第14話 合わせ鏡の怪

 次の日の朝。


私は、学校に登校してきており、教室の自分の席に座っていた。


 天上さんは、学校には来ていなかった。つい先日、彼女は体育教師と喧嘩をしたため、3日間の停学処分を食らってしまったのだ。


 自分の前方にある彼女の席へ目を移す。


 なんだか、寂しいなあ・・・


私は、彼女の席から目を離すと、机の上の左腕を横向きにし、右腕で頬杖を付きながら、ボーっとし始めた。


すると、ふと私の頭の中にもう一人休んでいる生徒のことが浮かんだ。


 そういえば、愛沢さんも休みだっけ?彼女、入学式の日以来ずっと休んでるよね? 


 自己紹介の時に、高校デビューをしようとしたら、後で恥ずかしくなり学校に行きにくくなったという感じだろうか?


 私は、彼女のことが心配になったので、私は席を立ち、近くの女生徒に聞いてみた。


「ちょっと、聞きたいことがあるんだけどいいかなあ?」

 私は、隣の席にいた焦茶色の髪で前髪を一つ結びにした感じの女子生徒に話しかける。


「何、どしたの?」

彼女は、私の方に目を向けながら、そう呟いた。


「愛沢っていう子なんだけど、どうしてずっと休んでるのか知らない?」

私は、とりあえず彼女へ質問をしてみる。


「うーん。詳しくは知らないけど、、、

 自己紹介でやらかしたからじゃない?」

 彼女からは、知らないと答えが返ってきた。


 それに、やっぱり愛沢さんは自己紹介のことで、学校に行きづらくなったのだろうか?


 すると、私の横から長い茶色の髪の女子が話しかけきた。

「私知ってるよ。

 この前、気になって愛沢っていう子の動画の配信見てみたんだけどね、、、」


 彼女はそう言いながら、制服のポケットからスマホを取り出すと、画面を私に見せてきた。

そして、彼女は画面を操作し、pチューブを開くと1本の動画を再生し始めた。


「はーい⭐︎キラピカピカリン

 相沢美咲で〜す」

 動画が始まると、洗面所にいる愛沢さんの姿が映った。


そして、彼女は自分の名前を名乗ると目の横で横ピースをし、腰を横に少し曲げながらウィンクをした。


「今回は、ヌーディストラッツという噂話があるらしいからほんとかどーか、検証していくよ〜」

 どうやら、彼女は都市伝説系の検証をやろうとしてるようである。



『ヌーディストラッツ?』『何、それ?』


 愛沢さんは、ライブ配信をしているようで、動画の画面にはコメントが流れていた。

おそらく、彼女はパソコンに接続したカメラで撮影しているのであろう。


「ヌーディストラッツっていうのはね、夜中の2時に合わせ鏡をして、『ヌーディストラッツ、ヌーディストラッツ』って唱えると悪魔が出てきて、鏡の世界に連れてかれちゃうらしいの」

 そういうのはやめておいた方が、、、

 鏡の世界は何かと霊界にも繋がってるというしね。

 すると、動画の画面にも、

『やめとけよwww』

『どうなっても知らんぞ』

 といったコメントが表示されていた。


「もうすぐ夜中の2時になるからさっそく試していくよー。

 時間になったら、タイマーがなるようにしておくね」


 彼女はスマホのタイマーをセットした後、洗面台に置いてあった手鏡を持ち、それを洗面台の鏡と彼女を挟んで対象になるように動かした。


そして、彼女は手鏡に向かって横ピースをし、腰を横に少し曲げながらウィンクをした。


 私は、息を呑んで見守っていた。

 しばらくして、スマホのタイマーが鳴り響いた。タイマーが鳴り終わると、彼女は口を開く。


「うーん。どうやら何も起きないみたいだね。もう、ちょっと続けてみるよ」

 彼女はそう言うと、合わせ鏡をしたまま、同じ姿勢を1分くらい維持し続けた。


 しかし、何も起こらない。

 私は、ほっと胸を撫で下ろした。

 そして、彼女は手鏡を置いた。


『どうもならないよ』『結局嘘ってこと?』

『ま、大抵の都市伝説は作り話ってことだな』

動画の画面へ流れるコメント。


「何も起きないからここまでにしたいと思いまーす。

 検証結果は嘘ってことだね。

 今日の動画はここまでだぴょん。

 また見てね、それじゃ」

 彼女は、そう言って動画を締めくくり、配信を終わらせるため、パソコンへ近づいた時だ。


 それは、突然起こった。


 なんと、洗面台の鏡には黒いモヤのようなものが写ったのだ。

『何、アレ?気持ち悪い』『おいおい、嘘だろ』『う、後ろ、、、』


「後ろ?」

 彼女はそう呟き、後ろを振り返る。


 すると、ぬっと黒い手のようなものが鏡から現れた。

 そして、それは彼女の体をパッと掴むと、鏡の中に引き込んでしまったのだ。


それを見た瞬間、私はあまりの驚きに目を見開く。


『マジかよwww』『みさきち、、、』

『やらせか?』


 そういったコメントが流れた後、何事もなかったかのようにごく普通の洗面台が映っているだけとなった。


「何これ、ちょーやばいんだけど」

 その動画を初めて見た女生徒は驚きの声を上げた。


 私はあまりの衝撃で、しばらく声が出なかった。

 これは、かなりまずいんじゃないの?


 私はどうしたものかとあたふたしている内に、教室のドアが開き先生が入ってきた。

「コケコッコーーーーー」


 そして、先生が壇上に立つと、私たちは自分の席へと戻り、朝のホームルームが始まるのであった。



 ◆

 授業が全て終わると、放課後になった。

 今日の授業は朝見た動画があまりにも衝撃的すぎて、全然集中出来なかったのだが。


 現在、私は下校するため廊下を歩いている。

すると、前方から白い人魂が近づいてきたが、私は無視して、そのまま考え事をしながら歩み続ける。


うーん。

やっぱり、愛沢さんの件は、学校や警察に報告した方がいいのかなあ、、、

でも、言ったところで、根本的な問題は解決しなさそうだし、いったいどうすべきなんだろう、、、


これは、早急に何とかすべきだよねえ、、、


すると、掲示板に貼ってあるとある一枚の紙が目に留まり、ふと私は足を止める。


そして、じっくりとその紙を読み始める。


『巫女部 怪異や妖怪、超常現象に悩まされている人がいたら気軽に相談ok 新入部員大歓迎』

 その紙には、このようなことが書かれていた。


巫女部?

いったい何だろう?


 怪異や超常現象のことなら任せろ的なことが書かれていたから、もしかすると愛沢さんの件もなんとかしてもらえるかもしれない。


 ちょうどよかった。

早速、行ってみよう。



 こうして、私は巫女部とやらの教室に行ってみることにした。

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