第18話 セレス、竜になる

久しぶりに昔の夢を見たわ、とセレスは思った。今日は、リゼティーナとゼルフィーネと、3人で、丘から下り、住民たちに魔法のお札を描いてあげる、公務のような仕事の日だった。

 寝間着を普段着の巫女服に着替え部屋の外に出ると、ばったりリアンノンと出会った。手を口に当て、ふわわ・・・と大きなあくびをしている。

「おはよう、リアンノン」と、セレスが言った。

「おはよう、セレス」と、リアンノン。

「昨日の一年に一度の公務は疲れたでしょう、朝食とっておいてあげるから、もう少し寝てたら??」と、セレス。

「ありがとー、セレス、それならお言葉に甘えて…」と言って、素直にリアンノンは回れ右をして、自室に戻ったのだった。

 セレスはくすっと笑い、神殿の食堂の間に向かった。

「おはよう、セレス」と、アラミスが片手をあげて挨拶した。続いて、食堂に向かう通路で、部屋から出て来たヘレンがそれに加わった。

「今日は術式の魔法紙をみんなに渡すために下に降りるんだってな!・・・お布施がたんまりもらえるといいんだが」と、アラミスが言う。

「あら、お布施ならすでに毎月税金として入ってるじゃない、お金目当てはよくないわよ」と、ヘレン。

「でも、お金は必要かも・・・」と、セレス。

 食堂につき、一同はすでに朝食を終えているメンバーと、これから朝食をとるメンバーに分かれていた。

「リアンノン遅ぇな、どうしたんだろうか??」と、シルウェステルはふと思った。

 そっと、姉のヘレンに近付く。

「あのー、リアンは・・・??」と、こそっと耳うちすると、

「リアンノンなら昨日の疲れでまだ眠ってるわ」と、セレスが代わりに答えた。

「!そ、そうか、ありがとな、セレス」と、シルウェステル。

「遅かったわね、二人とも!」と、一行の前方から声がした。食事を終えたゼルフィーネだった。

「ごめーん、ゼルフィーネ、今から食べるから許してちょうだい!」と、リゼティーナ。

 リゼティーナも、これから朝食を食べるメンバーだった。

 楽しく朝食を終え、、ゼルフィーネ・リゼティーナ・セレスの3人は、下の国民の居住区におり、布教活動に似た奉仕活動をする仕事に出発する準備をしたのだった。

 ヘレンは、昨日の行事の片づけの準備を、男性陣と一緒に、残ったものをする予定だった。

 居住区と、12使徒の住む世界は、大きながけというか丘で区切られている。丘を登るのはかなりの時間がかかるが、荒野の丘は国民の人気ピクニックスポットだ。

 手っ取り早く居住区に行くため、「じゃあ私が」といって、セレスが竜になると言った。

「掟(レゴラメント)」と言って、セレスが片手を心臓にあてて言った。セレスが突如光りだし、みなが気づいたときには、皆の前には一頭の大きな緑色の美しい竜がいた。

『さ、みんな乗ってちょうだい』と、セレスが言った。

「お言葉に甘えるわよ、セレス」と、ゼルフィーネとリゼティーナが言って、ドラゴン化したセレスの背中に乗り込んだ。

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