第16話 山賊VSシスターたち

 出家しシスターとなったエイダは、主に仕え民衆を守る義務と責務があるのだ。

「村で唯一魔法が使える私に、そんな人数で立ち向かうつもり??」と、エイダが山賊20名に向かって叫んだ。

 山賊のリーダーらしき男が、19人の子分をおさえ、全面に名乗り出た。

「よう、お嬢ちゃん。お嬢ちゃん一人かい?他の村人は逃げ出しているが。そこをどいてくれねえかな??」と、山賊のリーダーが言った。

「ひと思いに殺してもいいが・・・人買いに売り飛ばすのもいいな、この人なかなかのべっぴんさんだぞ!!」と、山賊のリーダーがニンマリして言った。エイダは勇気がゆらぐのを感じた。恐怖で背中がぞっとする。

「エイダだけじゃないわ!!」と、その時後ろで声がした。逃げたかに見えた残り4人のシスターたちが、エイダと同じく、農作業用具を手に、山賊に脅しをかけた。

「私たち4人は戦いの素人。でも、このエイダは魔術師としての玄人なのよ??どう?怖くなった??」と、ブレンダが言った。

「お頭、もういいです、こんなくだらねえ談義。もうやっちまいましょう」と、子分が言った。

 山賊のお頭が、ふところの剣を抜き、エイダに向かって斬りかかり、エイダも観念して目をつむったところ・・・

 物陰から隠れていた村人の一人の男性が、エイダをかばい、山賊の刃を受けた。一瞬のコトであった。

「ヴェンデルさんっ!!」と、血の海になった地面にしゃがみこみ、エイダが叫んだ。

「お前、魔法使えるって嘘だな??」と、山賊のリーダーが言った。

「だが、オイオイ、村人さん、逃げてないみたいだぜ??」と、山賊の一人が言った。エイダがはっとして振り向く。

 逃げて!とエイダが言ったわりには、村人は武器になりそうなものを各々もって、元の持ち場に戻ってきていた。誰も、村の教会のシスター5人を見捨てる気はなかったのだ。

「ほう、てめえらでやる気か??」と、山賊たちが笑いながら言った。

「そっちだって、魔法が使えないのは一緒でしょ!!」と、ブレンダが叫ぶ。ヴェンデルの息はもうなかった。

 山賊20名に対し、村人は女子供含め100名前後だった。山賊の方は、刀を各々持っており、一方でエイダたちは正当な武器など持っていない。

 村人の女子供は、既に村を脱出しつつあった。

 エイダたちシスター5人と、村の男たち30名前後が、農作業用具を握りしめ、山賊に対峙する。

 そこからは死闘に近かった。うなり声をあげて村の男たちが山賊に向かって行ったが、剣術に長けている山賊たちに、あっという間に斬られていく。

 血しぶきが上がる中、シスターたち5名は真っ青になった。エイダは思わず自分の妹を探した。ブレンダは・・・・!!

 ブレンダはというと、逃げ遅れた孤児の子供の前で、くわを手に、山賊2人と対峙していた。

「早く逃げなさい、逃げるのよ!!」と、ブレンダが子供に叫ぶ。

 孤児の8歳前後のその少年は、悲鳴をあげてその場から立ち去った。

 次の瞬間、ブレンダはあっけなく山賊に斬られた。

 エイダの目に、スローモーションに、倒れるブレンダが映った。

「ブレンダ!!」と、エイダが思わず叫ぶ。

 生き残っていたのは、エイダと、シスター1名と、村の男性5名ほどだった。

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