ミステリー好きによるミステリー小説

雨宮 徹

ミステリー好きによるミステリー小説

 友人と雑談をしている時だった。


「ねえ、君はミステリー好きだったね。『生者と死者』はもちろん知ってるよね?」


「当たり前じゃないか。泡坂妻夫の傑作だよ。偶数ページがすべて袋とじになっている。まずは奇数ページを読む。奇数ページだけで一つの物語になる」と徹。


「そして、袋とじになっている偶数ページを開くと、全体として、これもまた一つの物語として成立する。紙の本だからこそできる仕掛けだね」


 友人が徹の言葉を引き取って言う。



「あ、これに似たミステリーがあったね。有栖川有栖の作品。あれは『学生アリスシリーズ』を作家になったアリスが書いていて、逆に学生のアリスが『作家アリスシリーズ』を書いているって話だけど」と徹。


「そういえば、僕の名前は雨宮徹だけど、この会話を書いている人も雨宮徹っていう名前なんだって!」徹は続けて言う。


「面白いね。有栖川有栖の作品はパラレルワールドだけど、『生者と死者』と似た感じだね」と友人。



「やっぱり、電子書籍だと、この仕掛けは成立しないのかなぁ」と徹。


「そうかも。でも、誰かがチャレンジするかもしれない。うまくいくかは別として」と友人は言う。


「そんな小説があれば読んでみたいな」


 徹はそう締めくくった。

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ミステリー好きによるミステリー小説 雨宮 徹 @AmemiyaTooru1993

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