日記7 日々の過ごし方
どうもこんにちは、こんばんは、犬です。
全魔術適性を持っていることが判明してから、はや一週間。
今日は俺の日々の過ごし方を紹介致しましょう。
俺は現在、ルラルド王国聖騎士団副団長、セレーヌ・ディアベルリアさんの学び舎で、居候兼修行を行っております。
学び舎は王都から少し離れた郊外。
辺りは自然が豊かで、空気が良いです。
勇者カイとノゾミが所属する部隊は、簡単に言うと前衛。
後衛には専属の治癒師や魔術師が。
俺たちはいわゆる遊撃隊。
前衛が戦っている隙にサポートし、ちょっかいをかける、敵からしたら非常に厄介極まりない部隊です。
セレーヌさんはこの部隊の隊長。
そして騎士団の副団長!
俺のお世話係を務めるセレーヌさんは、誰もが一度は振り向くほどの美女です。
髪は少し青みがかった銀髪。
スタイルが良くて、胸も大きく、優しくて変態な、最強の副団長です。
え、今悪口が聞こえたって?
気のせいでしょう。
それも彼女の良いところなのです。
◇◆◇
修行一日目。
まどろみから目が覚めると、柔らかな何かに、俺は包まれていた。
なんだ?
柔らかい。
それに、良き匂いだ。甘い匂いで、思わず顔を埋めたくなる。
「おはようございます、シン様っ」
小さくて可愛い俺をベッドの上で抱きしめているのは、どうやらセレーヌのようだ。
『おはよう、セレーヌ』
「今日もふわふわで触り心地がいいですね、シ、ン、さ、ま?」
『あまり撫で回すのはやめてくれ。俺は中身は人間だぞ』
「わかっていますよそんなことぉ~。うへ。ぐふへへ」
これから俺の朝はセレーヌに撫で回されることから始まるようだ。
幸いなことにこの時間、ラミアは寝ているので安心ではある。
朝食を食べ終えると早速修行だ。
最も、俺は召喚者なので、算術などを勉強する必要はない。
文字だって、召喚された補正が入り、なぜか自動的に日本語に翻訳されるので問題はない。
つまり、残るは実践。
まずは、犬として、ダックスフンドとしての力を高めるための訓練だ。
隠密。
セレーヌと一緒に森へ入り、彼女にバレないようにひたすら隠れる。
森には獰猛な魔物がわんさかいる。
そいつらからも身を隠すのはなかなか骨の折れる作業だ。
俺の隠密スキルはかなり最強なはずなのだが、セレーヌはすぐに俺を見つける。
よだれを垂らしながらな。
次は嗅覚。
今度もまた、セレーヌと一緒に森へ。
セレーヌが森を移動するから、嗅覚を頼りに彼女を探し出す。
無論彼女は消臭効果のある薬を被っているので、これがなかなか難しい。
森の中には、俺を捕えるためのさまざまな罠が仕掛けられている。
俺は嗅覚を使ってそれらを回避しなくちゃならない。
神経を使う。
しかし、日々確実に俺の感覚器官は研ぎ澄まされている。
一日目を終えた感想としては、スパイみたいでカッコいいということだ。
あと結構キツかったです。はい。
修行三日目。
最近、剣術の訓練が始まりました。
「シン様! そろそろ剣術の訓練も始めましょう。全魔術適性でも、剣術は重要ですよ!」
『分かってる!』
全魔術適性ということを黙っていたが、何故かセレーヌにあっさりと見破られてしまった。
もしかしたら、他にも能力を見破られているかもな、なんて。
三日も経過したので、俺も彼女に打ち解け始めていた。
可愛くて、変態。そして強い。
めちゃくちゃ強い。
人の姿になって、彼女と模擬戦を行ったが、一瞬にして木剣を弾き飛ばされてしまった。
原理はわからないが、彼女曰く、「基礎がまるでなってない」らしい。
これからさらにキツい修行になりそうだ。
修行五日目。
昨日の夜から、自主練として魔術の訓練も行い始めた。
何せ、俺は吸血鬼の力を少なからず受け継いでいるので、半夜行性というわけだ。
つまり、夜、眠たくない。
夕食を終えてから数時間寝るだけで、それで事足りてしまうのだ。
端的に言えば、ショートスリーパーである。
百獣の王だな! 犬だけど。
余った深夜の時間を何に使うか。
決まっている。魔術の訓練だ。
今日は風魔術を試した。
俺の中のイメージでは、能力補正だな。
例えば手から風を出して、受け身を取るとか。
足から風を出して、踏み込みを早くするとか、そんな感じ。
敵から距離を取るのにも役立ちそうだな。
炎の魔術と組み合わせれば、威力の底上げができるかもしれない。
考えればいろいろなアイデアが出てくる。
ゆっくりやっていこうじゃないか。
時間はまだまだあるだろう。
『シンは魔術の習得が早いの』
ラミアは驚いたようにそう言った。
どうやら俺はかなり、魔術を習得するのが上手らしい。
まあ、向こうで散々見てきたから、イメージしやすいと言うのもあるだろうな。
修行七日目。
かなり体力がついてきた。
ここへきて驚いたのが、俺の嗅覚についてだ。
最近、匂いで敵の悪意がなんとなく読み取れるようになったのだ。
敵意、とでも言うのか?
俺を斬る。俺を倒す。
そういうことを敵が考えれば考えるほど、敵意の匂いが強くなり、俺は敏感に反応できるようになった。
罠とかトラップとかもそうだ。
だからこそ、俺は百発百中で、罠を見破れるようになった。
剣術に関しては、正直まだまだだな。
基礎を必死に体に叩き込んでいる最中だ。
模擬戦では、俺が魔術を使うのを、セレーヌは決して許さない。
「シン様。戦場で生死を分けるのはなんだと思いますか?」
突然、剣を振るうのをやめて、セレーヌが俺に問いかける。
なんだろうか。
躊躇いとか、そんなんだろうか。
『躊躇うなとか?』
「まあ、それもあるでしょう」
セレーヌは続ける。
「自分の魔力が切れ、魔術を使えなくなってからいかに目の前の敵を倒せるか、です」
セレーヌは見てきたらしい。
魔力が切れ、敵を目の前にして動けなくなってしまった騎士たちを。
基礎体力が無いために、剣術が出来ないために、魔族に技術で劣ってしまった者たちを。
足が動けば逃げることができる。
声が出せれば、救援を要請できる。
仲間を呼べる。
「シン様には、そのようになってほしくはありませんからね。夜中に頑張るのは結構ですが、剣術もそれくらい頑張ってくださいよ?」
『うっ……。バレていたか』
どうやら、こっそり夜中に魔術の訓練をしていたのがバレてしまっていたようだ。
セレーヌはなんでもお見通しだな。
中身こそ俺は中年だが、まだまだ彼女には教わることが多いようだ。
「あらあら、すっかり泥まみれになってしまいましたね、シ、ン、さ、ま?」
にやぁ、とセレーヌが気味の悪い笑みを浮かべる。
まずい。逃げなければ。
『お、おいちょっと待て』
「一緒にお風呂に入りましょーーーーー!!!!」
『今日は一人で入らせてくれぇぇぇ!!!』
俺の修行は、これからも続く。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます