第3話「ささやかな優しさと昔の約束」
そこで、今に至る。
「そこはほら、申し訳ないというか、何と言いますか……私だけのせいではないというか、だね……」
司は視線を泳がせ、どうやって切り抜けようかという笑顔で理由を言おうとしてる。
「アンタ以外の誰がいるんだ。」と言おうとした時だ。
「校長の言うことは嘘じゃないよ、奏。そもそも、校長が赴任するより遥か昔の話だし。」
フォローに入ったのは圭一だ。
「やっぱり、お前なんか知ってやがったか、圭一。」
備え付けのケトルで湧いたお湯で司のお気に入りのコレクションのダージリンを勝手に漁って持ってきた流人が呆れた顔で圭一を見る。
因みに背後では司が「ぁ……、それまだ買ってたから一度も飲んでないのに…。」と悲しそうな声が聞こえてきたが無視だ。
「まあ……知ったところで俺にも校長にも誰にも止められない案件だからね、コレ。」
ね?と卓上の茶菓子を摘みながら司の方を見る圭一。ちゃんと説明しろ、という事だろう。
「……この学校、廃校の危機に陥った事があるんだ。」
少し考えたあと、司はぼそりと呟いた。
そんな話は聞いたことがない、という顔をしていたのだろう。司は「私も産まれてない大昔の話だけどね。」と困ったような笑顔で付け加えた。
「その時の校長は、とにかく学校を守ろうと躍起になったんだ。とは言え、出来ることは限られていたらしくてね。どうしようか途方に暮れていた時、助けてくれた人がいたんだよ。それが当時の、今回の話に関わってる学校の理事長なんだよ。」
「当時の江崎高校の校長は、その理事長に約束したらしい。何かあった時、この学校は必ず力になる、ってね。それで、当時の校長っていうのは、今の校長のお爺さんなんだよ。」
圭一は司が答えにくいと思ったのか、当時の約束の部分を代わりに説明した。
「……君は本当に何でも知ってるんだなぁ。」
「これで敢えてどっか悪役ぶらなければ良いんだけどな……。」
笑顔で何も言わない圭一に対する司の言葉に流人も呆れながら呟く。
それには奏も同意だった。
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