第23話 若者達への贈り物

「これは」


差し出したのは柄に小さな青い宝石が埋め込まれた一振りの短剣と、同じように青い宝石がはめ込まれた指輪。


「なに、大したものではない。じゃが、これから旅に出るのなら役に立つかもしれん」


「いいんですか」


「うむ、しかし他のものには内緒にしておいてくれ。わしが作った物だと知られては良からぬことを考えるものが出るやもしれぬ。

これはお主ら未来ある若者への贈り物じゃからな」


「?」


「……はい」


ドフレの言葉に首を傾げるルアンナだが、アクレイは言外に込められた意味を察したか、緊張の面持ちでうなずく。


「さて、儂はもう少しこの村の、葡萄酒アレべを堪能するかのう」


そう言うとドフレは腰を上げ、宴の輪に戻っていく。


すっかり日が暮れ、高く登った月が闇夜を照らす中、二人はこっそりと家を抜け出し、アクレイの家の近くに佇む一本の木のたもとに来ていた。


幼い頃から彼らを見守ってきたその大樹の裏に彼らは小さな穴を掘り、ドフレにもらった短剣と指輪の入った小箱を埋める。


「これでいいかな」


「そうね」


土をかけて埋め終えると二人にしかわからない目印として二つの石を添える。


「あたしたちが旅に出るときまで、ここに隠しておきましょう」


「うん」


再び二人は空を見上げる。


空は満天の星空であった。


瞬く星々は自由な世界を夢見る彼らの前途を祝うかのようである。


「ねえ、アクレイ」


「兵士の人達もあたし達を認めてくれたし、春になったら旅に出られるわね」


「ああ」


「外の世界には何があるのかしら。楽しみね」

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