アジト
フランス・パリ郊外、装甲列車襲撃に失敗したナチュレの怪人たちは敗走の後、地下アジトへと逃げ延びた。
ラムジンは手にしていたワイングラスをたたき割った。
「なんてことだ!装甲列車の物資強奪計画失敗とは、金髪の軽装歩兵相手にキャルまで敗れ、アルスバッハが死ぬなんて!」
キャルは少し弱っていた。
軽装歩兵相手にご自慢のダイヤモンドナックルを粉砕され、暗殺に失敗した挙句に逃げたのだからラムジンに申し訳のない思いでいっぱいだった。
しかしクモの怪人、ルビーだけは怒ることも、俯くこともなく冷静だった。
「子猫の失敗はともかく、アルスバッハの死は痛ましいですわね」
キャルは睨みながら、「あの軽装歩兵さんは予想以上よ」と小声で呟く。
「男爵、私にはリッシュ侯爵暗殺の命はまだ終わっていないと思っていますの。私が出ますわ」
ラムジンは心配していた。
ルビーを失えば、ナチュレによる大規模革命を起こすことは困難だからだ。
「いや、アルスバッハを失った今、お前まで失う訳にはいかない」
「ご心配なく。私の『クレシェンド』を持ち出せば、あの軽装歩兵は追ってくるでしょう。それに『クレシェンド』には面白い機能を残してありますの」
「そうか、ルビー。計画が狂った以上はお前に一任しよう。生き残ればこちらの勝ちだ。アレの完成までルビーには少し頑張ってほしい。キャルは逃げ延びた怪人たちをアジトに集めてくれ。俺がいなくても頼むぞ」
「『ピアニッシモ』が完成するのです?それに男爵自らが出陣されることもないかと」
「まあ気にするな。俺も時期にあの軽装歩兵を始末してやる」
ルビーは『クレシェンド』のマスターキーを手に後去った。
「金髪の軽装歩兵、必ず殺してやるよ・・・・・・」
残虐性を露わにしたルビーを見たキャルは顔を顰めながら、「あの女に任せていいの?」と尋ねる。
「まあ任せておけ。あの軽装歩兵を始末しなけりゃ、こっちが苦しくなる。キャル、お前には他のナチュレ怪人たちを地下に集結させろ」
「私もあの軽装歩兵に仮を返したいけど?」
「そう言うな。生きていればどうにでもなる。それに、まだやり残したことも多いからな」
ラムジンは不気味な笑みを浮かべながら、図面を眺めた。
「人類もバカだぜ。機械人形なんてもん、製造しやがって」
恐竜型の機械人形の図面だ。
新型機だろうか。
「まさか『ピアニッシモ』が出来上がりの手前なんてね」
キャルは呆れ気味に吐き捨てる。
「あの軽装歩兵が活躍する前、軍の輸送車を襲撃しただろ。その時に見つけた機械人形だ。まだ未完成だったが、足りない部品はこちらで補った。最終調整を終え、あの野郎をひねりつぶしてやるさ」
「けど、男爵さんだけで行くつもり?」
「ルビーの『クレシェンド』が最悪やられた場合、大規模作戦の実施に響く。出るなら俺だけでいい。それに、アルスバッハを死なせた責任とお前を負傷させた責任は俺にあるからな。ケジメはつけるさ」
キャルは心配そうな表情を浮かべる。
ラムジンは、金髪の軽装歩兵と差し違えるつもりでいることを察していた。
言葉は悪いが、ナチュレの主として責任を感じているのであろう。
ラムジンは、ソファーに腰掛け、考え事をしていた。
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