第6章 姉妹と、兄と、水浴びと、アラミスの過去と

第34話 ロイとハインミュラーの作戦

第6章 姉妹と、兄と、水浴びと、アラミスの過去と


 封印の神殿(12使徒の居住区)の1階の階段の下に、倒れているリアンノンを、ヘレンが見つけたのだった。

「リアン、大丈夫!??」と、ヘレンがリアンノンを揺れ動かす。

「う、ううん・・・アレ??私、なんでこんなところにいるの??」と、リアンノンが寝ぼけたようなことを言う。

「それはこっちのセリフよ!姿が見えなくなったと思ったら、・・・今日になってここに戻ってきてて。しかも倒れてて。一体、どうしちゃったの??」

「私、どこかに行く用事があったのは覚えてるんだけど、それ以外は覚えてないの。なにも思い出せない」と、リアンノン。

「階段から落ちたんじゃない?少し記憶喪失だったりして。部屋で休んでなさい」と、ヘレンが言った。

「ええ、姉さん、ありがとう・・・」そういって、リアンノンとヘレンは連れ立って部屋へ向かった。

 時を同じくしてその頃。

 朝食の席で、ロイ&ハインミュラー兄弟は、ハムエッグとウィンナーを堪能しながら、話し合っていた。

「つまりよ、最近死霊の国の奴らによる事件がちらほら出始めている、ってことよ、アニキ」と、ハインミュラーがウィンナーをフォークで刺して言う。

「そうだな」と、ロイ。

「――なんでアテナ神は包括的な、なんとなくの返事しかくれないんだ?おかしくないか・・・?それより、この事態、看過してもいいと思うか、アニキ!?」

「悪神シェムハザの封印を直接見張っているのは神々の一部らしいが、そこから指示や連絡が来ないのであれば、我々としては動く手立てがないだろう。どう動くんだ、ハインミュラー?」と、ロイ。

「うぐっ・・・確かにな・・・。だが、」といって、ハインミュラーは辺りを見回し、声を低くした。

「あの長老、少しおかしくないか、アニキ」と、こっそりと言った。

「ああ、分かっている。あの光の神殿の石像の間を、アテナ神からの指示と言って、立ち入り禁止にしたのも奴だしな!今度ハッタリでもかけてみるか?」と、ロイ。

 二人は少々話し込み、うんと頷いた。

「俺らから神々にコンタクトをなんとかしてとってみる。そこから矛盾やおかしい点が出てくるはずだ」という結論に行きついた。

 午前中話し込み、その他の仕事や雑務を終えた後、ロイとハインミュラー兄弟は、神々とコンタクトをとる方法を知っていると思われる、元賢者・シルウェステルに頼みこんでみることにした。

「シルウェステルさんを探してみよう!」と、ハインミュラーが言って、二人で各神殿を隠密に探してみたが、見つからなかった。

 その頃。シルウェステルは、神殿の森の奥に、兄・アラミスから呼び出されていた。

「よーし、来たな、シルウェステル!!」と、アラミスが言った。

「兄さん、なんだって俺をこんな場所に」と言って、シルウェステルがげんなりした表情をする。

「ズバリだ!剣術の稽古みたいなものさ、シルウェステル!俺に勝てたら、リアンノンちゃんの秘密を教えてやるよ!」と、アラミスが自信満々に言うので、シルウェステルはカチンときた。アラミスは、リアンノンの、生まれ変わった現世の片思いの相手だった、というのはみんな知ってる。

(アイリーンの秘密を知ってるだと・・・!?!?兄さん、悪いが本気で行くぜ!!)と、シルウェステルは思った。

「兄さんは、神すら恐れる剣士、と前世で呼ばれてたんだよな」と、木刀で斬りあいをしながら、シルウェステルが言った。

「おうよ、弟よ、あまり詳しい過去は誰にも言ってないがな」と言って、にやりとアラミスが笑う。

 こうして、二人の兄弟は剣術の稽古を始めた。

 深い森の中に、にぶい木刀の叩き合いの音がこだまする。近くの小鳥が一斉に飛び立つ。

 木刀をふるいながら、アラミスは前世のことを想い返していた。


  

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