話?」

 机に額を付けたままコクリと頷くとブーイングの嵐が沸き起こった。

 受け止めざるを得ない。

 悔しいが、私は釣った魚に餌を与えないと評される男同様のカスだ。

「カスです」

 自己紹介をすると、友人らは苦笑いになった。

「てかさ、元彼の時も思ったんだけど、何で好きって言わないの? 私らは彼氏に言うし、アンタの彼って高校の時に付き合ってた子と変わってないよね。あの子は結構、愛情示し型じゃなかったっけ? 教室にいても普通に好きって言えるタイプの」

 当時、周りの癒されたいハイエナ達が、可愛くて格好良くて優しくて素直で愛しい彼のことを狙っていた。

 周囲の女子に殺意を覚えたのは一度や二度ではない。

 あの頃は牽制するために彼に後ろから抱き着き、うなじにキスをし、見えるところにキスマークをつけて怒られたり、人前で腕を甘噛みして正座させられたりしていた。

 懐かしい。

 怒られるのも含めて楽しかったな。

 私と彼の大切な青春だ。

「照れる」

 友人に問われた、何故「好き」を言わないのか、についての回答である。

「それだけ?」

 細分化すれば、もう少しあるが根本的な理由は羞恥だ。

 何故、皆が「彼氏大好き! 好きピとお出かけ!」みたいな自撮りの投稿をできるのか分からない。

 なんか、もう、全てが恥ずかしい。

 写真の私はデレデレしていてきついし、文面が浮かれてて恥ずかしい。

 画面の中の彼が笑顔で照れてしまう。

 顔が真っ赤になって動けなくなってしまう。

 コクリと頷くと友人らは呆れた表情になった。

「そのくらい我慢しなさいよ」

「こっちだって照れるけど、言われたら嬉しいだろうなって言ってあげてんのよ。元カレもアンタも甘え過ぎ!」

「つーか、言ってないってどのくらい言ってないのよ。まさか、年単位で言ってないんじゃないでしょうね?」

「浮気されるわよ、浮気。じゃなきゃお別れを切り出されるわ。『○○君だーいすき♡』って言ってくれる彼女とラブラブライフに直行されるわよ」

 口々に私を非難する友人らだが、最後に友人が吐いた毒が一番きつい。

 ペロリ、これは青酸カリ!? どころではない。

 霧一粒で致死量レベルだ。

 私は泣いた。

「ちょ、泣くなって! ごめん、言い過ぎたわよ」

 慌てる友人らに首を振った。

「浮気、嫌。別れるのも」

 責められたのが嫌なのではない。

 浮気や別れることを想像して悲しくなったのだ。

 そんなことになったら生きていけない。

 エベレストからバンジージャンプして、そのまま落下し、地面に埋め立てられたい。

 太平洋のど真ん中に置き去りにされて、涙と海水を混ぜ込みながら海底に沈んでいくのも良いかもしれない。

 鮫とかに食べられちゃいたい。

「そりゃあ嫌でしょうよ。アンタ、彼氏のこと大好きだもんね」

「でもさ、あの彼氏君なら言えないこと分かってくれてるんじゃない? 今日まで、この無口なダメダメちゃんの彼氏として生きてきたんでしょ?」

「いや、その考えは良くないって。逆に、そろそろ我慢の限界がくるって可能性もあるし。大体、相手からの言葉や態度で愛情を確かめるわけじゃない? もう、無口ちゃんは俺のことが好きじゃないんだ! ってなってるよ、多分」

「何にせよ、甘えんなって話よね。貰うだけってどうなのよって話よ。 好き好き! って相手に愛情を示す子ほど、目に見える愛を返してもらいたいんじゃないかと思うわよ~。少なくとも私らはそうだし。その点、ダメダメでしょ、無口ちゃんは」

 私への非難については、ぐうの音も出ない。

 本当に怖くなってきた。

 家に帰っても彼がいなくて、代わりに、

「我慢の限界です。別れましょう」

 みたいなことを書いてある置手紙があったらどうしよう。

 気絶するかもしれない。

 私が顔色を悪くして背中に冷たい汗を流している間も友人たちのお喋りは続いていく。

「逆に考えましょ、無口ちゃんは何ならできるのよ?」

 私にできる愛情表現。

 ハグ、キス、噛む? あと、料理と掃除?

 頭を撫でたりするのも好きだ。

 甘えているだけ泣きもするから、愛情表現で合っているのか分からないけど。

 あと、何か恥ずかしくて友人らに言えない。

「まーた黙っちゃって!」

「まあ、まあ、無口ちゃんは無口だけど恥ずかしがり屋でもあるからね、言えないんでしょ」

 憤る友人を他の友人が宥めている。

 先程も指摘されたが、あまり甘えてばかりではいけないだろう。

「物理なら、いける」

 頑張って声に出してみた。

「物理!?」

「物理!?」

「あれじゃない? 無口ちゃんが唐突に教室で彼氏にちょっかい出すときあったじゃん。ハグしたりとかさ。アレのこと言ってんじゃないの?」

 察しの良い友人にホッと安心して、私はコクリと頷いた。

「よく、してる」

 朝起きたら触って、夜もあいさつ代わりに触る。

 家の中ですれ違っても触る。

 何を触るかって?

 彼のお尻です。

 他には、やっぱりハグもするし、大体の触れ合いはするな。

 一日に一度も触らない日はないんじゃないか?

 私はスキンシップが好きだ。

 もう一度深く頷けば、友人はそれぞれ顔を見合わせる。

「じゃあ、結構ラブラブなんじゃない?」

「でも、やっぱり言葉って欲しいものよ。言うに越したことは無いでしょ」

「そうよね~」

 結局、彼女たちは残りの女子会を使って私の愛情の示し方を考えてくれた。

 ちょっとお節介だけど、ありがたかった。

 頑張る。


 やらなくてもいいけど参考までに、と皆が考えてくれた愛情の示し方。

 それを頭に叩き込み、私は少し寄り道をしてから帰路についた。

「おかえり、女子会は楽しかった?」

 少し緊張しながら玄関を開けてリビングに入れば、ソファに座ってテレビを見ていた彼がこちらを振り返り、ふわりと笑う。

 癒しの愛らしい笑顔だ。

 知らず知らずのうちに表情が緩み、私はコクリと頷いた。

 照れる足取りで彼の方へと近づく。

 そして、背の後ろに隠していたガーベラの花束を差し出した。

 赤いガーベラは全部で四本。

 赤いガーベラそのものに神秘の愛という意味があるらしい。

 また、四本贈ると「貴方を一生、愛します」的な意味になるんだとか。

 インターネットと花屋のお姉さんが教えてくれた。

 一本、三本、四本、六本、八本。

 それぞれに意味があるらしい。

 どれも素敵な意味で甲乙つけがたかった。

 特に一本と四本と六本で迷ったけれど、改めて告白するみたいだと思ったから今回は四本で。

「もしかして、俺にプレゼント?」

 頷けば、彼が嬉しそうに受け取ってくれる。

 四本しかないガーベラの花束は漫画で描かれるような花束よりもずっと小さい。

 でも、何となく大輪やバラが百本刺さった大きな花束よりも、小さな花束をそっと抱えて嬉しそうに笑っている彼の方が素敵に見える。

『でも、大きな花束にビックリする彼も素敵かもしれない』

 そんな彼も見たいから、今度はもっと大きなものを買ってこようか。

 あなただけを見ている。

 そんな花言葉を持つひまわりも素敵だ。

 いっそのこと、夏になったら育てようか。

『花束は女性の方が喜ぶイメージだったけれど、彼も喜んでくれるんだな。ちょっと意外だ』

 チラリと彼の表情を盗み見た。

 ありがとうね、くらいで終わりだと思っていたのに、彼はチョンチョンとガーベラをつついて優しい瞳で見つめている。

『そっか、彼は花だけじゃなくて私の心を受け取ってくれたのか。稀な人だな。物事をそういう風に受け取れる所が好きなんだ。だから私を好いて、あまり話せない私の愛情を受け取ってくれるんだろうか……いや、そう考えてしまうこと自体、甘えか。まだ、花言葉の意味を伝えていない』

 ポカポカと温まる心臓に手を添えると、彼の袖をグイっと引いた。

「赤いガーベラは神秘的な愛。四本は……永遠の愛を誓うって意味、らしい……」

 直接好きと言っているわけではないので、何とか言葉にできるのだが、やっぱりどうにも恥ずかしい。

 声が震えて小さくなっていく。

 顔から火が出そうだ。

 なんか、無駄に目の中が熱くて涙まで出てきそうになる。

 私、無口な代わりに感情が顔に出るんだよな。

 気を許している相手には特に。

「そっか、ありがとう」

 どんな花よりも綺麗な彼の笑顔は見られないけれど、柔らかい声が耳に届いて鼓膜を揺さぶった。

 心臓に溜まった熱が血管を突き破りそうな勢いで激しく流れ出す。

 いてもたってもいられなくなって、今すぐうずくまるか、あるいは転がってしまいたい。

 真っ赤になって俯く私を見た彼が花束を静かにテーブルの上に置いた。

 彼は特に何をするでもなく突っ立っている。

 この感じは多分、ハグ待ちだ。

 私は恥ずかしくなると彼に抱き着いて、ちょっと齧ったりキスをしたりするから。

 彼は私のことをよく理解してくれている。

『ありがたいな、本当に』

 本当は今すぐにでも抱き着いて照れ隠しに甘えたい。

『でも、今日は、やることがもう一つある』

 友人たちが用意してくれた苦肉の策。

 スマートフォンのメモに書かれた「好きです」の言葉を見せることだ。

 それだって恥ずかしい。

 書いている時だって恥ずかしくて堪らなかった。

 ただ、少し胸に引っ掛かることがある。

 友人たちが一生懸命に考えてくれたことだけれど、本当にメモを使っていいんだろうか。

『たまには、頑張ろう』

 優しい彼はメモでも喜んでくれると思うけど、でも、やっぱり声に出した言葉の方が好きなんじゃないかと思う。

 何せ、今でもたまに「好きです」って声に出して告白したことを嬉しそうに惚気てくれるんだから。

 まあ、惚気られた私は恥ずかしくて逃げるんだけれど。

 嬉しそうな彼は好きだけど、惚気られるのは少し苦手だ。

「ねえ、す……す……すー!」

 好きの略称「すー」で許してくれ!

 やっぱ人間、長いこと喋らないと本当に話ができなくなるな!

 実際に言えないとは思っていなかったから自分に自分でビックリした!

 前は! 前は小声だけどちゃんと言えたのに!

 目を丸くする彼に「すー!」と言い張る。

 友人に言えない!

 どうなったのか教えてねって言われたけど、絶対に言えない!!

 いい年こいて何をやっているんだ私は!

 恥ずかしい。

 どこに出しても恥ずかしい、痛い彼女になってしまった。

『もう嫌だ……』

 真っ赤な瞳に涙を溢れさせていると、彼がチョンと口づけをしてくれた。

「好きって言ってくれるの、一年と三か月ぶりだね。嬉しいな。もっと言ってくれてもいいんだよ」

 ねえ、ねえ、と彼がキスをくれる。

 優しく涙を拭ってくれるが、倍の勢いで溢れてしまうから意味がない。

 というか多分、泣き止ませてくれる気がない。

「すー! すー! すー!」

 掠れた小さな声がヤケクソのように、すー! と叫ぶのを、彼が耳を澄まして聞いている。

 駄目だ。

 彼の「えへへ」という笑い方が可愛い。

 反則級にかわいすぎる。

 そして私は、本当は黙りたいんだけど黙ったら精神的な死を迎えるから黙れない。

 とりあえず、彼のほっぺをモチモチモチッとして身に溜まる熱を逃がしたい。

 やらないけど。

「ねえ、ねえ、もう少し言ってくれてもいいよ。もっとはっきり言ってくれてもいいんだよ」

 ツンツンと頬をつついて揶揄ってくる彼が愛らしい。

 すっかり忘れていたが、そういえば彼は割と欲しがりさんだったな。

 キスマークを付けたり、噛んだりしまくって教室で正座させられた時も、後からひっそり呼び出されて、

「見えないとこだったらつけてもいいよ」

 と、鎖骨や二の腕を出してもらえたっけ。

 堪らなくなって夢中で跡をつけたな。

 うっかり範囲を広くしてしまって、彼は夏なのにしばらく長袖を着る羽目になったけど。

 自分のせいとはいえ、暑そうな彼が心配になって熱中症に気を配ったなぁ。

 懐かしい。

「すー! す……す……好き!!」

 勢いで言えた!

 しかも、かなり大きい声で!

 達成感と喪失感が凄い。

 私は途端に黙って、真っ赤な顔のまま立ち尽くした。

「ありがとう、俺も好き!」

 ガバッと彼が抱き着いて頭を撫でてくれる。

 ありがとう。

 少し落ち着いたよ。

 ところで、私の頬に彼が頬をピトッと当てているからか、無性に噛みたくなる肩との距離が近い。

 布越しでも愛しいオーラを発している肩が堪らない。

 カプッと甘噛みをした。

「いつものだ! 相変わらず甘えん坊だな~。あれ? 範囲が広くない? 駄目だよ? 見えない部分だけだからね? ダメダメダメ! 最近は半袖着るんだから、鎖骨は見えちゃうって!!」

 服越しに肩を噛んで、ちゅっちゅと横にキスをしながら首筋へと進むと、今度は下から上にキス重ねていく。

 布越しの方が噛みやすいけど、細心の注意を払うことになっても直接お肌に悪戯をする方が好きだ。

 その方が甘い。

 油断したら肌をきつく吸って、労わるように触れるだけのキスを繰り返す。

 意趣返しと照れ隠しのつもりが、肌に触れたら夢中になってしまった。

 もう何回も首に悪戯をしているんだ。

 首が弱いのも、音を立ててキスをするとビクッと震えて力が抜けるのも、よくわかっている。

 ヘタレた涙目に困った声が可愛くて首と肩の境を甘噛みする。

 何度も肩を吸う。

 彼が勘弁して! と、ペタンと座り込めば上から貪るように襲った。

 あまくて、おいしくて、かわいくて、とまれない。

 大体、私は疲れたら彼を摂取したくなる性格をしているんだ。

 あんなに恥ずかしい目に遭わせたんだから、肩も鎖骨も赤くなって当然でしょう?

「ねえ、せめてこっちにしてよ!」

 彼がダルダルになった部屋着を引っ張って胸に近い方の鎖骨周辺を晒す。

 前につけた跡が残る白い肌が魅力的で、潤んだ瞳に自ら肌を晒す姿がスケベすぎる。

 ご褒美を手渡されて突っぱねるバカはいない。

 彼の後頭部に手を添えて、寝転がってねと微笑みながらゆっくり彼を押し倒した。

『やっぱりかわいい欲しがりさんだ』

 抵抗を止めて服を捲る姿に瞳が歪んで吐く吐息が甘く、熱くなる。

 好きなように触らせてくれるところ、好きなんだよね。

 チョンとつつくと勝手に倒れて、貪らせてくれるところも大好きだ。

 それで愛情を感じてくれるところも、疲れた私の頭を撫でてくれるところも。

 優しいところも、反対に好きだよと声をかけてくれるところも。

 甘えん坊だけど、たくさん甘やかしてくれるところも。

 柔らかい瞳も、唇も、大人しいわりに負けん気が強い性格も、匂いも、何もかも、全部。

 魂の色と形が可視化されていたら、それだって大好きになると思う。

 好きになりすぎて、絶対に手放せなくなると思う。

 こんなにかわいい人は他にいない。

 こんなに慈しめる人も、愛せる人も、優しい人も、他にいない。

 一分、一秒たつごとに好きだと思っている。

 日常的に惚れ直す。

 私の大切な宝物。

『愛してる』

 声は出ないけど唇が動いたみたいだ。

 好きには喜んでいた彼が照れて顔面を覆った。

 照れるポイントと照れ方が可愛い。

 もう一度、唇が動く。

 彼は見ていないけれど、私にとっては意味のある動きだ。

『これからも、できるだけ好きは言う。やっぱり、伝えるのは大事だ。凄く好きだって分かってもらうためにも、欠かせない事だと思うから。彼は私のものだって、伝えたい。私も彼のものだってことも。でも、彼に甘えさせてもらいながら激しめの愛情を返すのが、私の性には合っているのかな。こういう時だけ、恥ずかしさよりも欲が勝って動けてしまうし』

 そう、恥ずかしいは恥ずかしいんだ。

 照れ屋な私は彼に触れるだけで心臓が高鳴って、体の内側から爆発してしまうから。

 でも、照れてる彼を見ていると、おいしそうだと思ってしまうと、待てが利かなくなる。

 私は彼を溺愛している。

 一生、ずっと、溺愛している。

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