魔魔さんは誰のものでもない。

猫野 尻尾

第1話:洋風古民家カフェの経営者兼メイドさん。

この話の舞台は今現在または人間の世界の出来事ではないかもしれないのです。

一応2話完結です・・・続きもしかしたらあるかも。


彼女の名前は「魔魔まま」・・・ただの魔魔まま

なぜそんな名前なのは誰も知らない。

お客さんには自分でそう言ってるから、みんなから魔魔さんって呼ばれている。


魔魔さんはメイドカフェの経営者兼メイドさん。


ナイトメア商店街の一番端っこで細々と洋風の古民家カフェを営んでいる。

古民家カフェの店名はマグノリア「木蓮」

洋風の古民家は代々魔魔さんちで受け継いできた洋館。


魔魔さんがメイドのコスプレが好きなことと、古民家カフェが好きなこと。

両方叶えた20歳の女子。

20だけど、実は本当の歳はとっくに200歳を超えてる。

カフェをオープンした時の資金の出所もよく分からない。


カフェのメイドさんは魔魔さんひとりだけ、他にメイドさんはいない。

のんびりゆったり生きたい性格だから特にカフェを繁盛させたいという気はない。

食べていけたらそれでいいのだ。


素人メイドだから、こうじゃなきゃいけないって、こだわりもない。

どこへ行くのもメイド服。

商店街に買い物に行くのも、スーパーへ買い物に行くのもメイド服。

だから遠くからでもおれが魔魔さんだって分かる。


魔魔さんに身寄りはいない。

200歳だから好きな人もいたし、恋もした、でもみんな亡くなっている。

だから誰とも結ばれることなくずっと独身を通している。


さてどうして魔魔さんが本当は200歳にも関わらず20歳のままなのか?

それは魔魔さんは悪魔からもらった薬を飲んだに他ならないからだ。


まだ世の中が戦争中、魔魔さんが少女の頃。

屋敷の書斎には祖父が長年、収集してきた様々な本が壁の本棚一面に並んでいて

本棚に収まりきらない書籍が山積みにされていた。


魔魔さんは幼い時から数ある本の中でも魔術や天使や悪魔に関する本に

異様に関心があった。

その手の本は生前の祖父から読むことは固く禁じられていた。


結局、雑多に山積みされた本の整理もできないまま祖父はこの世を去った。

祖父が亡くなったことは悲しかったが、それよりも祖父の書斎で好きな本を

読めるようになったことは魔魔さんにとって嬉しいことだった。


祖父の書斎は魔魔さんの宝の部屋になった。


でも、本に興味がない両親はいずれ書斎の書物を全部処分するつもりでいた。

そこで魔魔さんはこれと思う本を数冊書斎から持ち出した。


一冊は黒魔術についての禁書。


もう一冊は白魔術について教本。


そして最後の一冊は悪魔の存在や歴史、悪魔を呼び出す呪文などが書かれた、

禁書だった。


三冊の中で魔魔さんが一番興味を持ったのはやはり悪魔について書かれた

本だった。


魔魔さんはある夜、その禁書の封を説いた。

そして重い表表紙を開くと訳の分からない文字と絵が奇妙な描かれてあった。

結局、何も読めないまま最後のページまで来た時、裏表紙の内側になにか呪文の

ような文字が書かれてあるのを見つけた。


少し変態文字たったけど、その文字は魔魔さんに読めるような文字に変形して

いった。

これなら私にも読める。


「ファリトゥス・デイ・ファルバトゥル・バラドル」と書かれてあった。


魔魔さんにはその意味は分からない。

その意味は《一度契約が結ばれたら命つきるまで》そう書かれてあった。


最初、魔魔さんは呪文を口にせず本を閉じた。

だが、数日経ってもそれがずっと気になって結局我慢できなくなった。


それも、もしかしたら本による誘惑だったのかもしれない。


魔魔さんは本の裏表紙を開くと、恐る恐るその呪文を読んだ。

内心では、本当に悪魔が現れたら怖いなって思いながら・・・。

半信半疑だった・・・ただ好奇心が優先した。


その呪文はこう書かれてあった。


《我は汝アスタロトを呼び出す。


悪魔サタンの偉大なる力によって、汝よ、直ちに遅れることなく、


我が身に害を与えることもなく、純粋な姿で我がもとへと現れよ。


我が汝に命ずるその全てに応えるために永久に燃え尽きることのない


業火のもとに我と契約を結ばん》


書かれたとおり読んだが、しばらく待ってもはなにも起こらなかった。

あ〜やっぱり・・・これはうそ?・・・魔魔さんはそう思った。

で、本を閉じようとした時、背後から男の声がした。


「俺を呼んだか?」


魔魔さんはびっくりっして振り返るとそこになんと一人の黒い男性が机の上に

腰掛けていた。

魔魔さんはその男性を上から下までまじまじと見た。


黒くて長い髪に冷たそうな切れ長の目・・・真っ黒なローブを身に纏った姿。

その男は少し首を傾げて上目遣いに魔魔さんを見ていた。


悪魔って絵に出てくるような頭にヤギみたいなツノがあって半獣半身の体を

持った醜い存在を魔魔さんは想像していた。


でも実際に目の前にいる人、悪魔のその容姿は人間とほとんど変わらなかった。


「自由を与えてくれてありがとう、お嬢ちゃん」


「わあ・・・イケメンさんの悪魔さん・・・」


たしかに悪魔にしてはシュッと引き締まったいい男前っぷりだった。


「おまえさんのおかげで地獄「混沌」から出ることができたよ」


「あなたは?・・・」


「俺は悪魔、アスタロト」


つづく。

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