魔王になっちゃったけど僕はやるよばーちゃん!清く正しく朗らかに!

安ころもっち

ばーちゃーん!

引き篭もり30才。童貞。

そろそろ僕も魔法使いになれるかな?


そう思っていたのにね。


唯一の肉親、ばーちゃんが今まさにこの世を旅立とうとしている。


「ばーちゃん!死なないで!ばーちゃんが死んだら僕…どうやって生きて行けばいいの!また起き上がって、僕を甘やかしてよ!」

「拓郎や。強く生きるんじゃよ。清く、正しく、朗ら…がふっ…」


ビーーーーーー


「ご臨終です」

「ばーちゃーん!」


こうして僕は、ニート歴20年に終止符が打たれた…


「ばーちゃん!僕はやるよ!」


そういってまずはリハビリのため走った。


部屋の中をドスドスと音をたて…


そして5分後…胸が苦しくなって倒れ込む。


ハーハーと呼吸が荒くなり意識が遠のく…


「急な運動はだめだよね…」


それが僕の最後の言葉となった。


「ここは!」

「魔王様!本日はどのようにしましょうか?」


僕の目の前には二足歩行の豚の化け物。

気付けば僕は魔王に転生していた。


スキル『ばーちゃんの知恵袋』ばーちゃんは神!

スキル『清く正しく朗らかに』戦闘力は行動しだい(地球基準)

スキル『タイムスケジューラー』一日の予定は計画的に。


『拓郎や、人間様に迷惑をかけてはいけないんじゃよ?』


分かったよばーちゃん!


人間と仲良くするよう魔人たちを集め叱咤する。そして不平不満を睨みつけ黙らせる。

敵対する王国には労働力として協力関係をと手紙を送ると、無事会談を行う機会を得ることができた。


『拓郎や、魔王じゃなくなったら死ぬんじゃよ?』


知恵袋からまた聞こえてくるばーちゃんのアドバイス。


分かったよばーちゃん!

そりゃ魔王なら、魔王で居続けないと…存在意義が無いよね。


「頑張るよばーちゃん!」


そう思っていたが、虎視眈々と魔王の座を狙う四天王に毎日バトルを挑まれる。


何とかそれを退けるも、魔人たちの人間への悪行は全部自分に返ってくるという、うっとおしい仕様に悩まされる。


魔界の働き方改革。

睡眠休息なども適度に取ろう。


そんなことを提唱し、部下の不平不満もなんのその。善行を積めば上がり、部下の魔人たちが人間に迷惑をかけるほど下がる戦闘力。

毎日多忙すぎて寝不足ぎみだ。


『寝なきゃだめだよ、拓郎』


そうだねばーちゃん!

おばあちゃんの知恵袋を頼りに頑張って正しく生きよう。そう思って効率良く仕事をこなしながら睡眠時間を何とか確保する。


そんなある日、執務室にやってきた露出殿高いサキュバスに言い寄られ鼻の下を伸ばしていた。

正直興奮した。


「魔王様、お疲れですね。たまには私をめちゃくちゃに〇してすっきりしてください!乱暴に!私を!何度も何度も!」

視界の横にある戦闘力カウンターがみるみるダウンしてゆく。


『拓郎や、男女は婚儀を経てから…』

分かってるよばーちゃん!


「今日は、やめておくよ。気遣いありがとう。今日もキミのその言葉に元気付けられた。ありがとう」

「魔王様…」

サキュバスが頬を赤らめながら部屋を出ると戦闘力カウンターが止まり、微妙に回復した。部下への優しい心遣いは大事。


そして会談を行うためにいざ人間界へ!


魔王らしく黒いマントに般若のお面をかぶっている。

フォーマルに決めて来たつもりが、道すがら子供に泣かれ戦闘力ダウン。仕方なしに最近覚えた変化の術で人間っぽい顔に変え、Tシャツとジーパンという親しみある姿に着替える。


顔面のイメージはハリウッド男優だ。わりかしイケメンにできホッとする。

周りが少しざわつき、戦闘力カウンターが微増していく。


そして今、僕は分かりやすく全面に『魔王です』と書かれたおしゃれTシャツを着ている。一緒に着替えさせたわりかし仲の良い側近が、その裏を見てもう一度吹き出す。さっきから笑いすぎでは?


裏には『夢は世界平和(ハート』と書かれた逸品だぞ?愛は世界を平和にするんだ。


「ぷっ、な、なんですかこれは。人間どもを笑わせに行くんですか?」

「分かりやすいだろ?」

ドヤ顔をしつついざ交渉の場へ。


同盟はなんとか纏まりかけたとき、ホッとする僕の目線にはお姫様の、お胸が…


あれは千葉名産の幸水梨を訪仏させる逸品!

そんなことを考えながら視界が戦闘力ダウンを確認する。


いや違うんだばーちゃん!僕は純粋に姫を褒めようと…いや、ごめんよばーちゃん!言い訳はしない!


そんな僕をじっと見る姫様が立ち上がり、歩いてくると僕の手をそっと握り…

柔らかい手、すべすべでとってもいいです!ギュンギュン落ちて行く戦闘力カウンターも、今は正直どうでも良い気がして…


『拓郎…』


「いけません!」

ばーちゃんの嘆きに反応するように、姫様の手を優しく押し返し、紳士の気持ちでそう叫ぶ。


やっと戦闘力ダウンが止まった。


「美しい姫様が、私なんかとそのようなことをせずとも、私たち魔族は協力は惜しみませんから!共に平和を作り上げましょう!」


姫様と王様に話しかけ戦闘力が急上昇し、僕も思わず笑顔になった。


「魔王様…」

姫様の頬を赤らめながらの綺麗な声が心地よい。


やっと同盟関係を築くことができた僕は、浮かれる気持ちを律し帰り道は街中のゴミ拾いを試みて、微妙に戦闘力を上げつつ帰ることにした。


割と賛同してくれる側近も一緒にゴミ拾い。

本当に感謝しかない。


ばーちゃん!僕がんばるよ!


『拓郎、三度のご飯はちゃんとたべるんだよー』


僕は条件反射のようにばーちゃんの声に従い、すぐ近くの食堂に飛び込み、注文の列に行儀よく並んだ。


魔王になっちゃったけど、僕はやるよばーちゃん!

清く正しく朗らかに!

この異世界を生きてゆこう!





次週、遂に本気で殺しに来る四天王に、王の裏切りと姫との逃避行!お楽しみに!

※次週の予定は今のところございません。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

魔王になっちゃったけど僕はやるよばーちゃん!清く正しく朗らかに! 安ころもっち @an_koromochi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ