【異世界✕ロボット】異世界ポンコツロボ無双 ~ポンコツロボットに転生したけど、鉄壁スキルといろんなパーツをくっつけて無双できました!~

サムライダイス

第1話

 体が動かん!


 どういうわけか体が全く動かなくなっている。


 昨日オレは何をした? たしかに風呂に入ってスマホいじって……その後の記憶がない。


 ―――そうなるといつものように寝落ちしたってことだよな。


 それがどうしてこんな状態で身体が全く動かないんだ。


 とにかく落ち着けオレ、まずはできることをさがそう。


 なにかできることがきっとあるはずだ。




 そういうとオレは唯一の情報源である視界に集中する。


 改めて視界を注視すると、不思議なことに気づく。


 オレの視界は全体的に薄汚れたようにボヤけ、視界の歪みはまるで凸レンズのように感じる。


 眼鏡をかける習慣がないオレは、眼鏡をかけるとこういう視界が映るのか?と思った。


 ってか、なんかおかしくねーか。


 いくら眼鏡をかけてもこんな視界には映らんだろう。


 しかも視界が全く動かん。


 眼球すらも動かず、気づいてみたら瞬きもできない。


 瞬きができなかったら、目が痛くて涙が出てくるだろう。



 

 ―――そんなとき視界の外側に妙な黒い何かを発見した。


 オレはその黒い何かを見つめた。


 するとその黒い何かは視界の前方に移動し、グオンッと広がった。


 そこにあったのは長方形の黒い画面に緑色の文字が表示されていた。


HP :1

EP :1 

攻撃力:1

防御力:1

機動力:1

スキル:鉄壁


 ―――う〜ん、ゲームのステータス??


 ホントなんだよこれ⁉️ マジでゲームじゃんこんなの‼️


 数値も全て1だし、今のオレはダメダメ人間ってこと?


 しかもHPが1って、HPってオレの体力のことだよね。


 これが0になったらオレは死んじゃうよね。


 HP:1ってつまづいて怪我したら死ぬってレベルじゃん!


 しかも機動力ってなに? 移動するスピードの値だよね。


 普通のRPGならそこは『すばやさ』とかだよね。


 というかステータスの項目、少なくないか。


 これがゲームなら『魔力』や『かしこさ』とかあって魔法が使えるんじゃないの?


 もしかしてオレには魔法が使えないからそういう項目がないの⁉️


 そういえばEPも1だったな。


 MPはマジックポイントだから魔力の量ってわかるけど、EPってなんだ?


 MPみたいなモノかな……わからん。


 どうせ1だし気にしても仕方ないか……。


 それより一番重要なのはこの『鉄壁』ってスキルだな。


 鉄壁というぐらいだからオレの防御は硬いってことか?


 ―――でもちょっと待て、オレの防御力は1だぞ。


 どう考えても紙装甲じゃん。


 たぶんこの鉄壁のスキルもたいしたことがないかも……。


 もし、なにかあっても無茶なことはできないな、たぶんすぐ死ぬ。




 ―――そのとき、オレの視界に何かが映った。


 それは人影のように見える。


 オレはとっさに「助けて」と声を上げた。


 しかし声は全く出ない。


 そうしているうちに三人の人物に抱え上げられた。


 オレは仰向けの状態に担がれ、視界には木の枝葉と空しか見えない。


 そのままオレはどこかへ連れてかれる。


 おい、お前らオレを大切に運べよ‼️


 じゃないとHPが1のオレはすぐに死んじゃうからな。




* * * * * * * 




 そしてオレはどこかの集落に降ろされた。


 そこでいままで担いでいた人物の顔をやっと拝めた。


 そこにいたのはピンクの髪をした可愛らしい女の子だった。


 しかしその頭部には獣の耳が生えている。


 獣人ってやつ??


 ゲームっぽいというか異世界だったのかここは。


 アニメやゲームで異世界モノの事は知っているから、オレはこの状態をまあまあすんなりと受け止めていた。


 ってことは、転生して前世のオレって死んだの⁉️


 何が原因で死んだんだ? 最後にスマホをいじってそれで死んだのか?


 いや、もしかしてスマホに変なアプリをダウンロードして転生したのかも?


 オレがあれこれ転生の原因を考えていると、視界にオレの目の周りをバンバン叩く小さなケモ耳娘が現れた。

 

 こらーっ‼️ 小娘、オレの頭をバンバン叩くな‼️ そんなに叩いたら死んじまうだろう!


 オレは声にならない声で叫んだが、ケモ耳娘にはとどくはずがなかった。


 するとさっきのピンクのケモ耳娘が、慌てて小さなケモ耳娘をオレのそばから離してくれた。


 ピンクのケモ耳娘はオレに対し何度も頭を下げ謝罪をしているようだった。


 って、ちょっと待て……。 さっき小さなケモ耳娘がオレも顔を叩いたのに……音が全く聞こえていない。


 視線の先にいるケモ耳達も会話をしている様子だが、オレには会話の内容が聞こえない。


 全くの無音。


 はぁー。 最初の頃から薄々気付いていたが、オレの聴覚は無反応ってことだな。


 そうなるとやはり唯一の情報源はこの視界だけか……。


 目を注視すると十人ほどのケモ耳達が横一列になり、珍妙な踊りを踊りだした。


 両耳を指で摘み左右に揺れ、顔の横に広げた手のひらをくっつけピョンピョンと垂直にジャンプする。


 太鼓を叩くケモ耳や横笛を吹くケモ耳の姿もある。


 音は聞こえないが、愉快な祭りをしているのはわかる。


 オレはケモ耳達の前にいるし、ケモ耳達がオレの為に宴を開いているような……もしかしてオレはまつわれているのか⁉️


 そして踊りの最中にジャンプし、オレの前に突如現れる人影があった。


 ちょ、ビックリするだろう。コノヤロー!


 そこに立っていたのは満面の笑みをしたピンクの髪のケモ耳娘だった。


 ピンクの髪のケモ耳娘の両手には三角形の形状をした金属の塊が見える。


 その直径15センチはある金属の塊を持ち、軽快なステップを踏みニコニコしながら踊っている。


 一連の踊りが終わると再度オレの前に立ち、両手に持った金属の塊をオレの頭部へと振り下ろす。


 オレの視界が小刻みに上下して揺れた。


 次の瞬間、眼前に黒い画面が表示された。


 HPと防御力の項目が他の文字と比べて緑さが増して表示されている。


 HP :1→2

 防御力:1→2


 おぉ〜! なんだかわからんがステータスが上昇したぞ⁉️


 さっきのケモ耳娘が持っていた金属の塊が関係しているのか?


 まぁ〜細かい事はどうでも良い、わずかでもステータスが上昇している。


 ちなみにオレはそこそこなゲーマーだ。


 だからかこういう微妙にしか上昇しないステータスの数値でもワクワクする。


 っとその時、何かの音が聞こえだした。


「……ケモ…神、な……よね……」


 ―――言葉だ。 ケモ耳達の声が聞こえる。


 でも、聴覚の精度が悪く会話の断片しか聞き取れない。


 すると眼鏡を掛けた老人のケモ耳がドライバーとペンチを持ってオレに近づいてきた。


 な、なにコイツ、もしかしてそれでオレに危害を加える気?


 オレがちょっと恐怖を覚えていると、老人はオレに密着するように立つ。


 老人の両手はオレの頭部にある金属の塊をいじっている。


 老人が揺れるたび老人のしおれた乳首がオレの視界から見えたり消えたりしてオレは気分が悪くなった。


 眼鏡を掛けた老人は一連の作業が終わると立ち去った。


 すると今度は、やたらと毛むくじゃらで杖をついたケモ耳の老人と、さっきのピンク髪のケモ耳娘が近づいてきた。


「これでケモ神様は耳が聞こえるようになったの?長老様?」


「そうじゃなぁ。石版に書かれている通りならこれで聞こえておるはずじゃぞ」


「ケ・モ・ガ・ミ・さ・ま、聞こえますかーーーッ」


 き、聞こえる。 音が聞こえ声が聞こえる。


 はぁー。人の声が聞こえるだけでこんなに安心するもんなんだな。


 どちらかというとコミ障のオレだが、人に声を掛けられてこんなに嬉しくなったのは初めてだ。


 「聞こえてますよ!」と言いたいが声が出る気配が全くない。


 というかあの三角の金属の塊を付けられて聴覚が復活したということは、あの金属の塊は耳ってこと?


 しかも老人はドライバーを持っていた。 つまりネジらしきモノでオレの頭部と金属の塊を固定したということだよな……。


 オレは一体何なんだ? 機械の塊? いや、見づらいけど目で見ることはできる。


 耳らしきモノも頭部に付けてもらった。


 ……まさかオレはロボットなのか⁉️


 「ねーこのコ、ホントにケモ神様なの?」


 「何を罰当たりな事を言うんじゃホルン!」


 「だって長老。 このコ喋ったり動いたり何もしないよ」


 「そりゃ当然じゃ。 今このお方は生まれたばかりの赤子のようなもの。 我らケモ耳族の力で、このお方の完全復活を成し遂げるのじゃ」


 そういうと長老と呼ばれている老人が高さ50センチくらいの石版を必死になって持ってきた。


 その石版の上半分には、細かい日本語や英語とは異なる見たことのない文字で書かれている。


 下半分には図形が描かれていた。


 その図形には円が描かれ、その下には縦の長方形が描かれていた。


 長方形の両側面と底面には小さく四角い突起物のような図形が描かれていた。


 円の図形の上には二つの三角形の図形が付いている。




 んん? この三角形の図形ってさっきオレの頭にくっつけた金属の塊だよな⁉️


 ってことはこの円が頭で長方形の部分がオレの体ってことか?


 ―――はぁ? オレってこんなズングリムックリな身体になってるの?


 これは最悪だ。 自分がロボットになってガ◯ダムみたいなカッコいい姿らなぁ〜と、わずかな期待をしていたが、まさかこんなレトロチックでカッコ悪いロボットになっているとは……。

 

 ちょっと待てよ。 さっきケモ耳の長老はオレは「赤子のようなもの」と言って「完全復活」とも言っていたよな。

 

 つまりこういうことか。 オレはまだ未完成で三角の耳を装着したように、手足や口とかも装着してオレは人間のようになれるかもしれない。


 もしかしたらオレはロボットだし、データだけを抜き取って超イケメンのアンドロイドに意識を転送させ超絶イケメンとしてこの異世界ライフを満喫できるかもしれないぞ!


 ……考えが飛躍しすぎた。 さすがに超絶イケメンにはなれんだろう。


 もっと現実をみないとな。 まずは手足と口が欲しいな。


 口があればこのケモ耳達とも会話ができてコミュニケーションがとれる。


 現状は一方的にケモ耳達の情報を受け取るだけだからな。


 だから次は口だ。口を付けてくれ!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る