エピローグ

そして

 無感情に坂上の瞳を見つめる。


「こいつらは紛れもなく猫だよ。ただし何度も言うように俺らの次元の猫だけどな、食手を畳んでいれば、あんたらの次元の猫と区別がつかないだろ?もっと言うとこいつらは知能も高いから簡単な指示くらいは理解できるんだよ」


「例えばあんた達、こっちの次元の人間の前では食手を隠して普通の猫のフリをしろとか…まっ化けるっていうか擬態だな、ただ鳴き声だけはどうしてもこの次元の猫のフリは出来ないみたいなんだが」


(そんな…そんなことが、あってたまるか)


「あっ因みに、この次元の人間を喰ってるのは、たまたまあんたらが猫の餌場に来たってだけだから、特に深い意味はないぜ」


「んんんんあああんいい」


「ああもう、そろそろ良いだろ。まぁそんな訳だから」


柿原はきっきまで座っていた鍾乳石に腰掛けると両手を打ち鳴らした。


パンッという合図とともに洞窟内の猫が一斉に坂上に群がった。


坂上の身体はあっという間に舐め削がれ、舐めこそがれる。


腕、顔面、脚、腹、所構わず舐め剥がされていく。


(やめろっこれ以上、俺を削るな)


二分ほどは意識があったが、それを過ぎると坂上の肉体は生理的な信号を全て止めた。


五分後には全ての組織をなめ取られ、成人男性の白骨だけが残った。


「あとはこの骨を”犬”に喰わせて終わりか」


一仕事を終えた柿原は次の作業に取り掛かるために立ち上がる。


「もうそろそろ、繋がりも切れそうだな、今度はいつになるやら」


柿原の背後では聞きなれた猫達の声が、もっと餌をくれと木霊していた。




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島幻郷 永里 餡 @sisisi2013

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