第11話 とりあえずは

「あの、私たちって、いつまでこの孤島にいる感じ……?」

 私は恥ずかしくなり、咄嗟に話題をそらす。


「あぁ、それはな……ノエルの情報次第だ。俺たちは、ドム王子とバルド宰相は召喚の事実を隠してくると思ってた。だから、召喚の事実を掴んで諸国会議に突き付ければそれでいいと思ってたんだ。そのことが片付くまでお前をここに避難させておけばいいと考えていた」


「あ、でも、私のこと普通に召喚者だって言いふらしてた……」


「そうなんだ。それで慎重に行くべきかは迷ったが、お前がドム王子に、その……身体を奪われるのを見過ごすことはできなくてな。相手の内心を伺えないまま見切り発車になってしまった……」


「そうだったんだ……ごめんなさい、私のために……」


「いや、さっきも言ったが、巻き込んだのは俺らの方だ。お前は何も悪くない。それに、ノエルだけじゃない。俺の弟らもきっと動いてくれるはずだ。だから今はとりあえず、そのキャンプ生活? とやらを満喫しようじゃないか。この孤島はローレンツ王家の者しか知らない秘密の隠れ家、フォーリアの連中にはまず見つからんさ」


「オスカー……うん、分かった!」


 私はオスカーの言うことを信じて、とりあえずは秘密の孤島生活に集中することにした。


⸺⸺


 お昼ご飯は、孤島に生えていた小麦でパスタをクラフトし、今朝のスープの残りを使ってスープパスタにした。


 そのクラフトも、レシピをいちいち頭の中でうーんと考えるのが大変になってきたので、『レシピ集』をクラフトすると、私の作れるアイテムが図鑑の様に載っており、オスカーともレシピを共有できてかなり便利になった。


 午後からはオスカーが素潜りに出かけたので、私はその間に海岸に小さな小屋をクラフトして、オスカーがそこで着替えたりシャワーを浴びたりできるようにした。


 彼が戻ってきてからは外の調理台で2人で他愛もない会話をしながら海の幸の下処理をする。


 オスカーの話を聞く限りフォーリア王国は今大変なことになっているだろうに、私たちのこの暮らしはまるで夢のようであった。


 ただ、やっぱり私が近付くとオスカーは怯えて距離を取るような仕草をした。


「夢のキャンプ生活の相方が俺のようなやつですまないな……」


 彼はそう申し訳なさそうにするので、私は彼のためにもある決意をするのである。

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