第24話4月12日①
昨日はカーミラ様のところから帰ってから、今日が休日だという話しになった。
そこでスイセンから、休日に午前と午後で二人ずつデートをしてはどうかと提案があった。提案した代わりとして、自分はこのメンバーの最後でいい。むしろその方が良いとまで言って。それを受けて最初にデートをすることになるリコリスは、アルス様と二人きりだった頃ならともかく召喚獣が六人も居る現状で1日独占するのも忍びないと言うのでスイセンの提案を受けることになった。
そうして、リコリスと街中へ出て歩いている。
「昨日ネモフィラを召喚したことはリリス様に伝えてないのに、今日には通信具が届いていたね。どこで知ったんだろう?」
「私の方から、昨日のうちにリリス様に連絡したのです」
「そうだったんだ。いつも色々とありがとうね」
「いえ、大したことはしてませんから」
「昨日も大活躍だったしね」
「それは、アルス様のお力あればこそです」
「力だけ持っててもしょうがないよ。俺は皆に助けられている。だから、ありがとう」
「そこまで仰るのでしたら、受け取らせていただきます」
「そうしてほしい。もうリコリスが、いやリコリスだけじゃなくて皆が居ない生活なんて出来ないよ」
「それは……光栄です。私も、アルス様の居ない生活などもう考えられませんから」
「お互いにお互いを必要としてる。これってなんだか素敵だね」
「そうですね。私も素敵だと思います」
「もうそうなってから、けっこう経つけど。最初の二人だった頃とは、すっかり雰囲気が変わったよね」
「二人きりではなくなってしまいましたからね。真名に誓ったことの影響もあるのだと思います。今の私は……お気に召しませんか?」
「そんなことはないよ。前のリコリスも今のリコリスも。俺は好きだよ」
「はい、私もお慕いしています」
「なんだか改めて言うと照れくさいな。キスはよくするんだけどね」
「私はその先もしたいですけどね。お待ちくださいね。必ず耐えられるようになってみせますので。」
「気長に待つことにするよ。だから無理はしないでね」
「アルス様に心配をかけさせるようなことにはしないつもりです」
これは無理はするつもりということだろうか。俺の精力が、それだけ異常な速度で成長しているということだろう。
心配をかけているのは俺の方か。俺自身も気付かない内に、なにか変わっていたりするのかもしれない。そこまで考えて、こんなに考え事をすることはなかったと気付く。
これが良い変化なのか、悪い変化なのかは分からない。それでも、彼女たちに相応しい契約主であり、伴侶ではありたいと思う。
そうしていると、とある露店が見えた。
その露店はアクセサリーから腕時計、簪なんかもある身に着けるものならなんでも取り揃えているといった店だった。
商品を見る。値札は書いていない。手持ちのお金で足りるか分からないが、それでも良いものを扱っているように見受けられる。その中でリコリスに合いそうな物を見つけた。それを手に取って、これを買います、と声を掛ける。
「お代は──。」
値段を言う前に銀貨を1枚渡す。
「これはどういうつもりだい?」
「足りませんでしたか?」
「いや、多すぎるって言ってんだ。」
「じゃあこれからも贔屓にするので、もしもっと高ければそこから引いてください。この後も来ますし。」
「売る側の俺がツケとけってことかい?まぁそこまで言うんならそうさせてもらうよ。今日もお前さんがもう一度来るまでは店を出しておくよ。」
「ありがとうございます」
そうして買った商品をリコリスに渡す。
「これを私にですか?」
「そのために買ったんだよ」
「この場で着けてもよろしいでしょうか?」
頷くことで答える。そうしてリコリスが身に着けたのは、ハートの飾りのついた黒いチョーカーだ。
「似合っていますでしょうか?」
「とても似合っているよ」
「嬉しいです」
そうして、話しながらまた歩き出す。実は二人きりというのは危ないかもしれないということで、他の皆が護衛として周囲に居る。
ガーベラなんかはすれ違う度に手を振ってくるので、手を振り返す。あ、カトレアに連行されていってしまった。説教はしないであげてほしい、ガーベラも悪気はないだろうから。
そうして、緑がいい感じに繁っている広場にたどり着いた。そこのベンチに座ってゆっくりとする。リコリスとの間に今は言葉はないが、それでもお互いにリラックスしているのは感じ取れる。こういうゆっくりとした時間もいいものだ。リコリスを召喚してからずっと、慌ただしい日々が多かった気がする。そうやって静かな時間を満喫していると、カトレアが近付いてきたのが見えた。もう時間のようだ。
「リコリス、ありがとう。楽しかったよ。」
「こちらこそ、ありがとうございます。私も楽しかったです。」
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