かつての僕らへ

谷合一基生

第1話 規制区画

 何が何だか分からなかった。ここがどこだか、自分がどんな人間かさえも理解できなかった。

 港から遠くに見える山の方まで本当に真っ直ぐな道が延びている。全ての道が舗装され、限りなく人の手によって整えられた街路樹が山の麓まで一列に並んでいる。レゴの玩具で作られているように一様だ。あれ、学園だけがある。いつからだっけ。僕たちがあれを学園と呼ばなくなったのは。

 学園で学んだんだっけ。京都の街は碁盤の目のようになってるって。もうここはまさにそれだな。京都みたいに映えるような歴史的建物も、ただのマンションでさえない見晴らしの良い平原みたいだけど。そうだ、ただのマンションでさえ無い。誰一人いない世界の終わりのような場所だ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

かつての僕らへ 谷合一基生 @yutakanioukasurukessya

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ