第17話 包囲からの離脱

表情をこわばらせながらも身構える二人。


だが、背後や脇からも音が聞こえ、二人は構えを取ったままあたりに視線を向ける、と周囲の木の間からさらに悪戯鬼ガテ・ケルツが現れる。


「囲まれた!?」


そうアクレイは呻くと逃げ道はないかと改めて見渡す。


しかし、周囲の悪戯鬼ガテ・ケルツは木々の間に一体ずつ陣取り、じわじわこちらに近寄ってくる。


剣と槍を手にしたままじりじりと後ずさりする二人。


だが、背後からも悪戯鬼ガテ・ケルツが近寄ってくる。


二人は先程と同じように背中合わせになってお互いを守る態勢を取る。


「このままじゃだめだ、なんとか逃げないと」


「……あの人を見捨てるの?」


アクレイの言葉にルアンナが非難の声を上げる。


「…そうじゃない。こっちが逃げたら、悪戯鬼ガテ・ケルツも少しは追いかけてくると思う。そうしたら兵士の人も逃げる隙ができるはずだ」


「…そうね」


背中越しのアクレイのつぶやきにルアンナもうなずく。


「一体だけならなんとかできるかも」


「じゃあ」


二人は傾きつつある太陽の位置から村の方向の見当をつけると目配せをしあい、


その方向にいる悪戯鬼ガテ・ケルツめがけて駆け出す。


「やああっ!」


威勢よく踏み込み、ルアンナは先程同様、悪戯鬼ガテ・ケルツめがけて槍を繰り出す!


しかし、硬い音とともに槍の穂先はガテ・ケルツが持つ槍で防がれる。


そこにアクレイが切り込む!が、悪戯鬼ガテ・ケルツはそれも盾で受け止める。


焦りといらだちからに突き動かされ、がむしゃらに攻撃する二人だが、守りに徹する悪戯鬼ガテ・ケルツにことごとく阻まれる。


息を切らせた二人を盾の向こうで未熟な二人をあざ笑うかのように悪戯鬼ガテ・ケルツがにやりと笑う。


そのさまに二人は怒りをあらわにするが、その時、アクレイが後ろから突き飛ばされる!


地面に転がされたアクレイは身を起こそうとするがそこに数匹の悪戯鬼ガテ・ケルツが群がり、彼を蹴飛ばす。


再び転がされたアクレイに悪戯鬼ガテ・ケルツが近寄り、彼を足蹴にし始める。

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