第11話 戦に挑みし者たち

木々がひしめく森の奥、そこには地面にぽっかりと空いた洞穴があった。


そして、そこから黒々と宙を漂う霧のようなものが立ち込めていて、その辺りにはアクレイたちよりも背の低い、遠目には子供のようにも見える生き物たちがうろついていた。


だが、半裸で見た目革鎧のようなものを着込み、手に棍棒のようなものを持つ人間の子供などいるわけがない。


その姿を見たアクレイとルアンナの表情がこわばる。


彼らが悪戯子鬼ケルツの実物を見るのはこれが初めて、特に弟妹がいるルアンナにとっては子供同然の背丈の相手に武器を向けることに抵抗が生まれるのは仕方がない。


だが、彼らは同時に悪戯子鬼ケルツによって生まれる村の損害のことも思い出していた。


畑を荒らし、家畜に危害を加える。人にとっては生活の糧を脅かされる存在であるが元は妖精ケルフォである彼らにとってはそれらはただのいたずらでしかない。


しかし、彼らを放置すれば力を蓄え、より強い魔物へと変貌して手に負えなくなる。


悪戯子鬼ケルツは倒せるときに倒さなければならない存在なのである。


二人は長老から教わったことを改めて思い出し、表情を険しくする。


「あれが悪戯子鬼ケルツが住処にしている洞穴だ。

数は十匹ほど確認されている、うまくやれば君たちでもやれる数だ」


話には聞いていた悪戯子鬼ケルツを初めて見て緊張を強くしてる二人に、向こうに気づかれないよう、二人にだけ聞こえる程度の小声で兵士がささやく。


「……はい」


「危なくなるまで俺達は手を出さないからな」


「わかりました」


そう言って兵士が二人のそばを離れると、二人は手はずを確認する。


まず物陰に隠れていしゆみを射掛け、すみかの周りにいるケルツの数を減らす。


ある程度数が減ったり、見つかったら剣や槍を使って戦う。


長老の助言ではこれが最も安全で確実な戦いだという。


二人は装備を再度点検すると長老から教わった戦士達が戦いに赴く前に行うという戦女神への祈りを捧げる。


「戦の神フェテシュよ、時神のしもべとの戦に赴く我らに力を」

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