第2話 魔王会議
とりあえず四隅の地区、ヴァストーク、ザーパト、ユーク、セーヴェルを担当する小魔王が全員無事に辿り着いたことを確認すると、私はディラノに命じて召集状を送り、彼らを集めて円卓に座らせた。
「それではこれより、小魔王4人と私、大魔王メガルファで勇者対策会議を開始する」
「えぇっと……本当に小官たちだけでいいのですか?」
「そうですよ……わたしたちのような末端だけではなく……中魔王を1人ほど呼んでおいたほうが……」
「それは駄目だ。勇者の姿を目撃して生きているのは、現時点でお前たち4人だけだ。だから、この会議に携わるのは私とお前たち4人だけでいい。何も知らない中魔王やその他側近が入ったところで邪魔になるだけだ」
私はそう言って小魔王たちを威圧する。すると彼らは反論するのをやめた。
「……では、一人一人確認した『勇者』について述べるように。まずはお前からだ、アリファン」
「しょ、小官からでありますか!?」
アリファンは自分の顔を指差しながらそういった。
「ああ、お前からだと言っている。早く言え」
「わかりました。……小官の地区で目撃された勇者は『戦隊』であります。5色の服に身を包んだ圧倒的な力を持つ5人組の勇者によって戦闘幹部が蹴散らされました」
「わたしのところで目撃された勇者は『魔法少女』……派手な衣装を見に纏う少女たちが……見たことのない魔法でわたしの側近を攻撃し……塵にしてしまいました」
ザーパト担当の小魔王、エリネアが俯いてそう語る。
「私めのところで確認された勇者は『スーパーヒーロー』でございますっ!奇異な服に身を包んだ超人たちが魔力を感じない力で私めの部下を蹂躙しました……」
ユーク担当の小魔王、ナギツマが冷や汗をかきながら言った。
「僕のところで確認された勇者は『防衛軍』です。重そうな鎧に謎の武器を構えた数百人の軍隊が遠くから僕の側近たちを狙って撃ち殺しました」
セーヴェル担当の小魔王、キントがなんとか聞こえるくらいの小さな声で言った。
「わかった。以上4種、我ら魔族の敵が召喚されてしまったということか。しかし、まさか最初の攻撃で小魔王の戦闘幹部クラスがやられるとはな。お前らも危なかったのに、逃げ切れてよかったな」
「まぁ……所詮彼らなんて『魔王軍幹部』と言えば聞こえはいいですけど……所詮……末端中の末端……ですし」
「小官も同感であります。彼ら小魔王軍戦闘幹部など、少し才能があるだけの兵士。大魔王様の軍の雑兵にも劣るでしょう」
「……しかしな。正直被害が十数人だけでよかったとも思っている。お前らがなんと言おうが、彼らも戦闘経験のない一般人よりは十二分に強い。それに、何百人もの
「それもそうですね、大魔王様。では、次は何をすればよろしいでしょうか?」
「次か……次はそうだな。まだ壁は壊されていないようだし、私が対策を練っている間にそれぞれの区民の不安を和らげるために手を打つと言うのはどうだ?」
「なるほど。特に僕のところの勇者なんて数百人もいますし、よほど区民は怯えていることでしょう。そうさせていただきますね」
「……大魔王様が直接勇者と戦うと言うのは?」
「それはなるべく避けたい。勇者の実力というのは想定以上だ、まだあの幹部たちしか殺されていないとはいえ、私を倒すことができる可能性も0ではない。それに、あの配置だとどれか1つを相手にする間、残り3つの侵攻を許すことになる。更に言えば、私が魔王城を離れればここに避難してきた民が不安に思うだろう」
「「「「なるほど」」」」
「もしものことがあった場合、この大魔王城と魔界首都は我々魔族の最後の砦であるべきだ。事実この大魔王城には私、大魔王メガルファの魔力を強化する性質が込められている。だからそれは魔王城に勇者が攻めてきた時の最終手段としてとっておくことにする。以上で、この会議を終わりとしよう」
「「「「わかりました」」」」
小魔王たちがそういうと、彼らはバラバラなタイミングで席を立った。
勇者を恐れて逃げてきた自分たちの区の難民もいるので、早めに席を経って下に行くようにと伝えると、なかなか席を立たなかったキントとアリファンも出ていった。
しかし、この騒音量は……。どうやら四隅の区以外の区民もおそれをなして逃げてしまったようだな……。
まあいい。むしろあの壁が破られる前に避難できていてよかったかもしれない。
一応、シェルターはそれぞれの区で用意しておいたのだが……。
————
(ここから三人称視点)
「この壁、どうやったら越えられると思うか?」
「合体して壊せばいいと思うぞ」
「僕もそう思うな〜」
「確かにそれはアリだ。だが、こんな軽率に合体していいのか?」
「わからないけど、このままじゃ出られそうにないわ!」
「その通りだピンク!合体するぞ!」
「「「「「霹靂合体、ライメイギガント!」」」」」
5人の戦隊ヒーローがそういうと、壁と同じくらいの大きさがある巨大な機械が現れ、体当たりで東側の壁を破壊した。
————
「この高さの壁……どうすればいいと思う?」
「うーん……あ、そうだ!みんなの力を合わせれば壁も砕けるんじゃないか?」
「なるほど!それなら飛び越えられるかもしれないね」
「……やってみる」
4人の魔法少女たちが、ステッキの力を合わせて一点に焦点を定めると、定めた箇所に爆発が生じた。そして、そのまま壁はボロボロと崩れ落ちていった。
「よし、ここから出よう!」
4人は空を飛び、壁の上を越えて隔離エリアを脱した。
————
「METEORITE STRRRRRRIKE!!!」
スーパーヒーローの一人がそう叫びながら壁を殴る。すると、南側の壁が粉末状に分解されていく。
————
「謎の惑星に不時着した。周囲を壁に囲まれている……どうすればいいんだ?」
「あの上にある人工衛星を使いましょう、隊長。なぜあるのかは知りませんが、我々地球のものです。人工衛星を使用すればこれくらいの壁は壊せるかと」
「そうだな。誰かコントロール用の装置は持っているか?」
「はい、私がそれを持っています!今すぐ押しますね!」
地球防衛軍の一人がボタンを押すと、人工衛星からビームが発射される。それによって壁は蒸発し、消えた。
————
「大変です!大魔王様!」
「なんだ、ディラノ?勇者関係のこと以外なら後にしろ」
「勇者関係のことです!まだ現れて3日も経っていませんが……もう壁が破壊されてしまいました!」
「なん……だと……?」
それを聞いて、私は驚きながら席を立つ。
「大魔王様、どうする気なのですか?」
「一応、確認しに行ってこよう」
ディラノにそれだけ告げると、私は大魔王城で一番高い位置にある、魔界を見下ろすための塔に向かった。
「そんな……まさか……嘘だろ……」
だが、そこから見えたのはそれぞれの方法で破壊された壁だった。
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