第31話 全員が重い過去

「そいつぁますます興味がわいてきたが・・・どうせ俺には教えてくれないんだろ??」と、アラミス。

「いつか、弟さんから聞くといいわ」と、ゼルフィーネ。

「・・・分かった、そうするな」と、アラミス。

「なーんて話してるうちに、もういい時間帯だな。出発せねば」と、シルウェステル。時刻は午後3時半だ。

「今日は俺がドラゴンになるよ」と、シルウェステルが言った。

 リアンノンから認められた『聖騎士』であるシルウェステルならば、ドラゴン化しても、すぐに人間の姿に戻れる。多少、体力は消費するものの、シルウェステルは健康な第一子であり、前世は賢者だった身だ。彼はドラゴンになって飛翔する感覚も好きだった。そのことは、12使徒全員が知っていた。

 近くの町なら、何もドラゴンになって飛んでいく必要はない。馬車だってあるし、馬車が雇えなくても、馬に乗って行けばいい。急ぎでないのなら、遠くでも馬で行けばいい。

 だが、今回のギアナの町は、いつまたグールから襲われるか分からない。一刻を争う。

「じゃあ、俺が竜になるから、ちょっと離れててくれ」と、シルウェステルが言った。

「掟(レゴラメント)」と、シルウェステルが、手を心臓の上に置いて言った。

 光に包まれたのち、シルウェステルは藍色の美しい竜になっていた。

「よーし、行くか!!」と、アラミスが元気そうにそう言った。

「私も、お札をたーくさん用意してきたわ!」と、ゼルフィーネ。

(俺ら12使徒は、全員何らかの重い過去を持ってる。それを話すかは、その人次第だが・・・)と、アラミスはふと思ってゼルフィーネを見やった。そして、ドラゴンに乗り込んだ。

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