第12話 私の決意とオスカーの呪い
⸺⸺翌朝。
私は日の出と共に小屋の外に出て、小型ナイフを持って海岸に立った。
「よし」
そう自分を鼓舞すると、金の長い髪を後ろで束ね、首の生え際付近にナイフを当てる。
そして、パサッと言う音と共にナイフを上へ引き上げると、綺麗な金髪がサラサラと空へ舞っていった。
「エマ……!?」
丁度小屋を出てきたオスカーが血相を変えて海岸へと飛んでくる。
そして、その私の変わり様を見て、口をポカンと開けていた。
「おはよう、オスカー。イメチェンしてみました」
「イメチェンって……」
これなら女性っぽく見えなくなって、オスカーも怖がらなくて良いかもしれない。
「それにエマ……その服は……」
「あ、これは新しくクラフトした服だよ」
私は女性っぽい服装もやめて、男性用の服を私サイズにクラフトしたのであった。
「エマ……その……」
「あれ……イメチェンイマイチだった……?」
オスカーがあまりにも悲しそうな表情を見せるので、私は恐る恐る尋ねてみる。
「それは俺のため……で、いいんだな……?」
「あれ……バレちゃった……」
「俺が、女性を怖がって……と、そういうことなんだな……」
「あの……はい……。あ、でも気にしないで。私も長い髪
「エマ……違うんだ……見た目の問題じゃない……」
「えっ……?」
「すまない……本当に……」
「オスカー……ナイーブな問題だって分かってるけど、良かったら教えて? もしかしたら私にも他に協力できることがあるかもしれないし……」
「まだ朝早くて冷えるから、小屋に、戻ろうか……」
オスカーは寂しそうに笑った。
「うん……」
⸺⸺
小屋の中で温かいスープを飲みながら、オスカーがポツンと口を開いた。
「……俺は、女性に触れないんだ」
彼はついにそう暴露する。
「触れない?」
「あぁ。そういう呪いがかかってる」
「呪い!? 呪いって何!?」
「ある条件で女性に触ると、“石”になる呪いだ……。その条件は、悪いが話すことはできない。そういう呪いだから……」
「石って……まさか……」
私は、王都を滅ぼした召喚者を思い出す。
「……すまん、言えないんだ」
オスカーはそれだけ言って、うつむいてしまった。
「私……」
私はなんて馬鹿なんだろう。
オスカーはその召喚者に“石になる呪い”をかけられていたというのに。
その子に対して私は可哀想だとか、不謹慎にもほどがある。
それに、私の髪を切る行為は、ただ単にオスカーの良心を苦しめただけだった。
「ごめんなさい……私……なんてことを……」
「エマ!? 違うんだ、お前のせいじゃ……」
オスカーは私の大粒の涙を見てひどく動揺していたが、私はその涙を止めることができずに小屋を飛び出した。
「エマ!」
オスカーの私を呼ぶ声が聞こえたが、彼は私を追っては来なかった。
私は海岸の岩場へと腰を下ろし、膝を抱えて思いっきり泣いた。
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