第21話 不思議な客人

「討伐するケルツの群れの一つが姿を消していたので探していたのです。まさか群れの悪戯子鬼(ケルツ)全てが悪戯鬼ガテ・ケルツになっていたとは」


「うむ、それにはわしも驚いた。悪戯鬼ガテ・ケルツだけで徒党を組むなどあまり聞かなかったからな」


「ええ。私達も油断していました。こんなことならまず彼らを村に帰すべきだった」


うなだれる兵士長の言葉にドフレはうなずく。


「まあ、気にせずとも良い、結果がすべてだからのう」


「そうですね。

…… ドフレ殿でしたか?どうでしょう、我が村に立ち寄ってください。もてなしますよ」


ひとしきり事情の説明を終えた兵士長がドフレにそう提案するとドフレは空を見上げる。


空は橙に染まりだし、木漏れ日も輝きを失いだしている。


「ふむ、もうすぐ日が暮れるか。今から急いで山を降りれば関所の宿で休めるだろうが、いささか疲れた。

ここはそちらの好意に甘えるとするかのう」


ドフレがそう言うと傍らにいた先程の生物が唸り声を上げる。


「おおすまぬな、こやつもだが良いかね」


「これは?」


「こやつは「鉱石喰獣ピレ・ネージ」わしの相棒じゃよ」


ドフレの説明に兵士長は目を見開く。


「これが鉱石食獣ピレデヒュル・ネージ…鉱山での採掘に使われている生き物ですな」


鉱石食獣ピレデヒュル・ネージ


石や鉱石などを食べ、その中に含まれている金属成分で硬い表皮を形成する生物で、鉄を多く喰らえばその表皮は鉄の鎧のように固くなり、脱皮の際に脱いだ革を活用することで鉱物精製の手間が容易になる。


主食は石だが、金属に対する鼻が利くとされ鉱山などでは鉱石の採掘や精製に活躍しているという話であり、旅をする山精子爺デヒュルフォの中には常に連れ歩いているものもいる。


「うむ、石が好物でな、こやつには適当な石を食わせてやってくれれば良い」


「分かりました」

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