第3話 セインの誓いと女神の願い



 三行でわかるあらすじ!!




 異世界転生したと思ったら貧乳が優遇される世界でした!!

 心優しい専属メイドの着替えを誤ってのぞいてしまったら、爆乳でした!!

 おっぱいおっぱい!!



 シグレと目があうと一瞬時が止まったのはきのせいではないだろう。

 彼女の表情が歪むのを見た俺は取り返しのつかないことをしてしまったことにきづく。


「シグレ、ごめ……」

「けがらわしいものをおみせしてしまい申し訳ございません、セイン様!!」



 俺が謝り終える前に、頭を下げたのはシグレだった。土下座という概念はないはずだが、頭を地面につけんばかりに下げている。



「いや……あの……シグレ……?」

「このような醜く大きい胸を隠してメイドをやっていて申し訳ありません。ですが、なんでもいたしますので、私の胸のことは内緒にしていただけないでしょうか? 私が家族に仕送りをしないと病気の父と母が……」

「ちょっと待って、落ち着いて話を聞かせて!!」


 着替えを覗いてしまい怒られるどころか謝られるなんて……いったいどうなっているんだ?


 半泣きになっているシズクを何とかなだめて話を聞くことにする。彼女はベッドに腰掛けており上半身にシーツをまとっているが、それでも豊かな胸が目立っているのがわかる。

 思わず視線を送ると彼女は申し訳なさそうに体を縮こませる。



「私の胸がこのようになってしまったのは十五歳の時でした……最初は胸がきついなって思っていたのですが……徐々に大きくなっていって……今はこのような醜い姿に……セイン様!! わがままをいっているのはわかっております。あなたの視界には二度と入らないようにいたしますので何とかお屋敷でメイドを続けさせては頂けないでしょうか? このような体だとばれたら屋敷は追い出されてもどこかで働くこともままならなくなります。どうかお慈悲を……」



 その可愛らしい顔に涙をためる彼女を見て俺は思わず優しく抱きしめていた。



「シグレ……大丈夫だ。誰にも言わないよ」

「セイン様……このご恩は一生忘れません。それに……本当にお優しいですね……」



 鼻声で答える彼女に胸が痛む。そもそもだ。あんなに優しくしてくれた彼女を追放する気なんてあるはずがない。

 胸が大きいと言うだけで、こんな風に迫害されるきっかけを作ったヘラに怒りすらわいてくる。それはシグレを悲しませたということに怒っているのであって、決してこの柔らかい感触で情が移ったわけではない。いやマジでね。



「セイン様……あなたがお優しいのはわかっています。ですが、離れては頂けないでしょうか?」

「うわぁ、ごめん!! そうだよね。好きでもない男性に抱き着かれたらいやだよね」


 冷静に考えたらシグレの方から抱き返してはくれていない。とんだセクハラやろうになってしまったとあわてて距離をとる。



「違います!! セイン様に抱きしめられるのは幸せな気分になります。ですが、このようなものを押し付けるのが申し訳なくて……」

「え? 俺は大きい胸も魅力的だと思うけど……」



 むしろ貧乳よりも巨乳の方がだいすきです。前世でのパソコンの履歴は巨乳ものばかりだったしね……てか、俺のパソコンどうなったんだろ。父さん母さんちゃんと見ないで処分してくれたかな……



「いいんです。私に気を遣わなくて……私が読んだ本には男性は女性の胸に顔をうずめるのが大好きと聞いたことがあります。ですが、このような胸にはそのようなことをする気もおきないでしょ……きゃあ……」

「俺は本気だよ。だからこうして抱きしめているし、顔だってうずめたいと思っている」



 あまりにもの悲しそうな顔をするものだから、俺はとっさに彼女を抱き寄せていた。しかも、今度はちゃんと俺に胸が押し付けられるようにだ。

 柔らかい感触に思わずにやけそうになるが今はシリアスな状況だからと必死に耐える。

 落ち着け……俺の下半身おちつけーーと念じながら会話を続ける。



「うう……本当ですかぁ……私は一生と男性に抱きしめられることはないと思っていて……しかも、そのお相手がセイン様だなんて……嬉しくて……」

「ああ、本当だよ……これが証拠だ」

「あ……」



 一瞬体を離すとシグレが悲しそうな声をあげる。だが、それも一瞬だった。シーツ越しに彼女の豊かな胸元に顔をうずめると柔らかい感触と甘い匂いに包まれる。



「ほら、俺はシグレの大きな胸が大好きなんだ」

「セイン様……私幸せです」

「俺もだよ……」



 マジで幸せです。前世では童貞だった俺だがこんなに美少女でしかも巨乳な女の子の胸に顔をうずめることができるなんて……

 ふわふわのおっぱいはどんな枕よりも上質で、俺を癒してくれる。そして、彼女はぎゅーーとまるで大切なものを離さないようにするかの如く、俺の頭を抱える。

 そして、その手が少し震えているのを感じ……決意する。



「シグレ……俺は決めたよ。こんなにすばらしいおっぱいを迫害するなんて間違っている。それに、シグレみたいな優しい女の子が何にも悪いことをしていないのに苦しまなきゃいけないのはおかしいよ。だから、俺がこの世界をかえてみせる」

「セイン様……私たちのような人間のために……」

「ああ、そうだ。間違っているのは俺たちじゃない、世界の方だ!! だから、君たちのような巨乳が肩身の狭い思いをしないようにしてみせる!!」



 俺がまっすぐにシグレを見つめ決意表明すると、彼女は顔を真っ赤にして嬉しそうにほほ笑んでくれた。そして、なぜかその身にまとっていたシーツをはがしたものだから、豊かな双丘とその先端があらわになる。



「綺麗だ……」



 初めて見る生の巨乳に俺は思わず本音を漏らすと、シグレの体が一瞬びくりと震えて、その顔がさらに赤くなっていく。

 いったい何を……と彼女をみつめると、目が合った。その瞳にはわずかに涙がたまっており、その視線には熱く強い感情が宿っているのがわかった。



「本気でそう言ってくださっているのですね……セイン様」



 シグレは嬉しそうにだけど、恥ずかしそうに微笑んだ後にその豊かな胸元を差し出すように突き出していった。




「その……私の読んだ本では男性は女性の胸に口をつけるのを好むと聞いております。私に自信をつけるためだと思って口づけては頂けないでしょうか?」

「え……でも……」



 恋人でもないのにそんなことをしてもいいのだろうか? というか、彼女の読んでいる本ってどんな本なんだろう。ちょっとエッチすぎない? とか、弱っている彼女につけこんでいるだけじゃないだろうか? とかそんなことが頭をよぎったが、俺に拒否されたと思ったののかと悲しそうな顔をしたシグレを見て俺は決意して……そのうつくしい乳首にくちをつけると……まばゆい光に包まれた。


 


『お久しぶりですね、あなたを救世主に選んで本当に良かったと思います』



 真っ白い空間に俺は一人の少女と対峙していた。転生した時と違うのは彼女の表情だ。物悲しかったそれは今や満面の笑みを浮かべており、そのうつくしさをさらに引き立てている。

 でもさ……


「あれ、おっぱいは!? 今むっちゃよいところだったのに……」

『大変申し訳ありません……ちょっと真面目な話をさせていただいてよろしいでしょうか?」



 シグレの巨乳を楽しもうとしたところから、いきなり変な空間によばれて混乱していたが、目の前の少女の申し訳なさそうな表情に罪悪感を感じて仕切り直す。



「君はヘスティアという名前の女神で『貧乳のみが優遇された世界の常識をかえるために俺を転生させた』って言うことで間違いはないかな?」

『はい……すべてを思いだしてくれたのですね……これで私たちの加護をもって生まれた子たちも救われます……』



 再びこの空間に呼ばれヘスティアの顔を見たときに俺は転生した時のことを全て思いだしていた。



「あなたはすでにご存じだと思いますが、この世界は魔女ヘラが作り出した宗教によって歪んでしまっています。だからこそ、この世界の常識に染まっていない異世界の住人の力が必要だったのです」

「だけど……なんで俺なんですか? 前世の俺はただのサラリーマンでしたよね?」

『そんなことはありません。名前も知らぬ巨乳な女子高生を突っ込んでくるトラックから助けて死んだあなたならきっと、この世界に異を唱えてくると信じていましたよ」



 うわぁ……そっか……俺の死因てそうだったんだ。だけど、まあ、誰かの助けになれたならばまだましだろうか?



『卑下しないでください。見ず知らずの人間を助ける優しさを持ち、巨乳好きなあなただからこそ、他人のために頑張ってくれると思ったのです。そして、私の考えは大当たりでした。あなたは世間の常識にのまれずに、一人の巨乳少女の心を救ってくれました。あなたは偉業を達成したのですよ』

「シグレか……」



 彼女のすくわれたような笑顔を思いだすと胸が熱くなる。俺はただの巨乳好きだけど、それで彼女がコンプレックスを感じなくなるのならば俺も嬉しい。



「だけどさ……なんでこんなことになっているんだ。昔話だとヘスティア様とヘラは力をあわせて勇者に力を与えたんだろ? なのになんで今はヘラに似た貧乳ばかり優遇される世界になったんだ?」

「それは……」



 つらいことでもあったのかヘスティア様は顔をうつむかせる。やばい、何か重大な事件があったのだろうか? だけど、原因を知ることは大事だと思う。

 これからの俺の為にもシグレのためにも……



「そのですね……魔王を倒したあとにヘラが勇者に求愛したのですが『ごめん、貧乳はちょっと……』と言って巨乳な聖女と結ばれてしまったのです。それに激怒したヘラは自らと同じ体系の信者に加護を与えまくって強力な魔力を持たせた上に『貧乳は選ばれた存在で巨乳は悪だ』と言いだしたのです。そして強力な魔力を持つ彼女たちの言葉を当時の権力者たちも重要視するようになりまして……結果、今のような貧乳を優遇し、巨乳を虐げる価値観がうまれてしまったのです」

「うわぁ……」



 話を聞いていて頭が痛くなってきた。結局はヘラの嫉妬じゃないか!! 

 俺は確かに巨乳が好きだけど、貧乳には貧乳の魅力があると思う。価値観を押し付けて他の人に苦しい想いをさせるのは違うと思うんだ。



「ヘスティア様、俺はこんな世界を変えたいと思う。どうすればいい? 俺に何かできる事はあるかな。シグレの様に苦しんでいる人をみたくないんだ」



 俺は巨乳が好きだしね……



「あなたならばそう言ってくれると思いました。私の加護を受けているシグレさんの心の壁を打ち破ってくれたあなたには私の光の魔力が備わっているはずです。目が覚めたら使い方はわかるようになっています」

「俺に魔法がつかえるのか? 男は魔法を使えないはずじゃ……」



 信じられないとばかりに声をあげる俺に対してヘスティア様は優しく微笑む。



「私の加護を受けたあなただけが例外なんです。かつて魔王を打ち破りし勇者が持っていた力の一部です。必ずや役に立つでしょう。そして、ヘラの魔力とは相反する光の力を示しながら、私の加護を受けて生まれたシグレの他にいる三人の少女を救ってください。貧乳を優遇するというのは後から作られた価値観です。きっと変わっていくはずです」

「力を示し……少女を救うか……」



 俺にそんなことができるだろうか? いや、やらなきゃいけないんだ。俺は巨乳が大好きだ。このままでは巨乳は迫害されつつけ、やがていなくなってしまうだろう。そんな世界は嫌だ。

 それに何よりもシグレのように巨乳だと言うだけでつらい思いをする人がいるのは耐えられない。


  だけど、これから俺は巨乳な女の子のおっぱいをすわなきゃいけないの? ハードルったか!!


『ち、違います。あくまであなたに心を許せばいいのです。シグレが胸を吸わせた時に心を許しただけですでトリガーは人によって違いますから大丈夫です!!』

「あ、そうなんですね……」



 ちょっと安心するような残念なような感じである。



「わかりました。俺がこの世界を変えてみせます!!」

「ありがとうございます……やっぱりあなたは優しいあの人に似ていますね……」



 最後にヘスティア様が優しく……だけど少し寂しそうに微笑んで世界が再び光り輝いていく。そして、俺は夢の中で意識を失ったのだった。





プロローグ終わりです。

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