EP02 国を滅ぼした者達と…別れ

「あ…やめ…やめ…だ、だれか! だれかぁ!」

「ほら、さっさと吐きなよ? この国の財宝はどこにかくしてるんだい? 王様?」


真っ二つに割れた機体を確認する俺と、飛び出た国王をボコボコにする男…対象に似つかわしくない雰囲気を醸し出しながら陽気に雑談をする女2人。

――――もはや現場は滅茶苦茶である。


おまけに―――


『戦艦の機能停止――――航行モードを終了―――やはり異なる時間軸への移動が関係しているのでしょうか? 一部の機能を除きあらゆるものが制限されているようです』

「まじか…つ~ことはこれも持って帰れない系?」

『はい。 次元格納庫の使用も現在は不可能なようです。 解析が終わっても持ち帰る事はできないでしょう』

「はぁ…じゃあ。 どうやってこの国の金と財宝を持って帰るんだよ?」



――――――――しかし、思わぬ所で収穫を得る事となった。


国を出る事にした俺達4人。 

そこで佐藤から袋のようなものを受け取る―――


「これは?」

「これは、マジックバックと言ってね。 食料一月分と、この国に隠してあった金銀財宝が入ってる。もちろん、僕達と半分ずつだけどね…?」

「いいのか? というか…杏樹にこんなものまで貰っちまって…」


仲良く女子2人で会話している方の一人を指さし佐藤にそういう。

学生服だった少女が、何処からどう見てもこの世界の人間っぽい魔女のような姿に変わったかと思えば、なにやらこの世界の物ではない木製の杖まで頂いてしまったらしい。


「いいんだ。 もしかしてと思ったけど、僕の魔力にあてられて気絶しなかった彼女なら…あの杖を受け取る資格が十分にある。 それと魔法の使い方について記された書物も一緒にいれておいた。 彼女のために役立ててくれ、もっとも…この世界に来てもの人間である君には無縁の話だろうけどね?」

「ははは……普通の人間最高~…」


ガインッ!!


すると何を思ったのか、佐藤のやつは本気で殴りかかって来た。

が、攻撃が通る事はなく空しく何か壁のようなものに阻まれるのであった。


『攻撃を検知。 フィールド展開――――身体にダメージはありません』

「くぅ~~~~…いててて…まぁ、この謎の壁さえなければ普通の人間なんだけどねぇ!?」

「まぁ、ほら。 これがなかったら反応する前にお陀仏だし……」


むしろさっきの俺は呑気に話をしていたが、攻撃される!?という事までは気付けないでいる位には…相手の身体能力がイカレている事を解ってくれただろうか。


「それにしても、元・宇宙戦艦の艦長かぁ~~~いいなぁ~めちゃくちゃ憧れるんだけど!? あのロボットもすごいカッコいいデザインだったし…大気圏外からの制圧攻撃とかどうなってるんだい!? もしかして喋るロボもいたり!?」


と羨ましそうな目…いや、まるで子供のような表情で俺を見つける佐藤。


「と言われてもなぁ。 普通の人間だぞ? おれはそっちの方がいいや、怪我とかしても一瞬で治りそうだし。 病気とかしなさそうじゃん! おまけにめちゃくちゃ早く走れて空まで飛べるんだろ! インチキだろ!」


逆に俺はこの場にいる3人が羨ましくて仕方ない。

それに…魔法!! 魔法だよ! 魔法めちゃくちゃ使いてぇぇ!!!

なにそれ!? 魔法なんか使えたらサバイバル最強人間の完成じゃん!? 


「意外と病気しないってのもしんどいよ? まぁ、話はこれくらいにしておいて。 マジックバックの使い方は彼女に教えておいたから。 必要な物は彼女に取り出して貰うんだね。  さてと、この辺でお別れだね…僕たちはそろそろ行くよ」

「そうか。 悪いな、貰ってばっかりで」

「ははは! いやいや、僕にだって多少の情はあるんだ。 その辺で倒れられても困るからね…」


どうやら、この二人は世界を見回りながら二人だけの旅を開始するらしい。

色んな景色を見ながら何者にも縛られない人生を謳歌するのだとか…

つまりあれだろ? イチャイチャ夫婦旅行だろ!

流石異世界の元勇者とその聖女様だと事で! お熱いですね!!


「あいちゃん! そろそろ行くよ!」

「…うん。 ゆうくん……じゃあね。 また、ゆきちゃん」

「うん! またね~! 愛っち!」

「あ…そうだ。 いち、にい…二人ならちょうどあれがあったな」

「「??」」



途中で思い出した俺は―――


「ナビ。 バングルの要請だ!」

『ラジャー。 支援用ポッド射出――――ガイドビーコン照射――――到着まで3,2,1―――』


ズガンッ!!!


「「!?」」

「これだこれ! こんなのあったな…そういえば」


空高くから現れたのは 1m程の箱状の支援ポッド…展開を始めると2つの金と銀の近未来的形をしたバングルが現れた。


「こ、これは?」

「あぁ、これか? これはエンゲージバングル。 その名の通り結婚式の時に手渡される腕輪なんだが。 発行する色で互いの状態を教えてくれるんだ、通常時は緑色…それが赤くなると危機的状況にあるってわけだ。 あとは互いの位置が――たとえ銀河系のどこにいようとも解る!!」

「ぎ…銀河系…そこまで遠くにはいかないでしょ…」

「まぁまぁ! 備えあればなんとやらっていうし…受けとってくれ―――」

「わぁ…きれい…」

「ありがとう。 進藤」


あとはそれ、緊急時には変形するだよね―――ってことは内緒にしておこう。


「ジー……」


仲睦まじい二人の姿を前に、まるでハムスターのように頬袋を膨らませた女がひとり…に止みつけているが今は無視するとしよう。


「さて、今度こそお別れだ。 じゃ、またな! それと…綾坂さんも…」

「ふん!!」

「またね…ゆきちゃん」

「うん! またね~! 愛っち!」

「「………」」


俺達は見つめ合いながらやれやれと首を横に振った。

まぁ…見せつけられて怒る理由も解るが…佐藤にあたりがつよすぎないか?


そして俺達は別々の方向へ向かう事となった。

のちにこの2人の男たちが世界に名を馳せる事となるのはもう少し後のお話――――

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