治癒魔法の才能に恵まれたのでひたすら極め続けた結果、不死身になった。アンデットってそれ俺なんですけど。

さい

第1話

 初めて魔法を使うことができたのは五歳の時だった。


 友人の楠木カエデと鬼ごっこをしていると、俺こと静波アサヒは石に躓いて転んでしまった。


 右膝にはかすり傷。

 赤くじんわりと血が滲む。


 激痛とまではいかないが、じんわりと痛みがする。


「だっ大丈夫、アサヒくん!?」


 俺の元へと近寄るカエデ。


「う、うん……このくらい……えっ?」


 右膝が光出した。


 すーっと痛みが引いていく。

 不思議な感覚だ。


「あっ、アサヒくん」

「ん?」

「膝の傷が!」


 カエデに言われて、俺は右膝を見た。


 なんてことだ。

 右膝の傷が塞がっていた。

 それも傷跡もなく、まるで転んでいなかったようだ。


 一体何が起こったのかわからなかった。


「塞がってる!!」

「えっ、どーなってんだこれ!?」

「まっ、魔法だよ」


 カエデは声を震わせながら、俺の目を見て言う。


「治癒魔法だよ、アサヒくん!!」

「いやいや、魔法って……」


 魔法は学校に通って教えてもらわなければ使うことができない。

 学校にもまだ行けない俺が魔法なんて使えるはずがなかった。


「ボク、聞いたことある! 才能を持つ者は魔法を学ばなくても身体が勝手に使うことができるって!」

「じゃっ、じゃあ俺は才能を……」

「そうだよ、アサヒくんは治癒魔法の才能を持ってるんだよ!!」


 結論から言おう。

 カエデの言う通り、俺は治癒魔法の才能を持っていた。

 五歳にして十五歳ほどの者が何人か使えるレベルの治癒魔法を使うことができるようだ。

 それも、なんの訓練をしないで。


 当然、両親は喜んだ。


「ただね、アサヒくんは治癒魔法以外が使えなくなるかもしれない」


 医師からそう言われた時は意味がわからなかった。


「たまに一つの魔法だけが特別ずば抜けて使える者がいるんだけどね、そういう人たちはみんな他の魔法が苦手になる傾向があるんだ」


 医師の言う通り、小学校に通い、魔法の練習をしてみたが、治癒魔法以外全滅だった。


 けどまあ……俺は治癒魔法をさらに鍛えることにした。


 結果──


 全長三メートルほどの大蟹が俺を鋭いハサミで挟んみ、横真っ二つにした。


 ぶしゃああ──ッ!!


 勢いよく、傷口からは真っ赤な血が溢れ出す。

 臓物も溢れ出す。


 痛い。

 そりゃー、もう死ぬほど痛い。

 ただ、この痛みに慣れてしまった。

 もう痛くはない。

 むしろかゆい。


「ふん、悪いな……俺はそんなんじゃ死なねえんだ」


 静波アサヒ十六歳。

 趣味は寝ることとシコること。

 後は、死ぬこと。


 傷口からは無数の真っ白な触手がにゅるにゅると現れ、くっつく。


 傷口は消え、俺は立ち上がる。


「なんたってよ、俺は不死身だからなッ!! 俺を殺すには一億年はええ」


 治癒魔法の才能がある男が更に鍛え続けるとどうなるかって?

 自動的に瞬時の再生力を発揮できる身体になる。

 つまり、不死身な身体を得ることができる、ってわけ。


 怖いものなどない。

 だって、死なないのだから!


「終わりだ、蟹やろー」


 俺はポケットからグレネードを取り出し、蟹と共に自爆した。

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