魔法使い、暗殺されかける#政元side

細川政元。

聡明丸という幼名の通り、

その能力を遺憾いかんなく発揮した彼は“半将軍”と呼ばれるほど絶大な権力を得た。

ただ、同時に彼は一番の問題児でもあった。

理由は二つ。

一つ目は実子がいなかった点だ。

しかも養子を複数とってしまったために後継者争いを招いてしまった。

二つ目は魔法使いを目指していた点だ。

彼は修行と称して突然出奔して政治を混乱させ、

将軍自らが説得に行ったこともあった。


そんな奇行に走る政元から、家臣の心は離れていってしまう。

永正四年六月二十三日のことであった。

「わしは魔法の準備をする!」

常人には理解できない宣言をした政元。

そして、らぬ顔で湯屋へ向かう。

小姓が政元の言葉に無反応なのはいつものことである。

湯屋に入った政元であったが、

そこで彼はただならぬ気を感じた。

もちろん、魔法の力で。

変人でも優秀な政元である。

———流石にまずいぞ………。そうだ!とっておきの魔法を使うか!

派手な演出付きの魔法で間一髪、危機を脱した政元であった。

一足遅れてやってきた暗殺者は、

怪奇現象に驚きつつもあの政元の事だからとひとりで納得。

政元(抜け殻)に刀を突き刺したのであった。

後の世で、永正の錯乱えいしょうのさくらんと呼ばれる事件である。


「ふう、散々な目にあってしもうたわ」

わしが使ったのは、時を超える魔法。

慌てて魔法を使ったから、

いつに飛ばされたのかが分からなくてとっても心配。

それでも、わしは今、わし史上最もワクワクしているのだ!

なぜなら、わしは旅が大好きだからである!

わしの想像する未来の斜め上をいく様な、

目新しい景色の中を早く探検してみたい!

鳥のように空を飛んで———いざ参る!

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