営業活動と雉の解雇

 鬼が島エンターテインメントは、クレーンゲームから音楽まで手掛けるエンターテインメント総合企業である。お伽商事は鬼ヶ島エンターテインメントからCM提供を受ける一方、ゲームの景品を納品するなど、様々な取引があった。

 最近は、鬼女子5人による鬼ガールズの「鬼さんこちら20XX」がチャート上位にランクインしていた。

 その日、桃太郎と雉山で鬼ヶ島エンターテインメントへの営業に行くこととなっていた。集合時間まであと数分の所で雉山からメッセージが入った。

「電車が遅延で、集合時間に間に合いません。リモート参加でもいいですか?」

 桃太郎はすぐに返信した。

「君には羽があるだろ。飛んできなさいよ」

 想定の範囲内だったが、雉の返信は来ず、集合時間になっても現れなかった。結局、桃太郎は一人で営業に向かった。


 担当の鬼岡と打ち合わせが終わり、帰るときになって、鬼ガールズが話題になった。

「僕、鬼ガールズのファンなんです」

「そうなんですか、サインとかほしいですか?」

「いいんですか?」

「全然かまいませんよ。我々はファンを大事にしてますから」

 なんだ、鬼ヶ島エンターテインメントって、こんなことまで頼めたのか。これがわかっていたら、もっと活用できたのに。

 桃太郎は、この仕事をやってて、初めてよかったと感じた。


 ある日、雉山の席が片付けられていた。桃太郎はこぶとり次長と浦島課長に呼ばれた。

「雉山君は解雇になったよ。リモート中に反物を作って、フリマで売っていたからね。一人抜けて大変だと思うけど、しばらく我慢してくれ」

 雉山が自作した反物を販売していたとは驚いた。

 そもそも、フリマサイトっていろんなものが売られているな。桃太郎の陣羽織、旗、鉢巻、桃太郎グッズはこんなところで売られていたのか。集団面接の連中はこうやって入手したのか。ほかにも、鬼の角セット、鬼パンツ、鬼涙・・・、鬼グッズもいろいろあるな。

 おや、これは何だ?桃太郎の目に映ったのは「有給20日分 20万円」と表記されたが画像であった。桃太郎は驚いた。有給って転売可能だったのかと。

 画像中の「有給」の文字はなぜか直筆で、その筆跡は猿田のものとどことなく似ているような気がした。

 ひょっとして猿が有給足りなくなっていたのは転売したせいだったのだろうか?

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