第39話 水浴び

「兄さん、いつから盗撮なんて始めたんだ??」と、冷静に戻ってシルウェステルが怪訝そうな顔をして言う。

 と、その時・・・・

「シルウェステルさん!!」と、ハインミュラーの声が聞こえた。

「ハインミュラーさん!!」と、シルウェステル。

「どうしてこんなところに!?!?」と、二人で口々に言い合う。

 後ろから、ロイがついてきていた。

 その時、遠くから声がした。女性の声だ。

「ねーーえ、ゼルフィーネ、ここらへんでみんなで遊びましょうよ!!」と、ヘレンの声がした。

 思わず隠れる男性一行。「遊ぶ」??と、みんなが意味不明な顔をする。

 恐る恐る、声のする方を、ハインミュラーが代表で草むらから覗いてみると、数人の女性・・・12使徒の5人の巫女が、巫女服を脱いでいた。

「なっ・・・・」声を押し殺し、ハインミュラーが草むらから、男性陣のいる方へ慌てて戻って来た。口をパクパクさせている。

「どうした、ハインミュラー」と、兄であるロイが尋ねる。

「あ、アニキ、大変だ、妹二人とあと3人・・・とにかく、5人の巫女さんが、湖の近くで服脱いでる!!」と、ハインミュラーができうる限りの小声で言った。

「あー――??なんだって??」と、アラミス。

「兄さん、リアンたちが水浴びしてるって!!」と、シルウェステルが呼び止める。

「シルウェステルさん・・・・あんたにはちょっと重要な話があったが、ここは・・・」

「あーら、重要な話ってナニ!?!?」と、その時、ハインミュラーの背後から声がした。巫女服を着なおしたゼルフィーネだった。

「げっ、見つかった」と、アラミスが思わず言ったので、「その発言は誤解されるぞ、兄さん!!」とシルウェステルが言ったが、遅かった。

「今すぐここから出ていけっ!!」と、ゼルフィーネとリゼティーナが叫んだ。

 男性陣は、全員が息せき切ってその場から猛ダッシュで逃げ出した。

「まーーったくもう、12使徒たるものが、そろいもそろって水浴びの盗撮かしらぁ??」と、ゼルフィーネ。

「呆れたわ」と、リゼティーナ。

「リゼティーナ、どうしたの??」と、遠くからリアンとヘレンの声がする。

「なんでもないわ、3人は遊んでてちょうだい」と、リゼティーナが叫んだ。

 一年に一度の、12聖人の封印の儀式の日は、毎年の元旦に行われる。つまり、1月の寒い時期だ。

 寒中水泳ではないが、5人は、覗く人のいない中、水浴びを堪能した。

「ね、向こうに温泉の湧き出る箇所があるのよ」と、ゼルフィーネが言った。

「ぜひ行きたいわ」と、セレス。

「私も!」とヘレン。

「リアンも来てくれるわよね??」と、リゼティーナ。

「もちろんよ」と、リアンノン。

 5人は、水浴びをしたあと、いったん巫女服を着て、その後、ゼルフィーネの見つけたという、天然の温泉へと向かった。


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