第2話

 俺の名は静波アサヒ。

 不死身人間だ。


 現在、全身が死ぬように熱い。

 それもそのはず、全身、骨や肉が丸見えなのだから。


 慣れたことだけど。


 シュウウウ、と音を立てながら肉の上に皮膚が現れる。


 これが俺の治癒力だ!!



「また派手にやったな……」


 アジトへと帰ってくると、メガネをつけた黒髪の男が呆れながらそう言う。

 彼こそがカエデだ。


「うるっせーな。お前が作ったグレネードの威力が強すぎたせいだろーがよ」


 テレビに映されたニュースには、俺が蟹型のモンスターとやり合っていた廃ビルが映し出されていた。


「確かに……」

「金はいくら振り込まれるって?」

「十万」

「安ッ!?」


 俺はカエデとタッグを組んで冒険者をやっている。 

 まあ、冒険者と言われてもなんぞやって話だよな。

 冒険者っつーのは、突然出現する別次元に生きてるモンスターを駆除する者のことを言うんだ。

 さっきの蟹ヤローみたいのな?

 んで、倒せば金が手に入るってわけだ。

 もちろん、パーティーを組んで戦うのもありだ。

 つーか、それが普通の戦い方だ。

 危険度が減るからな。

 けど、そうなると一人分の金が減る。

 だから、俺はカエデと二人だけでモンスターを駆除することにした。


 俺が駆除をする、カエデはそれ以外のことってな。


「廃ビルでよかった、もしこれが普通のビルだとしたら修理費で逆にマイナスになってたぞ」

「ぐっ、それはやべえな……」

「ほんとだよ、まっ、そうはならなくてよかった。……これを見てくれ」


 カエデは俺に一枚の紙を渡してきた。


 なんだろうか。


 受け取って、記事を見ることにした。


「不死身の男!? 傷口が一瞬で塞がる男……アンデット!?」


 記事にはこの前のコウモリ型のモンスターとの一戦のことについて書かれていた。


「俺のことじゃん……完全に。つーか、俺はアンデットじゃねえ!! 人間だ!!」

「んなことはわかってる。それは僕だからね、他のやつらから見たらアサヒはアンデットだ」

「そーですか」


 唇を尖らせながら、そう返して俺はソファにぐたりと座った。


 天井を見て、大きな欠伸をする。


「血不足だ完全に……」

「当たり前だ、あの威力のグレネードをゼロ距離で喰らってるんだ、体内の血液はほぼなくなってるに決まってる。今生きてることが奇跡だぞ」

「血をくれー」

「はいはい」


 カエデは、奥の部屋へと歩き出し、しばらくするとビーカーを片手に戻ってきた。

 ビーカーの中身は真っ赤な液体で満たされていた。


「成人男性の体内にある血液の量を凝縮させた」

「へえ、いただきやす」


 俺はカエデからビーカーを取り、ゴクゴクと飲み干す。


 口の中には鉄の味が広がる。

 生臭さがつんと、鼻から抜けていく。


 ゲップをした後、口周りを手で拭いた。


「まじい」

「我慢我慢──」


 ブーブー、と天井に設置されていたパトランプが作動する。


「モンスターが現れたか」


 このパトランプはモンスターが近くに出現した時に作動するようにカエデによって作られた魔道具だ。


「倒しに行く?」

「あたりめーだろ。もーすこし金も欲しいしな」

「オッケー。すぐに近くの監視カメラにアクセスしてモンスターの特徴を見る」


 モンスター駆除は早い者勝ちだ。

 倒したところに金が入る。

 冒険者として有名になれば、指名されることもある。

 今のところ俺はないけど。


「カマキリみたいな見た目をしているし……これを持ってけアサヒ!」


 カエデは壁に飾られていた武器から一本の鞘に入った剣を俺に投げた。

 俺はその剣を受け取る。


「この剣には魔力がこもってる。鞘から出して五分間の間は切れ味が上がるっていう品物」

「おお、心強いぜ。んじゃ、行ってくるから場所教えろ」

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