第20話【ヴェガリス】の現状

 救世主パーティーから追放されてしばらく経つが、あれから【ヴェガリス】の評判を耳にしたことはなかった。

 単純にいろいろと忙しくてあいつらの情報まで手が回らなかったというのもあるが……まあ、単純に優先順位は下の下だしな。今さらアルゴたちがどうなったかなど関心がない。


 ――ただ、少し気になる情報が寄せられた。


「ヤツらはあなたたちが抜けてから作戦の失敗が続きましてね。近々救世主パーティーとしての称号を剥奪されるかもしれないという噂が立っています」

「ほう……」


 いくつか予想した中でもっとも最悪の展開を迎えたか。

 作戦の立案は基本的に俺がやっていたし、現場での指揮こそアルゴがとっていたが、それも完璧とはいえず、頃合いを見計らってフォローを入れたりしていたからな。同じパーティーにいた古株のジェームスやカインが空気を読んで同じ役割を果たしてくれると期待をしていたのだが、どうも不発に終わっているらしい。


 アルゴのいけないところは感情に流されやすい点だ。

 落ち着いて対処すれば難なく突破できるような状況であっても、自分の感情を最優先にした作戦を取りがち。あれでは安定して戦果をあげられない。

 口酸っぱく指摘をしていたが、軽く流され続けていたんだよな。それでも心にはとどめておいてくれるだろうからじきに改善されるだろうと期待を寄せていたのだが、結局あの悪癖は直らなかったか。


 だが、情報はまだこれだけじゃない。


「そんな【ヴェガリス】だが、リーダーのアルゴはあなたとミレインを再びパーティーに加えるべく画策をしているそうです」

「俺たちをまた【ヴェガリス】に?」


 正直、もうかかわる気はないのだが……プライドの高いアルゴが一度パーティーを抜けた俺たちを呼び戻そうとするなんて、よほど追い詰められているのだろう。


 当然、応じるつもりはない。

 ようやくミレインは自分だけの道を歩もうとしている。

 それに……アルゴのミレインを見る目はどうにもなぁ……そういうところはついつい父親目線になってしまうが、あの子も危機感を抱いていたようだし。


「俺もミレインも【ヴェガリス】へ戻るつもりはありません。これからは普通の冒険者兼農家としてクラン村に骨を埋める気でいますので」

「あなたがいてくれたら、この町の治安も一気に改善しますよ」


 騎士団のオルゴンはそう言うが、ちょっと買いかぶりすぎじゃないか?

 いずれにせよ、自警団の強化は今後も必要になってくるだろうし、俺も協力は惜しまないつもりではいる。


 それだけはハッキリと告げておいた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る