死神と物書き

ウツリギ

死神と物書き

あるところに物書ものかきが住んでいました。物書ものかきには物語を完成させてお金を得る必要がありました。しかし、彼は物語に登場させる人物の構想こうそうつまずき頭を抱えていました。

「好んで書き始めた物語を完成させることすら叶わないのか。こんなみじめな生活が続くなら、いっそ死神に連れて行ってもらいたい…」と彼は嘆きました。


すると、驚くべきことに、死神が大鎌おおかまを手にして彼の前に現れました。物書ものかきは恐れおののきました。

「私は来た。」と死神が言い、大鎌おおかまを振りかざし、彼の命を奪おうとしました。「"死にたい"と言っていたのが私の耳に入ったが、間違いないか?」


物書ものかきは一歩下がり、すぐに言いました。「いやいや、死神、そんなことはありません。私があなたを呼んだのは、あなたを題材にした物語を書きたいと思ったからです。物語の構想こうそうに迷っており、あなた自身に感想を伺いたかったのです。」


死神はこの勇敢で機転の効いた返答に感動し、物語の構想こうそうを一通り話させました。そして満足そうに感想を述べ、現れた時と同じように突然姿を消しました。


そして、物書ものかきは死神とのやりとりを元に物語を書き上げ、同じように死にたい気持ちにさいなまれる人々の共感を呼び彼らに支えられながらなんとか生きてゆきました。


この物語の教訓は、「普段から死にたいと口にしている人も実際死を目の前にすれば往々にして生きてしまう」ということ、そして、「死による救いは、死なずとも得られる」ということです。

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